43 魔術師からの手紙
レイナージュ姫
先日はお会いする機会があったというのに満足な話もできずに貴女様は欲求不満を抱えられておられることでしょう。分かります。私は偉大なる魔術師ですから。
ということで、早速我々がもう一度相見える機会をご用意したいと思っています。
三日後の新月の夜にお迎えにあがります。我が館にて存分に語り合いましょう。
貴女の偉大なる魔術師ルカより
レイナージュは届けられた手紙を読んでみてから首を傾げる。
昨日は歩き疲れたせいなのか、街から戻って入浴後すぐに寝てしまった。晩餐を一緒に、と言っていたケイラムに悪いことをしたと思いながら起床時にはもう執務に行っていたケイラムに謝ることができずにいる。そんな時に届いた手紙だ。
まず、ルカなる魔術師が先日マーガレットを怒らせた人物と同一であることは確かだ。そして彼女の保護者であったベイカへと手紙を宛てた人物でもあると思える。ただ、見た目が若いのが解せない。魔術師は不老なのか。ベイカはわざと老女に擬態していたのだろうか。
レイナージュが手紙を持って不審そうにもう一度内容を目で追っていることを放っておかない人物が一人。
「レイナ、それはどうした?」
彼女宛ての書簡はすべて彼がチェックして渡している。それをすり抜けた怪しい手紙を放っておくなど笑止千万。
彼女に朝の挨拶を、と部屋に入った途端に見つけた不穏な気配にケイラムの青銀の瞳が妖しく輝く。
「ケイ。今朝窓辺に小鳥がいたので窓を開けてみたの。そうしたら小鳥が手紙になって驚いたのだけど」
読んでみたら魔術師からの手紙だった。
「この書き方だと魔術師は君に面識があるようだな」
青銀色の瞳が不快そうに細められる。
「私は町でも会ったことはないわ。ただベイカお婆ちゃんへきていた手紙を送った人だと思うの」
「ふむ。同じ魔術師同士面識があるということか。いや、あいつは異国の出身だ。もしかするとベイカ殿と同郷、つまり君の王国の魔術師だったのかもしれないな」
確かめよう、と彼は影を呼んで指示を出した。
それから彼は安心させるようにレイナージュの肩を抱いた。
「会って話をしたい?」
彼の問いに彼女は戸惑いつつも頷く。
「真実を私は知りたいの。ベイカおばあちゃんのことも、私の両親のことも。だから行かせてくれる?」
「もちろん、君の願いはすべて叶える。ただ、今回は危険だから俺も付いて行くよ。君一人で来いとは書いていないからね」
その言葉に本当は不安だったレイナージュの顔がぱっと明るくなる。
「ありがとう、ケイ。あなたが一緒なら私はどこにいても頑張れるわ」
「君の為なら俺はなんだってできるんだよ、レイナ」
彼女の額にキスをして、彼は優しく微笑んだ。




