1 卵かけご飯と納豆ご飯
出演
温かなご飯 納豆(今回はひきわり納豆) 生玉子(生卵も直ぐ登場)
協力
冷凍庫 炊飯器 食卓テーブル ご飯茶碗 箸 その他・・・。
ロケ地
自宅
秋の昼過ぎ。
穏やかに過ぎる休日。
それは至福の一時・・・・。
グー・・・・。
腹が鳴る。
自宅でのんびりと過ごして居た私は、自分一人の為の昼食をどうしようかと思い、冷凍庫の中に有るものを思い出しながら、リビングに在る一人掛けの椅子にドッカリと身体を預けながら考えた。
一人分だけだし・・・・簡単で美味しい何かで食べるかと思い、確か納豆がまだ在ったはずだと思い立ち上がった。
それから冷凍庫のドアを開けて中を見ると、ひきわり納豆が2パック残っていた。
ドアの方を見ると、玉子も在る。それも、ちょっと値段が高い美味しい卵だ。
これで、私の昼ご飯は決まった。
それは、 卵かけご飯納豆ご飯 である。
私は早速その2つを冷凍庫から取り出し、食卓テーブルの上に置いた。
それから、ご飯茶碗を持ってきて、炊飯ジャーの中から保温に成っている暖かなご飯をそれによそった。
テーブルの上には、三種の神器成らぬ三種の品が並んだ。
食卓テーブルの椅子に着いた私は、早速、ひきわり納豆のパックを開いた。中には納豆のタレと、薄めの辛子が入っていて、それらは、中の納豆の上に乗せられたビニールシートの上に乗っかっていた。
私は指で摘んでそれをテーブルの上に置いた。
次にビニールシートを指で摘み、テーブルに置いておいた箱ティッシュから、ティッシュペーパーを1枚取ってその上に乗せて置いた。
そして、左手で納豆が入ったパックを持ち、右手には箸を持った。
次にする事は決まっている。
納豆を箸でザクザク、グルグルと混ぜるのだ。
しかし、それは軽くするだけ。
人によっては泡立てる様にする場合もあるが、私はそれがそんなには好きではないし、そんな苦労をしたくも無いので、簡単に済ます。
続いては、取り出していたタレと辛子の封を切り、混ぜたひきわり納豆の上に掛ける。
その空(95%程中身を使用)になった袋も、先程のビニールシートが置かれたティッシュペーパーの上にまとめて置いた。
私はまた、納豆を混ぜる。
テーブルの上に置かれた玉子を睨みながら・・・・。
そうして程よく混ざったひきわり納豆を、確かめた私は、それを一度、テーブルの上に置いた。
それから、ご飯茶碗を左手で持ち、右手に持ったままにしていた納豆の糸が絡んだ箸を使って、茶碗の中の白米の中心に窪みを作り、またテーブルの上に置いた。
使った箸は、納豆パックを箸置きの様にして置いた。
この箸が転がらなければ良いが・・・・。
私は少し不安に思った。
それから私は、殻に包まれたままの玉子を右手に取り、テーブルの天板にコンコンと叩き付けてヒビをいれた。
ヒビの具合を目で確認。
両手を使って、玉子の中身・・・詰まり生卵を、茶碗に盛られ中心に窪みを付けられた白米の上へと落とし入れた。
新鮮な卵は、白身の透明度が高く、下にあるご飯がよく見えた。
白身が盛り上がっているな・・・・。
これも新鮮な証。
空かさずテーブルの上に置いてあった 濃口の甘口醤油 をクルリとひと掛けする。
きっと良い塩梅。
早速、左手にご飯茶碗を持ち、右手には箸を持った。
私は、赤みがかった黄身共々、醤油を掛けたそれらを箸を使って混ぜ始めた。
この混ぜ具合も、好みが別れるところだろうが、私はこれも程々にする。
詰まりは、多少、白身が混ざり合って無くても良いのだ。
何を隠そう、私は、あの有機的なドロッとした食感もチョット好きなのだ。
時は熟した!
今こそ、食する時!
この機を逃しては成りませぬ!!
