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ご(かい)

昨日は帰宅した後、いつも通り仕事して、丁度キリの良いところで朝日が差し込んだので、今日も登校することにした。


シンプルな居間の、不釣り合いな仏壇に手を合わせて、家を出る。



何時の通り始発駅から電車に乗り込み、今日は始業時間に間に合う時刻なので、同じ学校の生徒をなんとなしに見つめる。



始発駅から数駅経った駅で、人込みをかき分けながら乗り込んだ客の中に、2人の少女を見つけて、私は思わず目を見張る。



昨日、とびおからの写真に写っていた目鼻立ちのくっきりした2人。私と同じ高等部の制服で、大きめのジャンパースカートを重そうに翻しながら、人込みの中で互いを守りあうように立っていた。

今は夏で、私も含めて半袖のポロシャツか、または日焼けを気にして長袖のシャツだけれどめくっている着こなしの子が多い中、2人は長袖のシャツをきっちり着こんで、靴下も、今は珍しいハイソックスを最大限まで伸ばして履いている。


まるで、肌を見られてはまずいように。



いまここに、母を殺したかもしれない人物がいる。同じ空間で、もしかしたら人込みの混乱に乗じれば、殺せるのかもしれない。


しかし私は、武器を持ち歩く習慣もなく、攻撃する手段がない。頸椎への手刀で一発で絶命させられるのはファンタジーの世界だけだ。脳震盪と骨折は可能だけれど。



そんなことを考えながら、スマホをいじるふりをして2人を見ていたが、いつの間にか学校のある駅に着いたので、私も降りなければいけない。



他の生徒たちに紛れながら、2人をこっそり付けるのは、なんだか後ろめたいし恥ずかしい。同じ学校の生徒といえども、母の件がなければ一生知り合うこともなかったはずだ。


2人は駅から続く道を少し歩いた後、通学路の近くにある公園に入り、ベンチに腰かけて、スマホを取り出し、会話もなく佇んだ。周りには、同じことをしている生徒も何人かいて、違和感は感じない。


誰かを待っているのだろうか、私も待ち合わせがいるふりをして、公園内に入り二2人と同じ方向を眺める。


すると、自転車に乗った少女がやってきて、公園の前で停まった。

彼女が何か言う前に、2人は気が付いて笑顔で駆け出す。


「桜子さん!おはようございます!今日は自転車なんですね!」

「・・・・怒られません?」



2人が矢継ぎ早に話す中、桜子と呼ばれた生徒が苦笑する。


「心配だから電車に乗せたくないて言ってきたから自転車の許可取ったの。今日も来る前にスカートの中見えるから嫌とかごねて、じゃあジャージ履くからって言ったら、それはそれで下品とか。相変わらず意味不明なのよ。」




桜子はそんなことを話しながら自転車を押して歩き出す。相槌を打ちながら2人も付いていき、3人は楽しそうに歩き去っていった。




思わぬところで母の仇疑惑の3人を生で見てしまい、緊張で固まってしまったが、登校中に私を見つけたレンが、声を掛けてきた。



「公園でぼーっとしてるなんて初めて見た。」

始業時間間に合ってるし、体調でも悪いんじゃない?



なぜか本気で心配してくるレンに、あいまいな返事をしながら私は見たものを整理する。


とびおに見せられた3人の少女は、どこからどう見ても普通の女子高生でしかなく、とても人を殺すようには見えない。


むしろ気になったのは、肌の露出だ。


自転車に乗っていた桜子も、汗をかくはずなのに、長袖ブラウスで、スカートが翻ったときに見えたジャージも、長ズボンだった。

下着を見えるのを防ぐ目的なら、ハーフパンツの体操着で十分なはずだ。



私の推理は、別の地点へ向かおうとしていた。


レンと一緒に登校して、席についてとびおへのラインを送ろうと起動したところ、知らない人間からラインが送られてきていて、ブロックしようとしたが、文面に目を見張る。




「お前はあいつに利用されている。俺が真実を教える。」



シンプルに「楓」という名前のアカウントが、私にそう、メッセージを送ってきた。







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