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ホスト王子 悪役令嬢溺愛中のため ヒロイン達と戦います  作者: 白まゆら


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バタバタと騒がしい

 あれから一週間が過ぎ、ようやく起き上がれた私は、お城の一室でエリーゼ達に囲まれていた。

「ユリア、この馬鹿。待っててッて言ったでしょう。どうしてハリオス様以外の人にノコノコついて行ったの? お菓子をくれてもついて行っちゃ駄目ってあんなにいつも言っていたのに」

「ごめんなさい、ユリア。私が貴方を一人にしたばかりに。ユリアが超の付くほどのお人よしだって事すっかり忘れていたの。私のミスだわ」

「ユリア様はお優し過ぎです。人が倒れる姿を見て手を差し伸べようとなさるなんて。そんなところは本当に素敵ですけれど、今回は駄目です。いえ、これからは絶対に駄目ですからね。気になるような事があれば私に言って下さい」

「怪我の具合はどうですか? 何か入用な物は? 欲しい物はございませんか? なんでもご用意いたします」

 かなり心配かけたようで、本当に申し訳ない。申し訳ないのだが、エリーゼとバーバラの私の評価が酷過ぎるような……私は小さい子供なの?

 マリアーヌ様とキャノン様はとっても心配そうに、両手を組んでいる。うん、年下って可愛いな。

「はいはい、心配なのは分かるけど落ち着いて。お茶でも飲もう。ユリアも喉が渇いているよね」

 ワイワイと続く四人からの心配の声に、ハリーが助け舟を出してくれた。

 うん、落ち着くって大事な事だね。

「ユリアーズ様も元気になられて本当に良かった。ところで、ハリー。四人はその後どうなんだ? ミレーヌ・フォインとカノン・グーラスが自供したって聞いたけど」

 ティモン様がエリーゼの手を取り、ソファに座らせてから落ち着いた声で聞いてきた。

 そういえば私も治療が最優先という事で、今まで何も聞かされていなかった。四人はどうなったの?

 バーバラもダリアス様の横に座り、マリアーヌ様がキャノン様の手を引いて、ドット様の横に座る。

 ハリーはというと、当然のように私の隣に座り優雅に長い足を組んでいる。

「主犯はクラリス・レイ。実行犯はクラリスと共にミレーヌ・フォインとカノン・グーラス。危害を加えたのはイルミス・アロウェンとなるが、主犯のクラリスが黙秘を続けているため、詳しい事はさっぱりだ。ミレーヌとカノンも話に乗っただけみたいだからな。あのボロ邸もユリアを攫うため乗り換えた馬車もみな、クラリスが手配した物だった」

 私はあの拘束された場所を思い出す。その時の光景が脳裏をかすめ、思わず体が震えた。四人の蔑んだ瞳と嘲笑。小刻みに震える自分の体を抱きしめようと手を動かすと、横からハリーにその手を奪われた。

 ギュッと握られる手のぬくもりに、自然と震えは落ち着く。

「イルミスを領地から連れて来たのもクラリスらしい。この辺はイルミスもまた黙秘を続けているから分からない……なんだがもう、面倒くさいから拷問でもして自供させようかとも思うのだが……」

「!」

 ハリーはそんな内情を説明してくれるが、何も分からない事にどんどん声は低くなり、ついには本音を漏らす。

 ハリーならやりかねない!

 私は慌てて「ハリー、落ち着いて。ねっ、ねっ」と止めに入るが「いいですわね。私は賛成ですわ、ハリオス様」とエリーゼが黒い笑顔で言う。

 驚いてエリーゼの方を見ると、ティモン様が右手で顔を覆っていた。

「ハリオスもエリーゼ嬢も気持ちは分かるが、拷問はまずい。何か他の方法を考えよう」

「そうですわね。拷問がまずいなら……自白剤?」

 コテンと首を傾げるバーバラ。可愛いけどね、可愛いけど……そのセリフは可愛くない。ああ、ダリアス様が遠い目をした。

「私がご用意いたします。ミーニャ様に言えば自白剤の一つや二つ、嫁ぎ先の商会から手に入れてくださいますわ。あの後落ち込んでしまったミーニャ様を励ましていたら、すっかり懐かれてしまいましたの。今なら彼女はなんでも聞いてくれます」

