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10話


 目が覚めると、星愛はなにも覚えてはいません。ですが、愛魔法の使用方法についてだけはなぜか知っています。


 なにかしていた気がする。そんな気はしますが、それ以上はどれだけ思い出そうとしてもお思い出せません。


 そのまま、何も思い出す事はなく、賢人島の滞在期間が終わりました。


 帰ってきて、星愛は、月鬼に、散歩へ誘われました。散歩の場所は、星愛と月鬼が初めて会った場所。あの花畑です。

 

「いつ見ても綺麗ですね」

 

「……今日は、いつも以上に綺麗に感じる。星愛と来ているから、だろう」


「えっ⁉︎わ、私も、私も、いつも以上に綺麗です!あっ、今のは、私がと言うわけではなくて、ここの景色が」


 星愛は、顔を真っ赤に染めて、そう言いました。

 

「……星愛、聞いて欲しい事がある」


 月鬼が、真剣な表情で、星愛を見つめます。

 月鬼の、その表情に、星愛は、身構えました。


「その、初めてここで会った時、まるで、ここに咲いている花のように美しかった。あの景色に、星愛に、目を奪われていた」


「えっと、月鬼様?その、一体なんの話を」


「星愛の、昔いた国での事を、聞いた。だから、言うのを躊躇っていたが、言わせて欲しい」


 そう言って、月鬼は、星愛の前で、跪いて、指輪の入った小箱を、星愛に差し出します。


「愛している。結婚して欲しい」


「えっ?えぇぇ⁉︎」


「……その、もっと気の利いた言葉を言うべきだろうが、こんな直球で、数少ない言葉で済まない」


「い、いえ、そんな。とても嬉しいです。その、私で宜しければ」


 星愛は、月鬼のプロポーズを受けました。その時です。ふんわりと、淡いピンク色の光が、花畑を包みました。


 それが、愛魔法です。ピンク色の光は、花々を活性化させます。蕾の状態の花は、時期を忘れて咲きました。萎れそうな花は、かつての綺麗な状態へと戻りました。


「……愛魔法。これが、言葉以上の答えだな」


「……はい。恥ずかしいですが」


 愛魔法は、誰かを愛する事で使える魔法。これは、愛魔法の芽生えの際に起こり得る現象。


 星愛は、月鬼にプロポーズされて、初めて、自分の心にある愛を自覚したのでしょう。


「あの、結婚は嬉しいですが、この指輪は、高そうなので」


「気にしなくて良い。この国の王妃となる証だ。先日、ゼロから貰っておいた。ロストの血縁者が、伴侶に渡す特別な指輪。俺が、この国の王となる時に、ゼロに片割れの方を貰って、その際に、これを王の証とすると言われている」


「……あの、それって、ロスト王国の王を押し付けられてません?」


「星愛は賢いな。俺は、それを一年後に気づいて、返そうとしたんだが、返却不可能、この国の王の証とでもしておけと言われてしまった。おかげで、ロストの王の業務を一部押し付けられている」


「うふふ、騙される月鬼様、想像しただけで面白いです」


「様はつけなくて良い。夜は冷える。そろそろ帰ろう」


「はい。月鬼」


 星愛は、月鬼と手を繋いで、二人で一緒に帰りました。


      **********


 それから、星愛は、王妃としての教育を受けつつ、月鬼の仕事の手伝いもするようになりました。


 ここでずっと暮らせる。そう思っていた時、星愛の過去が、その想いを邪魔しました。


 愛魔法の使い手。その情報をどこからか手に入れたのでしょう。あの国の国王が直々に、ここを訪れました。


「姫、家出などやめて、国へ帰ってきたまえ!わしが、どれだけ心配していると思っておるのだ!」


「私は、帰りません。私は、この国の王妃です。もう、姫とは呼ばないでください」


「そんな嘘までついて、わしを心配させたいのかね!大事に育ててきてやったというのに、こんな事をして楽しいかね!」


 国王が、星愛の手首を掴みました。


「その手を離してもらおうか」


「誰だ貴様は!わしは、姫と話しているのが見て分からぬか!」


「彼女は帰りたくないと言っている。それに、彼女は俺の妃だ。気安く触らないでもらいたい」


「姫!あの男は、姫の魔法目当てで言っているだけである!騙されるでない!」


「それはそちらでは?私は、彼を愛したから、この魔法と出会いました。彼は、私が魔法を使える事を関係なく助けてくれました。魔法が使えないからと追い出すような国王ではありません」


