純白の女神様
物語8
投稿不定期ですいません、2部目一応完結です
二人の出会いから既に2年程が経過しました・・・
そしてその二人が出会った森の中に一人の男が
茂みの中で息を潜めていました。
「くそ・・・俺はまだ・・・死にたくねぇ・・・」
この男の名はランド、元騎士の冒険者である容姿は
短髪の黒髪に引き締まった体そして青い眼を持っていた。
ランドは冒険者の中では中堅よりも少し腕が立ち元騎士の性格も相まってか冒険者どうしでの信頼関係が厚い、いい人だ、そんな彼は何故ここにいるかというと
今回彼は新入り冒険者のお守り役として深夜の森の調査に来ていたのだ。
基本この森には強い魔物がいない、だからこそ新入りの冒険者の腕試しにはちょうどいいそれがランドの認識だった。
だが、今回森の調査に入ってから二日目の夕方、ランドたちはある魔物と相対したのだ・・・
◆○◆
「クルシャァァァァ!!」
「何故だ・・・何故この森にキメラがいる!!」
キメラ・・・それはどこかのアホが創り出した魔物と魔物の合成魔獣・・・その強さは上位の冒険者数人がかりでやっと倒せる程の化け物だ、そんな魔獣が目の前にいる。
「・・・」
「・・・」
「シャァ・・・」
両者は相対したまま動かない、片や恐怖と震えで動けず、片や今宵の獲物が大量だと歓喜に打ち震えている
このまま永遠と続くかと思われたにらみ合いが突如破られた。
「うわぁぁぁ!!!」
下位の冒険者の一人があまりの恐怖のあまり背をキメラに背を向け逃げ出したのだ、無論それを見逃すほど
キメラは甘くない・・・
「クルシャァァァァ!!!」
何度目かになる雄叫びを上げるとキメラは未だに微動だにしないランド達を飛び越え逃げ出した冒険者に
襲いかかる・・・「く、クルナぁぁぁぁ!!、くわ、喰わないでくれぇぇぇぇ!!!」と冒険者の悲痛の叫びと共にバキ、ボキと嫌な音だけが鳴り響く。
そして今頃になり正気を取り戻したランドは残った下位の冒険者に向け一言紡ぐ・・・
「お前らは・・・先に行け、俺が殿を・・・足止めをする。」と、「そんな置いていけません!!」と我を取り戻した冒険者の一人がランドに突っかかる。
しかしランドが言う。
「大丈夫だ・・・俺もここで死ぬ気なんて毛頭ねぇ
適当に足止め出来たら直ぐにお前らの後を追う
だから行け・・・」
「わかり、ました、ご武運をランドさん・・・」
そういうと残った下位の冒険者達は全速力でこの場を離脱する。
「さて・・・」
ランドが一言発する頃には、食べ終えたのだろう・・
顔が血塗れになったキメラがランドを見ていた。
「すまねえ、俺が不甲斐ないばかりに・・・せめて
一矢報いてやる!!」
喰われた冒険者を思ってか謝るランド、そして迎え撃つは合成魔獣キメラこの時からランドとキメラの
死の鬼ごっこが始まったのである。
◆○◆
ランドとキメラが戦い始めて5分後、ランドは既に体がボロボロになり片足は満足に動かず、片腕はもがれ体力も限界で気力で立っているのがやっとでしたら。
既にランドが限界と知ってかキメラの顔は笑ったかのように歪み、身をかがめ、勢い良くランドに向かって突進をしました。
ああ、まだやりたい事があったのになーと半ば意識が遠のいてゆくランドにはキメラの動きがとても遅く
・・・世界が、遅く感じました。
ドコン!!!