「まあ、なんて頼もしい」

 キャノン様がここは私の出番だと、はいはいと右手を上げて恐ろしい事を宣った。その言葉にマリアーヌ様が両手を頬に添え、うっとりする。

 そんなマリアーヌ様にドット様が「マリアーヌは手にしたら駄目だよ」と優しくその手を握る。

 ……え~っと、ツッコミ所満載なんだけれど、とりあえずキャノン様がミーニャ様と繋がってる事に吃驚だよ。

「……まあ、冗談はこのくらいにして、ダリアスの言う通り対策を考えよう」

 ハリーがフウっと溜息を吐いて顔を上げると、エリーゼが吃驚した顔でハリーを見つめる。

「まあ、冗談でしたの?」

「……王子の俺が本当にやったら不味いでしょ」

「それくらい、ハリオス様なら隠せますでしょうに」

「……エリーゼ嬢、少し黙ろうか」

 ハリーの言葉にティモン様がエリーゼの口を両手で塞ぐ。いや、それも比喩だから。本当に口を塞いでどうするの?

 そんな事を言いあっていると、突然扉がバタンと開いた。

「大変だ、ハリー。ソラが、ソラとクラリス・レイが倒れた!」



 血相を変えて飛び込んで来たマーロンの話によると、どうやら先日俺との話により一旦は引いたソラだったが、やはりクラリスが気になるのか直接クラリスに会いたいとマーロンに強請ったらしい。

 俺が褒美をやるなんて言ったから、それを褒美にしてくれてもいいだろうと言ったとか。まあ、特別問題を感じなかったマーロンは、言葉を交わさないならとクラリスが閉じ込められている部屋に連れて行ったらしい。

 何を勝手な事をしているんだと睨んでやると、マーロンは素直に謝った。まさかこんな事になるなんてと。

 クラリスの部屋に入った途端、ソラの様子が変わった。

 小刻みに体が震えたかと思うと真っ青な顔をして「……レイちゃん」と一言。そのままフラリと意識を失った。

 驚いてソラを抱えたマーロンが部屋を出て行こうとすると、クラリスが「ソラちゃん」と言って同じくその場に倒れたそうだ。クラリスの方は椅子に座ったままだったので、机に突っ伏したかのような態勢になったそうだが。

 何か起こるか分からない。クラリスの方は厳重に監視を付けながら、そのまま部屋で寝かせてあるらしい。

 ソラはマーロンが私室の寝台に連れて行って寝かせたようだが、医師を呼んでもいいかと俺に確認しにきたようだ。だからといって客人が来ている部屋に飛び込んでくるのはどうかと言うと、それは本当に悪かった。とそれも素直に謝った。ソラがあんな風にぶっ倒れたのは初めての事だったので、動揺したとの事。マーロンの後ろを見ると自分達を蹴散らし突破した男をジト目で睨みつける護衛達がいた。

 仕方がない。ティモン達には幾重にも詫びを入れて、その場はお開きとなった。

 俺は医師の手配をしながら自分も同行するため、マーロンと共にソラの元へと急いだ。何故かユリアを抱えて。

 話を聞いたユリアが、どうしても自分も行くと言ってきかなかったからだ。

 ソラの事はなんとなくだけ、話してある。今回助力してくれた事も。指輪を渡した時に話しておいたのだ。それが仇となった。自分は色々と世話になっているのに、一度も挨拶せずに放っておくなんて事できないと、そのまま走って行こうとするのを捕まえた。

 勝手に走って倒れられるよりは、自分が抱いて連れて行った方が何倍もマシだ。いつものお姫様抱っこに途中、何人かの貴族や使用人に二度見されたが、かまうものか。

 部屋に着くと俺達は、寝台で横たわるソラの顔を見る。マーロンが言っていたように、真っ白な顔はまるで死人のようだ。息は……弱々しい。

 これは医師を待つしかないか。そう結論付けた時、ユリアが嵌めている指輪が青く光った。それはソラがユリアのために作ってくれた指輪だった。

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