 星愛は、国王を見て、そう言いました。星愛の心は、既に決まっています。星愛は、自分の居場所を自分で決めています。


 ですが、国王は引こうとしません。


「姫は、洗脳されておるのだ!この男に騙されている!貴様、早く洗脳を解くのだ!」


「……話を聞く気がなさそうだな。なら、こっちも、対話ではなく、ロストらしいやり方でいくとしよう」


 月鬼がそう言うと、国王が、星愛から手を離して、膝を付きました。


「……がっ……なに、を……した」


 国王が、苦しそうに、途切れ度切れにそう言います。


「生命が欲しくば、今すぐにお引き取り願おう」


「貴様、こんな事をして、タダで済むと思うでない!この国を我が国の誇る、魔法師軍団に侵略させるから、覚悟しておくのだな!」


 国王が、そう言い残して、走って、立ち去りました。


「申し訳ありません」


「気にするな。手首、あざになっている。後で、ヴィマに手当てしてもらえ」


「はい。ありがとうございます」


 星愛は、そう言って、頭を下げました。


「ここへいてくれると言ってくれて、感謝している。だから、本当に気にしなくて良い」


「ですが、このままでは」


「そこは、可愛い生き物にお任せなの」


「エレ、どうしてここに。今日は来る日ではないだろう」


 エンジェリア達は、約束もなく、突然来る事が多々あります。今回も、それです。


 エンジェリアは、にっこりと笑いました。


「二人は、愛を深めていれば良いでちゅ。エレ達が、あっちの事はどうにかちゅるから」


「私のせいなのに、皆様にご迷惑なんて」


「良いの。エレ達もちょっとお怒りなの。魔族の国を、また汚されたくなんてないの。誰であったとしても。だから、エレ達に任せて良いよ。魔族の、かつての、ロシャ王国の跡地を、あんな理由で、汚させないの」


 エンジェリアは、笑顔で隠していますが、声音が、いつもと違います。かなり、怒りを覚えているのでしょう。

 

「ロシャ王国?月鬼、知ってますか?」


「……かつて、三大種族の一つ、魔族の王が築いた王国。天族の侵略に、王が一人で赴き、王一人の犠牲だけで、国を守った。三大種族の王の象徴である宝剣が、再び使われる日までずっと、停戦を結んだ」


「ふみゅ。天族の裏切りの姫と魔族の人達を守るために、王は自分の命を差し出した。転生できるとかかんけぃないの。だからね、おねぇ……王妃様、王妃様は、この国で、繰り返しちゃだめだよ。エレが、絶対に許さないから。王様も」


「……」


「ふみゃ、エレは、止めに行くから、また今度ね。二人が、後悔ない未来を歩める事を、エレはいつまでも願ってる。天族の元王として、魔族にしてきた事に対する、償いとして。魔族のみんなが、エレにくれたものの、恩返しとして」


「それが、俺達にここまで力を貸していた理由か?」


「うん。エレが、この国だけはってわがまま言ったの。王がいなくなった後も、ずっとエレを守ろうとしてくれていた、優しい人達のいる場所だから。それは、いつまでも変わらなかったから」


 エンジェリアが、泣きそうな顔で、笑顔を作りました。そして、あの国へ向かいました。


「……」


「そういう事か。あの本は、エレが書いたんだな」


「あの本?」


「氷の少女と温もりの王。信じてきたものに裏切られて、心を閉ざした少女と王が出会って、王が少女の心を開く話だ。あれは、二人の事だったんだろう」


「……なんだか、私達も似ている気がします。二人の想い、ずっとこの国で受け継がれると良いです」


「そうだな」


「あれ?まさか行き違い?」


「あいつ、迷子になるから一人で行くなって釘刺したのに」


 エンジェリアを探して、ゼーシェリオンとフォルが来ました。


「さっき出て行った」


「ありがと。それと、あの話は、エレが未来を視たのを忘れないように書いただけだよ。お幸せにー」


「新婚旅行には、是非ロストへ。体温調整できる魔法具を格安で売りますんでー」


 ゼーシェリオンとフォルが、そう言って、エンジェリアを探しに行きました。


「新婚旅行ですか……手首、治ってます」


「あの三人の誰かだな。新婚旅行の前に結婚式だ」


「はい。楽しみです」


 これは、御巫の素質を持ちながら、王と王妃として生きる二人の出会いの物語。


 王と王妃は、結婚式に向けて、ドレスを選びに向かいました。

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