やさしい記憶のかたち
掲載日:2026/04/09
「ちょっと見て!片付けてたらこんなの出てきたの!」
久しぶりの帰省で羽を伸ばしていた私のところに母が足早に駆け寄ってきた。
「ばぁば、それなぁに?」
娘の滴もボール遊びをやめ、母の手元を覗き込んだ。
そこには『らんちゃんとおおきなチョコケーキ』と書かれた絵本があった。
「懐かしい〜!私、これお気に入りだったの!」
「しずくも!しずくもみたい!!」
「ママも今のしずくちゃんのように、よく読んでってねだったのよ。特に寝る前はすごく。」
母はクスクス笑いながら、でもどこか懐かしそうに話していた。
「このえほん、しずく もらってもいい?」
「うん。もちろん。大切にしてあげてね。」
「やったー!!!」
滴は絵本を持って飛び跳ねて喜んだ。
それから滴は絵本を気に入って、眠りにつくその瞬間までそばに置いていた。まるであの頃の私のように。
その寝顔に向かって、私は小さく微笑んだ。
数十年後ーー
「ママー!!これよんで!」
「澪は本当にこの絵本好きだね。ママも小さい頃よく読んでもらったな」
「みおもいつかこんなすてきなおうじさまといっしょにチョコケーキたべるんだ!」
「そう。叶うといいね」
ママ、届いたよ。
私は空を見上げた。




