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#17

「さて、会議室に戻りますか」

「栗林さん、戻る前に少しだけいいっすか?」

「ええ。いいですけど……」


 新垣が会議室に戻ったあと、栗林はあとを追ってそこに戻ろうとした時、早見に呼び戻された。

 彼女はどのような(くだり)の話なのかは分からない。


「新垣さん、いつも通りに戻ってよかったっすね」

「そうですね。彼女にとっては余程その作品をアピールしたかったと思います」

「……えっと……実は俺、新垣さんが選んだ作品を狙ってたんすよね……」

「奇遇ですね。私もです」

「あれ? 栗林さんは驚かないんっすね?」

「えっ?」

「「あの早見さんがこの作品を!?」とか「意外だなぁ……」とか言われるかと思って……」

「ああ……そう言われてみればそうですね」


 彼は彼女に新垣が選んだ作品を自分も選んでいたことを告白する。

 早見は冗談で言ったわけではなく、彼自身の本心で選んだもの。

 しかし、栗林は彼が意外とは思わなかった。


「なんだか今さら感、満載なんっすけど……」

「私は早見さんの意外性とかじゃないのですが……「登場人物が魅力的だった」とか「作風が好き」とかで選んだのではと思ってまして……」

「なるほど。栗林さんはそれで驚かなかったというわけだったんっすね」

「ハイ」


 彼女は早見がその作品を選んだ理由を推測。

 それを聞いた彼は栗林がそのようなことを考えていたとは思っていなかった。


「でも、登場人物に意外性を持たせることは面白いですからね。あとストーリー構成も」

「そうっすよね!」

「私も作者さんが意外な点を突いてきたので、読んでいた時は驚いたんですよ」

「へぇー……登場人物っすか?」

「それを言ったらネタバレになるかもしれませんので、伏せておきますね」


 早見は彼女がどのような観点でその作品を拾い上げようとしたのかを訊いてみようとしたが、答えてくれなかった。

 彼が一番知りたかった栗林のポイントはネタバレとして伏せられてしまう。


「ネタバレですかぁ……」

「おそらく新垣さんの口から話されるでしょう。私が彼女と同じ観点だったらというわけで()()()()と言っただけですよ」

「もし違う観点だったら編集会議が終わったらでいいので答えてくださいよ? 俺、モヤモヤしちゃいますんで」

「分かりました」

「話が変わりますが、俺は今まで異世界ファンタジーものやバトルもののような男性向けの作品しか触れてなかったんすよね。なんか『華燐のほのぼの日常日記』を読んでいると癒されるというかなんというか……」

「私もです。他の編集者もその作品から癒やしを求めている人が多くいると個人的に思いました」

「やっぱり、癒やしを求めてるんすよね……って、栗林さん! もしかして、今話したのはネタバレじゃないっすか!?」

「く、口が滑ってしまいました! あわわ……どうしよう……」


 今まで男性向けの作品しか触れてこなかった早見にとっては新レーベルである『なろう文庫』での全ジャンルでの拾い上げは新鮮なものだったのかもしれない。

 今まで読んできたジャンル以外にも様々なジャンルがあるのだと――――。

 彼が癒されると言ったのは栗林はもちろんのこと、どの編集者も同じことを思っているのではないかと互いに感じていた。


「もう早見さんの用は済みましたよね? そろそろ新垣さんが会議室に着いたと思いますので、私達も戻りますよ! ほら、早く!」

「わ、分かりました!」


 彼女らは慌ただしくエントランスから会議室に移動する。

 同じ頃、会議室(そこ)では益子や編集者達は2人がなかなか戻ってこないため、心配し始めていた。

2018/12/20 本投稿

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