2話目: 勇/ 見詰め合ってニャーニャー言ってんのか
早速二話目投稿します~
結論から言うと剣は真剣でした。
ためしにそこら辺にころがっている石ころを切ってもらったが、もう切れること切れること。さながら切り分けられるバターの様でした、まる。
話を聞くとどうも彼女は異世界では勇者と呼ばれる存在で、魔王を追ってこの世界にやってきたらしい。
普通ならその時点で「おまわりさんこいつです」を発動させるか全力で逃げるところだがそれはやめといた、だってバターみたいになりたくないし。
魔法も使えるようで、実際にいくつか見せてもらった。魔法ということもあって種も仕掛けもない、もちろん手品だったとしても見抜けないけどな!
ちなみに、異世界って母国語は日本語ですのん?という俺の疑問も「魔法」という魔法の二文字で解決した。
なんでも術者から会話できる距離の言葉が誰に向けられたものかを判断して、術者に対するものだった場合言葉を発した人間の脳内イメージを術者に送る、というものらしい。逆に術者の発した言葉は対象者に言葉のイメージを送るそうだ。
「それって猫語とかもも通じそうじゃね?」
とためしにに猫語(考えながらながらニャーニャー言ってるだけ)で問いかけてみたところ・・・。
「話す相手が人間なら伝わるぞ」
とのお言葉をいただだきました。
やだ、魔法ってちょう便利。
でも仮に猫語で話したとして、周りから見たら見詰め合ってニャーニャー言ってんのか。うわ引くわ~。
というわけで猫語を使うのは控えることにします。
はい、そんなわけで。
この勇者本物じゃね?という懸念が上がってきたわけですが、当の勇者さんはというと。
「実は世界を超えるというのは初めてなんだ、本当は少し不安だったんだ。だから君みたいな預言者に出会えてものすごく安心した。迷惑をかけるかもしれないが、魔王を倒すまでよろしく頼む」
などと供述しており、既に俺が勇者パーティーに属することが決定しているらしい。
本当に不安だったのか、若干目がうるんでる気がするし。
でもちょっとまってよ、この人勇者なんでしょ?世界越えちゃう規模で強いんでしょ?ということは魔王も同じくらい強いんでしょ?
俺足手まといってレベルじゃないんだが、多分魔王のでこピンでさながら血の詰まったバルーンみたいに、地面に真っ赤なお花を咲かせちゃうこと間違いなしだよ。
そんなものは断固拒否せねばなるまい、ここはひとつビシッといってやろう。
「あの、僕そんなに強くないんですが・・・」
「安心してくれ、私が君を必ず守る。たとえこの命に代えてでも」
「あ、はい。ありがとうございます」
うん、まあ。守ってくれるならいいか。
え?ビシッと?だってこの人、腰に真剣携えてるし怖いじゃん。もし断ったなら言葉にはできないような、酷いことをされるに違いない。
バターみたいに!
そんなわけで俺が勇者のパーティに入ったんで、まずはお互いに自己紹介なんぞしてみる。
「俺は山下 義史、山下が苗字で義史が名前だ、あと21歳。副業としてフリーターをしているが本職は親のすねかじりをしている。呼び方はお好きなように」
「そうか、ならヨシフミと呼ばせてもらおう。私はリリィ・オートという、さっきも言ったが魔王を倒すために来た。リリィと呼んでほしい」
「よろしくリリィ」
「ああ、こちらこそよろしくな」
以上、自己紹介終わり。
「「・・・・・・・」」
そして訪れる沈黙。
き、気まずい!
いや、だって初対面だししょうがないよね。というか異世界から来た人にどんな話題振れっていうんですか。
「さて、自己紹介も終わったことだし、まずは探索がてらこの世界、とりいそぎはこの国について教えてほしい」
ただ、そう思っているのは俺だけだったらしく、リリィは気負った様子もなくそういって歩き始めるのだった。