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宇宙への旅

作者: 炭酸おん

 何度か深呼吸を繰り返し、僕は高まる気持ちを静めた。だが、それでも胸の高鳴りは抑えられないものだった。それもそうだろう。長年の夢だった宇宙飛行士に、今日ついになれるのだから。

 今回、宇宙に旅立つのは僕を含めて五人だ。ともに訓練した仲間たちはもっとたくさんいるが、それでも実際に宇宙に行けるのはほんの一握りだ。それに選ばれることのできた僕は幸せ者なのだろう。


「いいかお前ら。我々はこれから宇宙へと出発する。今回の調査は我々の星の未来を大きく左右するものになるだろう。必ず生還するぞ!」


 リーダーが言った。それに呼応して、僕たち四人も「はい!」と返事をする。

 程なくして、宇宙船が飛び立った。今回の調査はかなり大規模なもので、以前から観測されていたUFOという物を参考に作られた特殊な宇宙船を用いている。

 窓の外を見ると、沢山の人たちが僕たちに腕を振っている。それを見ていると、何だか誇らしげな気分になった。


 その後宇宙船は大気圏を超え、ついに宇宙に到達した。

 そこには、写真で見たものとは全くスケールの異なる、広大な黒い世界が広がっていた。あちらこちらに小さな星が浮かんでおり、特に惑星は際立った存在感を放っていた。この世のものとは思えない、壮絶な絶景だった。

 これまでの厳しい訓練時代の記憶が蘇って来た。地獄のような日々だったが、その努力は今、こうして報われたのだ。そう思うと、どうしても涙をこらえることはできなかった。


 宇宙での生活というのは慣れないもので、普段できていた様々なことが不自由に思えた。ちょうど今も、食べていた宇宙食を手放してしまい、明後日の方向へと飛んで行ってしまった。


「よいしょっと」


 少し腕を伸ばして、宇宙食を掴む。そしてまた腕の中を離れぬうちに、一気にほおばった。

 トイレも就寝も、宇宙という環境下ではとても慣れず、日常動作一つ一つにとても苦労した。目的の星までは遠いらしく、あと一月はかかるらしい。それまでに慣れるといいな。だが、やはり窓の外に広がる宇宙は、そんな煩悩さえも忘れてしまうほど美しかった。


     


 故郷の星を旅立ってから一月が経った頃、ついに目標の星が見えてきた。

 特に目を引くのは、煌々と輝く赤い天体だ。周囲の星とは比べ物にならないほど巨大で、表面は炎が揺らめいているように見える。リーダーによると、あの星は太陽と言うらしい。その他にも、大きな輪がある土星、美しい色をした海王星など、この銀河系は本当に美しい星が多い。

 そしてついに、目標の星が見えてきた。

 その星は、僕たちの故郷に似た青い星だった。所々に細やかな光が輝いており、生命の存在、しかも高度な文明を持っていることが伺える。今回、僕たちはこの美しい星の資源を調査しに来たのだ。


「そういえばリーダー、この星は何て言うんでしたっけ?」

「ああ、ここは『地球』という星だ」


     


 その日、地球に未知なる生命が降り立った。

 その生命体は人間と近い形をしていたが、腕にあたる部分が触手になっており、手のような部位が見られなかった。

 UFOから降り立った未確認生命体五体は、諸国との交流を求めた。どうやら、かなり社交的な宇宙人たちのようだ。

 人類は皆感じただろう。はるか彼方からこの星にたどり着けるほどの技術を持った者たちが、やってきてしまった。地球の命運は、この者たちに握られたと。


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