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17(あいす)

「なんで開けたわけ?」




隣で無言で行き先も言わずに運転する楓に、私は何も言えない。

まさか、一日に二人からキスされるなんて想像できるわけないと言いたいが、こういう時漫画だと、どう対応すればいいか、必死に探して、思いつき、横で無表情で運転する楓の方を向く。



「全然気持ちよくなかった。貴方とのキスのほうがいい。」



楓は私の言葉を聞いても、呆れたように大きくため息をついただけだった。



「無理してお母さんの言葉を使わなくてもいいよ。お前には似合ってない。」



彼は、母の全盛期の著作も読んでいたようで、すぐに作中のヒロインの同シチュエーションのセリフだと見破った。

まあ、あれドラマ化もされてるから有名だったよなあ、となんだか気が抜けた気持ちで外を見る。



普段、彼が運転しているイメージはなっかったが、ナビを使って混雑道路を避けて、すぐに繁華街から外れた場所にある自宅兼仕事場に到着した。


寄っていくかと聞いたが、明日も仕事があるとかで、とりあえず冷蔵庫からコーヒーボトルと、徹夜用お菓子箱からガムやグミを数点選んで、停車中の窓から渡したら、素直にお礼を言われた。



そして、私が戻ろうとしたとき、体を引かれて、またキスされた。



普通、こんな状況だと、ドキドキするのが主人公なのだろうが、私が感じたのは、最初にキスしたときの苦さで、嫌いではなかったが、その衝撃に顔を顰めてしまった。


「・・・なんだよ。」


思いきり不機嫌になった楓に、私はどうすればいいか、そもそもなぜ私が彼に気を使わなければいけないのか、なんだか面倒になってきたので、何も話すことはないと踵を返そうとしたが、呼び止められた。



「俺は付き合ってるつもりだから。」



さっきから、私に彼氏面してくる彼だが、思い出す初対面では、仕事として女性と関係を持っていた。なのに、私には束縛してくるのは、理不尽でしかないと考える。



「じゃあ、今寝てる女の人と全員別れて。もう会わないで。」



私の口から出たのは、負け女の独占欲の象徴みたいな言葉で、流石にこれには彼もお手上げだろうと、私への執着から手を引くはずだと、何故か自然と口元が緩み、笑ってしまった。



しかし、目の前の楓は、一瞬固まった後、エンジンを切って、私にドアから離れるよう言うと、外に出て、ポケットから2台スマホを出した。


そして、車の前まで歩くと、放り投げるようにスマホを地面に落とす。



深夜の住宅街に響く、硬く割れた音に、思わず驚いて固まると、楓は車に戻り、エンジンをかけて、私に離れるよう手でサインを送った後、まったくためらいなく、スマホの上をタイヤで乗り上げた。



先ほどよりも分かりやすく、ぐしゃりと割れる音が響き、少し先で車を止めた楓は戻ってきて、粉々に砕けたスマートフォンを見て、満足げに微笑んだ。




「仕事の連絡どうするの・・・。」



私は呆れたようにそんな可愛くないことしか言えなかったが、楓にとっては十分だったようで、



「あー、寮帰ったらPCあるから、お前の垢にDMは送れるし、明日にでも、お前しか連絡先入れてないスマホ契約してくるよ。」

だからさ、また、近いうちにデートしような。


楓はそう言って、私の髪にキスすると、おやすみと言って、車に戻り、走り去っていった。



残されたのは、粉々に砕けたスマホを掃除するのは私だよなと、現実的なことを考え手てしまったが、まずはもうお風呂に入って、明日の準備して、明日考えようと。脱力した気持ちで、家に帰るだけだった。



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