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神界の裏事情  作者: シノ
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蕨が空羅と出会ったのは千年前のことだった______


その当時死界では、姿は見せないが恐ろしい者がいるという噂で持ちきりになっていた。どんな妖も一瞬で消し飛び、山は砕け、人間を食うという恐ろしい者がいるというのだ。蕨にとっては、山犬の長として見逃せない噂であった。そんな奴がある日目の前に現れたのだ。そいつは『ヒュノス』と名乗った。

そいつの目付きはとても鋭いもので、赤い瞳が揺れるように光っていた。


「一つ、勝負をしよう。」


あいつはそんな事を言ってきたんだ。俺はそんな馬鹿げた話はお断りだと言ったのに。一方的に攻撃してきて為す術がなかった。勝負といっても飲める内容じゃなかったんだ。


「俺とお前の命を賭けよう。」


あいつの力は大きすぎた。あいつは自信があったんだろうよ。誰にも負けるはずがない、自分しか信じていなかったんだ。勿論俺は負けた。そして、死を覚悟していた。でもアイツは殺さなかったんだ。


「今日からお前の命は俺の物だ。俺の傍で働け。俺の前で一生喋るな。犬の鳴き真似でもしていろ。」


みたいなことを言われたんだ。それから、かなり強制的にヒュノスの傍に居させられた。逃げようとしても直ぐに見つかり、捕えられてしまう。群れに帰りたくても帰れなかった。でも、ずっと一緒にいるうちにコイツは孤独だっと気付いた。仲間がいた気はするんだが、この辺は誰かに記憶を消された…………のかもしれない。何も思い出せない。とにかく、アイツと話しているうちに仲良くなっていったんだ。犬の鳴き真似をしていろって言われても反抗して普通に喋っていた。その後一度だけ山犬達の元へ返してもらえたんだ。そこで次の長を双子の山犬に任せて俺はヒュノスの元へ戻った。それから仕事をサポートするようになって、良き相棒として活躍していたんだ。


それから時が過ぎて、アイツが神界に来て、黒い指輪をはめる前にこう言ったんだ。


「ありがとう、お前がいたから俺は幸せだった。これから、新しい俺を頼む。そして、何かあったら指輪を外すんだ。あと新しい俺に余計な事を言わないように犬の鳴き真似でもして過ごしていろ。これが俺の最後の命令だ。」


そして、涙を一筋流して指輪をはめた。ヒュノスの最初で最後の涙だったんだ。アイツは黒い指輪が何なのか分かっていたんだ。俺はまだ何も知らなかった。そして、空羅という存在が誕生した。


そしてこの百年間ずっと空羅を見守りながら犬として過ごして来たのだ。

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