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故意に広がる距離
翌朝。
遙はいってきます、と朝早くに家を出た。
「え?なんでこんな朝早いのー?」
後ろから尋ねられる、遙は嘘に対する罪悪感を隠した笑みで、学校で勉強する、と答えた。
境内の、木の上にいる烏摩に気づきながらもあえて挨拶を交わすことなく。
バス停にバスはない。
古びた自転車を一歩一歩と漕ぎ出す。
今はまだ朝早く。
でも、遙はもう、あの想いを自覚してしまった彼の前で、普通に振舞える自身がなかった。
儀式まであと2日。
烏摩も、必要以上に遙に近づくことはなくなった。
彼自身、理性を保つのは至難の業だと悟った。
そして、儀式まであと1日。
儀式直前の、夜。
「寝ましょう、烏摩さま」
「そ、だな」
最後になるかもしれない、その夜がとうとうやってきた。