「グジャァァァァァ!?!?!!!」
そんな一つの鈍い音とキメラの断末魔の悲鳴により
ランドが手放しかけた命を取り戻す事が出来ました。
「・・・?一体・・・何が?」
声は掠れ必死に自分の目の前で起きた状況を整理しようとするランド、しかし今の彼に分かることは
先程まで自分を殺そうとしたキメラの胴体が半ば抉られて臓物が滴る遺体と・・・
「・・・にゃ〜・・」
こんな危険な森にいるはずがない猫の鳴き声が聞こえたくらいでした・・・
▽○▽
キメラとの呆気ない幕切れから1時間後、ランドは茂みの中で息を潜め隠れていました、つまりやっと序盤
への状況に繋がりました。
ランドは片腕をもがれ血が大量出てしまい、元々持っていた応急キットを使い何とか止血をし、自分から
臭う血の香りを臭い消しで消し魔物から襲われないようにしました。
ですがランドは既に血の大半を失っておりいつ死んでもおかしくない状況に陥っていました・・・
「くそ・・・俺は・・・まだ・・・死にたくねぇ。」
しかしランドの言葉とは裏腹に視界は靄がかかったかのように掠れていきます
そうしてランドが意識が失いかける時、突然背後から声が聞こえたのです。
「あ、あの・・・大丈夫ですか?」
ランドは動かない体を無理矢理動かし背後に誰がいるかを見ました、そうして彼は一つ言葉を・・・紡ぎました。
「じゅ、純白のめが、み・・・?」
そうして彼の意識は暗転しました。
○◆○
「あれ?あれれ?どうしました!?返事をして下さい!!」
ランドが気を失って直ぐに、真っ白な服を着た、これまた真っ白な髪を持った少女・・・リンは状況が分からず混乱してました。
「落ち着け・・・リン、その男は気絶しただけだ・・
・」
とリンに声をかけてきたのはこれまた真っ白な毛並みを持った猫、ユキでした。
「ふぇ?そ、そうなの?でもユキ・・・この人、死にかけているみたいだよ・・・」
ランドの怪我と顔色の悪さが相まってランドはまるで死人の様にも見えました。
「まあ、でも私があの時、キメラを倒してなきゃどうせこの男は死んでだろうがな」
もちろん皆さんがわかっている通り、あの時キメラを倒したのは木の影に身を潜めいた、ユキの攻撃呪文でした、そもそもユキは魔猫と呼ばれる魔物で知性が高く、魔法を主体として攻撃、エンチャント、回復などを使い、上位の冒険者10人で適うか適わないかの
レベルらしい・・・そしてこの場にリン、それにユキが現れたり理由はユキに与えられた、今は亡き主からの命令に従っての事、その内容はとは・・・
「この森に浸入してきた人間を追い返せ、又は迷子なら森から出れる様導け・・・」と言うもの、しかし
ユキは自分と似て捨てられたリンに同情してか、リンだけは森から追い返さず、今では2年程一緒に暮らしている。
そんなユキの使命を聞いたリンは「私も手伝う!!」
と言い始め、ユキと一緒に森に入ってきたものを
追い出したり導いたりしていた。
「ユキ・・・この人の腕とか足・・・治せそう?」
「まあ、私の回復呪文なら治せるが・・・別にこの男を助けなくともいいんだぞ?」
まあ実質ユキに与えられた使命は森に入ってきたものを追い出すまた、導く・・・それだけである、だから別にこの男を助ける理由はないのだが、リンは食い下がる・・・
「でも、ユキがこの人を助けたんでしょ?なら
ユキ・・・最後まで面倒をみないと・・・
ダメだよ?」
「くっ!?まあ・・・そうだな、やってしまった事はしょうがない、助けてやるか・・・」
「ふふっ、素直じゃないよね、ほんとユキはツンデレさんなんだから!!」
「ぶふ!?私がツンデレなんてたまるか!!
私は仕方な〜く責任を取るだけだ!!どこにツンデレ要素がある!!!!」
「あれれ〜?でもユキ〜あの人を助ける時に
『ヤバい!!あの人死んじゃう!!うおおお!!』って心の中で思ってたでしょ?」
「何故ばれたし!?!?」
とリンにまるで心の中を見られてるかの様な気分になるユキは思い切り取り乱す・・・が
「あ、やっぱり?だよね〜カマかけてみるのもたまにはいいね」
とさっきまでの言葉は全部推測だよ〜とニヤニヤ笑いながらリンに言われたユキは、プルプルと体を震わせて・・・
「フシャァァァァーー!!!」
と言いながらリンに飛びかかり、キャットファイトをはじめるのでした・・・あの、誰かランドさん助けてあげて・・・
◆○◆
「・・・ん・・あ?ここは?」
夜と朝が交わる時間帯・・・森の入り口で地面に横たわって眠っていた、ランドは目が覚め体を起こしました。
「・・・・そういや俺・・・何してたんだっけ・・・
そうだ!!俺は確かキメラに襲われて・・・」
片腕を失った事を思い出したランドは咄嗟に無いはずの腕が自分の体にくっついているのに気付き、安堵
しましたが・・・
「あれは・・・?夢・・・だったのか?」
と当然の疑問を浮かべるランドだがある事で夢ではなかったと確信した、それは。
「・・・ん?なんだこれ?」
ランドの着ている軽装鎧にまっ白な髪の毛が一本ついていたのです。
「こ、これはまさかあの・・・女神様・・・私をお救いいただき、ありがとうございました・・・」
おぼろげな意識の中ランドは微かに見たあの真っ白な女神様が助けたんだと気付き、その場で片膝をつき
真っ白な髪の毛を手に握りしめ、騎士が主君に示そうよな態度で女神にお礼を告げたのでした。
それからでしょうか・・・あの森には女神が純白の女神様がいると、道を迷い込んでも正しい道へと導いてくれる、森の中で困っている事が起きたら必ず現れてくれる、愛おしい女神様いるという噂が流れ出したのは・・・
ユキ「ぷぷ、純白の女神様だって・・・なんであの日君は真っ白な服きてたのかなー不運だねー
僕をおちょくるからバチが当たったんだ、ハッハー!!」
リン「・・・」
ユキ「ど、どうしたのさ?リンなんで無表情でこっちに近づいてくるの?こ、こわいよ、く、く、
くるなぁぁぁぁ!!」
この後リンによる万力の刑に処せられるユキさんでした(笑)