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ピエタ古美術・古道具店  作者: 三塚章
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石の指輪

石を削って作った指輪です。『わらきさきの指輪』と呼ばれています。その名の通り、大陸のある国の后が最期まで持っていた物です。

 その后は翠葉ツェイェという名で、皇帝の寵愛をいいことに、放埒ほうらつな生活を送っていたそうです。飢える民を尻目に毎夜豪華な宴を開き、忠臣を残酷に処刑しては奸臣を近付け、かの妲己だっきに劣らぬ振る舞いをしたと。

 そして民衆の怒りは爆発。ついに反乱が起きました。それに付け込んだ隣国に翠葉の国は滅ぼされ、皇帝と翠葉は処刑されることになりました。

 二人は縛られ、まず最初に皇帝が首をはねられました。目の前で伴侶を殺された皇后は、泣くでもなく、怒るもなく、嗤ったそうです。

 髪を振り乱し、白い喉を仰け反らせて甲高く嗤う様は、恐ろしくも美しく、その場にいた者は強く魅せられ目を離すことができなかったと伝えられています。

 それにしても、そんな后が着けるにしては質素な指輪だと思いませんか? 材質も翡翠ひすいやサンゴではなく、ただの軟らかい石。表面にあるツタと花の彫刻も稚拙で、お世辞にも上手とは言えない代物です。

 翠葉は、もとは貧しい村の生まれだったといいます。その美しさが評判になり、それが皇帝の耳にまで届いたのです。後宮にむかえようとする使者を、翠葉は突っぱねました。彼女には将来を約束した想い人飛虎フェイフーがいたからです。その指輪はその男が彼女のために手作りし、贈ったものなのですよ。

 しかしその拒否の代償は恐ろしいものでした。帝は兵をその村にむかわせ、家々を焼き払い、飛虎はもちろん、抵抗した村人も斬り捨てさせると、彼女をむりやり都へ連れ帰ったのです。

 そう、翠葉は毒婦となることで遠回しに村と飛虎の仇である皇帝を殺したのです。仇が治めていた国もろともに。

 ほら、その彫刻の隅に、まるで花のような赤黒いシミがあるでしょう? ちょうど彫刻の花の上にあり、色が塗られているようですよね。それは処刑されたときについた、翠葉の血です。そのシミは洗っても、削っても取れないそうです。まるで飛虎の彫刻と永遠に共にありたいとでも言うようではありませんか。


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