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こればかりは難しすぎた
わかっている、否、わかっていた。
あの美しい舞、そしてこのあどけない表情、衝動的に口付けをしたのも、自分だ。
側におきたくて、告白した男に対して大人気ない行動をしたのも自分。
何か助けになりたくて、いろいろ失敗して怒られていたのも自分。
でも、助けになったときは、ありがとう、と頬を赤くしながら答える遙が、愛しく感じていたのも。
全部、自分なのだ。
「かえろ…」
涙を袖でぬぐって、遙は顔をあげた。
その表情は、儚さの中に強さを秘めていて、その表情を見た彼の鼓動が気づかぬ間に早くなっていた。
烏摩は木の幹に寄りかかるように、ずるずると身体を落としていく。
気づけば簡単なことで、気づいてしまったからこそ難しい。
「くそ…」
今まで我慢というものを経験したことの無い神にとって、手に入らないものはなかったというのに。
「これは、ちょっと…手に入れるのは、難しすぎる…」
神にすら手に入らないそれは……烏摩を苦しめる。