#3
【作者より】
この作品は実際に出版打診の経験がない作者が書いたものです。
実際の出版打診と全く違いますと思いますので、あらかじめご了承ください。
5階にある会議室。
そこには「なろう文庫」編集部の編集者が全員が集まり、編集長である益子がくるのを待っていた。
「おおっ、全員か!」
益子はそこに集まった編集者達を見て驚く。
「編集長のお話が聞きたくて……」
「なんか、興味があるんすっよね」
「そうそう」
彼らは益子の話に興味津々だ。
何人かの編集者は目を輝かせるように彼を見ている。
「いやいや、そんなわけではないんだよ。本当に参考になるか分からないが、聞いてほしい」
彼がそう言うと、編集者達は静かに耳を傾けた。
*
それは今から数年前……。
益子は他の出版社で様々な経験を経て、その当時は単行本が中心であった「なろうブックス」に就職したやさき、当時の編集長から、
「益子くん、君は出版打診をしたことがあるかい?」
と言われた。
彼は「いえ」と首を横に振りながら答える。
「そういえば、君は『小説家になろう』という小説投稿サイトって知ってる?」
「ハイ、たまに読みに行くことがありますね」
「この出版社はそのサイトに投稿されている面白い作品をスコップ(注・拾い上げる)し、出版打診を出す。そして、本にするのが「なろうブックス」のモットーだ」
「はぁ……」
そう言われ、当時の益子が知らなくても仕方なかった。
彼は今まで勤めていた出版社は新人賞を受賞した作品の担当者として、動き回ることが多かったからだ。
「編集長」
「ん?」
「出版打診の経験はありませんが、本として出したい作品があるのですが……」
「作品のタイトルは?」
「日下部良介先生の『いくつになっても恋をしたい』という作品です」
「すぐに検索かけられるかい?」
「ハイ! えーっと……ありました! こちらの作品です!」
益子はパソコンでその作品を検索し、編集長はその画面に映し出された作品を数話読んでみる。
「ほう……社内恋愛の話か」
「もし、単行本にするならばファンタジーや学園ものもいいですけど、社会人にも「なろうブックス」の存在を知ってもらいたいのです!」
「なるほど……」
編集長はコクコク頷き、「出してもいいんじゃないのか?」と彼に告げると、書類を片手に編集部の外に出た。
あのあと益子は『小説家になろう』の運営に出版を打診したいと報告文を送る。
そして、運営側から日下部良介氏にメッセージを送った。
2016/04/07 本投稿
2017/01/29 大幅改稿に伴い、話数変更