何せ、卵かけご飯は、ラーメンの様に短い時間で変化してしまうのだ。
ダラダラと食べてはいけない。
美味しい時を逃してしまうからだ。
それは、時間とともに生卵と醤油を吸収してしまう白米の宿命だと言えた。
私は早速、食べ始める。
卵黄のまろやかさ・・・・白身の食感と微妙な風味。
そしてその全てをまとめる、濃口の甘口醤油の複雑な味わいと風味・・・・。
日本人で良かった・・・。
そう思う。
生の卵黄を食べる国は、いくらか在るようだが、全卵を生で食べる国はそうは無い。
私は卵かけご飯を食べる度に思うのだ。
醤油の発明は偉大だと!
いや!
偉大過ぎると!!
大豆は世界中に在るにもかかわらず、このような醤油を発明できたのは日本人だけなのだ!!
凄いですね!!
世界の食を変えたよ!!
自画自賛の様だ!!
だが私の手柄じゃ無い・・・・・!!
くっ・・・・。
私は危うく感動に涙しそうに成りながら全部を食べ切ってしまいそうな自分に気が付いた。
おっと・・・・危ない危ない。
危うくここからの第二形態を忘れるところだった。
私は、先に用意してあったひきわり納豆を、食べかけの卵かけご飯の上に載せた。
では早速。
私は、ひきわり納豆を箸で手前に寄せ、卵かけご飯と一緒に口の中に軽く掻き込んだ。
口の中には、納豆の風味と旨味が広がり、それが鼻を抜けていく。
同時に、ひきわり納豆特有の豆の苦味が、全体の味を引き締める。
美味いなぁ・・・。
つくづくそう思う。
この食べ方を数回繰り返して楽しむ。
そろそろご飯茶碗の中の卵かけご飯も3分の1程になっていた。
頃合いだな・・・・。
私はここで、第三形態への移行を決意した。
第三形態・・・それは、言わずもがな、 全混ぜ納豆卵かけご飯 の事なのだ!!
これをしてしまうと、もう、後には引けない!
背水の陣である。
覆水盆に返らずである。
後悔先に立たずである。
国破れて山河あり・・・では無いはずである。
兎に角!
とにもかくも私はそれを実行した。
全混ぜの納豆卵かけご飯・・・もしも誰かが私の為に、予めこの様な状態で出してくれたのなら、私は多分食べられないだろう。
気持ち悪くて・・・・。
しかし、事の始まりから自分でやった事は、自分が知ってるので気持ち悪いとは思わないのである。
コレを自己ひいきと言わずして何と言おう!
しかして・・・・自分で作った前混ぜ卵かけご飯は、さっき迄のとは一味違うのだ。
納豆の風味が卵かけご飯に移り、卵かけご飯のコクと味わいも納豆をコーティングして、円やかな風味を醸し出すから不思議だ。
この上なく、美味しい・・・・。
しかも、安い・・・・。
私がお金持ちだったら、最高級の卵かけご飯と納豆卵かけご飯を食べてみたいと思った。
米はササニシキか・・・コシヒカリか・・・・それとも ゆめぴりか か おぼろ月 ・・・或いは秋田こまち・・・は、米よりも本物が食べたいな・・・・大人な意味で。
納豆は、どこぞの有機栽培のもので、無農薬だろうか。しかし、これはそんなに値段はしないだろう。
玉子は、どこぞの地鶏だろうか。それも希少種の鶏の玉子だろう。
醤油も問題で、なかなか手に入らなそう・・・・。
小豆島あたりの、昔ながらの醤油蔵で仕込んだ無添加丸大豆醤油だろう。
私はそうした贅沢な醤油を一度も味わった事が無いので、そうした醤油蔵の近くに住んでいる人を羨ましく思う。
食べ終えた時、私はすっかりと満足し、秋に色付く窓の外の草木を眺めた。
今日と言う時間は、まだ半分も終わってないのに、日は既に西側へと傾き始めている。
私は、血糖値が上昇し、少し気だるい思いをしながら思った。
秋の夜長と引き換えに成るは、秋の日はつるべ落としの如くってやつなのだな・・・と。
お試しあれ!