表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/21

ぽっきー(11)

私の使える権力は案外大きいらしいが、今まで個人の目的で利用したことはほぼない。



「彩先生には俺も取材が来てお世話になったから許すけど、勝手なことするなよ。」


腕を組み仁王立ちで私を迎えたのは、Plutoの実質リーダーこと空木飛馬だ。



出版社ルートで事務所に連絡を入れて、一週間ほどで返ってきたOKにより、私は今、Plutoの寮の目の前に立っている。



飛馬以外のメンバーは仕事で、まあ、その時を狙ったわけだけれど、一歩足を踏み入れて、その綺麗さに目を見張った。



確かに、専門の掃除業者はいるのだろうけれど、5人の男性が住んでいるには生活感が無さ過ぎる。

靴は綺麗に並び、塵ひとつない廊下はなんだか不気味で、通されたリビングも、彼らの写真やファンからの贈り物、他アーティストのサインや一緒に撮った写真が飾られているが、テーブルやソファの無機質さは、モデルルームとしか思えなかった。



「あんたの想像通り、みんな仕事を理由に寄り着かないよ。」



嫌悪感を隠さない表情だが、お茶を入れてくれた飛馬にお礼を言って、ソファに座る。



「前は全員そんなもんだったし、それで上手くいってたが、譲さんの件やハリーのヒスのせいで、ご機嫌伺いしながら飯囲むくらいだ。」

ハリー以外は、きっともうこのグループに関心はないだろうな。



断言してしまった飛馬に私は驚く、彼は確か実質リーダーで、グループをまとめる立場のはずだったが、諦めてしまうほど酷かったのだろうか。



「いいよなあんたは、親の仕事がそのまま自分にも向いてて。」


飛馬はぽつりと呟いて、私を見た。

流石に芸能人の娘という立場だけでは入れてもらえないと思い、現在の漫画の執筆者であることも伝えてあったので、一応はミーハー女子高生ではなく、仕事の取引相手と認識してくれているようだ。

そして、メンバー2人に接触されていることも彼は認知済みだ。



「ハリーと譲さんと同じ道をあの2人も歩むのかと肝が冷えたが、あんたはクソガキどもとは違って一安心したよ。今は。」



飛馬の目は、私を睨みつけていることは変わらない。

彼の言葉の通りなら、私が鳶緒と楓と何かをしようとしていることは、分かっているようだ。

まったく、このグループのプライベートはどうなってるのか心配になる。



「いや、鳶緒に関してはあえて晒してるよ、譲さんとハリーに向かって。」


私の疑問はもっともだと思ったのか、飛馬は説明してくれる。



「あいつは2人を憎んでるからな。特に譲さんをだけど。けど、2人は何もあいつに反応しない、ハリーは最近ヒスがすごいから気づいていないんだろうし、譲さんは気づいてて、でも無視してるんだろうが。」



やれやれと呆れながら話す飛馬に、先ほどから気になっている点を聞いてみる。



「話の流れで、魔法少女の恋人が、ハリーくんとジョーくんなのは分かったけど、てことは何、メンヘラ化して自分の恋人に暴力振るってるわけ?あの2人」



私の言葉に、飛馬は即座に否定する。



「んなわけないだろ。そこまでは病んでねえよ。あれは、あいつらの怪我とかが最近再生しにくいとかなかったことにならないとかハリーから聞いてたけど・・・」



そこまで話したところで、玄関から騒がしい音が聞こえて、何やら言い合いする声も聞こえる。


「あー・・・噂をすればだよ。」



舌打ちして、私に隠れているように言うと、玄関に向かう飛馬、

私が隠れようと周囲を見回したが、聞こえてきた声で足が止まる。




「どういうことだよ!!なんで血が止まらないの!!!」

「落ち着いて、前より時間かかるだけだから」

「死んじゃう!!明日奈ちゃんが死んじゃう!!!!」


混乱しながら叫び続ける少年の声と、なだめる少女の声、どちらも聞き覚えがある。


足音はまっすぐこちらに向かって、


「おい!いま他の客来てる・・・・」


という飛馬の声を最後に、扉が乱暴に蹴破られた。


私の目に飛び込んできたのは、同じ制服を血で濡らしながら気絶する少女多分桃井さん?だろうかと、その子を姫抱きしながら同じく血まみれの制服を着る、見目の整った少年。

その後ろに、髪が汗で乱れてどこか薄汚れたこれまた同じ制服の少女、きっと風谷さんだろうか、その隣には私を見て頭を抱えた飛馬が立ち尽くしていた。




「・・・・え・・・・笛木・・・さん?なんで・・・」



目を丸くする風谷さんにどう言い訳していいか分からず凍り付いていた私だったが、



「俺のだからだよ。」



4人の後ろから聞こえる低く静かな声に、皆一斉にその方向を見る。



「その子は、俺の彼女だ。」




気だるげに着くずしたコーデが妙に様になる楓が、だるそうに、でもしっかりと、そう、言葉にした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