#9
翌日……。
「なろう文庫」編集部には朝早くから編集者がブルーライト対策の眼鏡をかけ、拾い上げ作業を行っている。
「あー、もう迷っちゃう……」
「投稿されてる作品がたくさんあるので、迷いますよね……」
「それに眠くなってきた……」
「ですよねー」
彼らはあらすじや本編を見ながら読み進めていく。
朝から作品を読んでいるため、寝落ちしている編集者が何人かいた。
「おはようございます!」
その時、編集部に栗林が出社してきた。
彼らのうちの何人かはその声に驚き、目が覚める。
「おはようございます、栗林さん。機嫌がいいですね」
「そうですか? そう言っていただだけると幸いです」
「なんかいい作品でも見つけたんじゃないですかぁ?」
「そうです! 実は2作品見つけたんですよ!」
「栗林さん、早いっすねー」
「本当ですか?」
「知りたいです!」
「1つはVRゲームもので、もう1つは吹奏楽部ものですよ!」
彼女は家に帰ったあと、『いくつになっても恋をしたい』と『時空の演奏者たち』の2冊を一気に読み終え、スマートフォンでいろいろな作品を読んでいた。
彼女は話しながら自分のデスクに着くと、他の編集者と同じように眼鏡をかけ、作業を始めた。
「みんな、おはよう」
「「おはようございます!」」
益子が編集部に顔を出す。
編集者達は椅子から立ち上がる。
「業務連絡で打診をしたい作品はホワイトボードに書いてほしいんだ」
彼が入口から持ってきたのはホワイトボード。
それが出てきた時は編集者達からざわめきが起こる。
「他の編集者と被らないようにするためですか?」
女性編集者から問いかけられたので、益子は「その通りだよ」と答えた。
「そういえば拾い上げたい作品がある人」
彼が全員の顔を見回すと、栗林が「ハイ」と挙手する。
「栗林さん、昨日まで悩んでたけど、少し絞れたのかな? ここに書いてね」
「分かりました」
彼女はホワイトボードにそのタイトルを書き始めた。
彼女が拾い上げた作品は『virtual on-line saga』と『私立さくら女子学園吹奏楽部』の2作品。
「あっ、俺が狙っていた作品だ! 仕方ない、栗林さんが先に書いちゃったから探し直しだな……」
「栗林さんがその作品を選ぶのは意外です」
「私も普段読まないジャンルを読んでみよう」
「全ジャンルからなので、気になった作品を選んだだけですよ」
栗林がそのように言うと、益子が彼女に引き継ぐようにこう言った。
「まぁ、その作品は毎月の編集会議でどの順番で出すかを決めるから全ジャンルから1人5作品というのはあらかじめ決めておけば今後、バタバタしなくて済むかもしれないからな」と――。
2016/07/24 本投稿
2017/01/29 大幅改稿に伴い、話数変更




