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ホスト王子 悪役令嬢溺愛中のため ヒロイン達と戦います  作者: 白まゆら


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理性って必要ですか?

 指輪が放つ光の場所は、外から見ると他の建物と全く変わらないボロだった。いつ倒れてもおかしくない。けれど明らかに何かが違う。

 窓は厚いカーテンに隠れていて、中が見えないようになっている。が、そのカーテンが綺麗過ぎる。破れてもなく汚れてもいない。こんなボロ屋には余りにも似つかわしくない

 そして出入りする男達。外から確認しただけでも、四人のゴロツキが周りを警戒しながらうろついている。

 こんな場所にこんな時間だ。

 余りにも怪しい場所ではあるが、ヒロイン達貴族の令嬢がこのような場所を用意できたとは思えない。裏の人間が闇取引にでも使っていると思う方が理解できる。

 ここは貧民街の中心地にあり一般の者は絶対に入り込まない、国も確認できていない入り組んだ場所だ。

 俺は貧民街に入る前に乗ってきた馬を城へと戻らせた。城の馬にはどんな場所に居ても、一頭で城に戻れるように躾けている。城に戻ったら労ってもらう様に馬番に頼まなくてはいけない。ここまでかなり無理をさせて走らせてしまったからな。

 馬を見送ってすぐに指輪から赤い光が放たれた。ソラが見ているのか?

 とにかく俺は光が指す方向へと進んで行く。日が沈んで周りはすっかり暗くなってしまった。指輪の光がいい明りになってくれる。けれど周りの者に気付かれないように、極力上着の中に隠し持つ。どこまでヒロイン達が計画しているのか分からないが、仲間が全くいないとは限らない。どこかで見張っている者もいるかもしれない。そう思い周りを警戒しながらも、慎重に前へと進む。

 そうして辿り着いた場所がここ。先程も言ったように貴族の令嬢が用意したには、裏の匂いが強すぎる。

 だが、ソラの指輪はこの崩壊寸前の建物の上階を指し示す。ここにユリアがいると。

 ヒロイン達の中で最も怪しい人物の顔が脳裏をよぎる。クラリス・レイ。ずっと感じていた。彼女には他のヒロイン達とは違う何かがあると。不吉に思いながらも、それが何か分からないまま日々は過ぎた。

 いや、考えてる場合じゃない。もしもここにユリアが居なければ次に進むだけだ。なんとしてでも彼女は俺が救い出す。

 俺は構わず、そのまま建物へと突っ走った。

 こちらを向いたゴロツキにまずは一発、顔面に飛びケリをくらわす。ドウッと倒れる大柄な男。入り口を塞いでいた邪魔な異物は、先に取り除いておかないとな。

 次にその衝撃に気付いた隣の男の鳩尾に、肘鉄をくらわす。

 走ってきた二人が剣を振り回し何か喚いていたが、どうでもいい。そのまま回し蹴りで二人同時に沈めた。起きてこられると面倒だからな。

 そうして建物へ入ると奥の階段付近まで一・二・三……六人のゴロツキが一斉にこちらを向いた。

 一気に沈めるしかない。俺はそのまま突っ走っていった。



 数秒後、倒れるゴロツキを踏みつけて、俺は二階へと続く階段を走る。

 中はやっぱり外とは違って綺麗なものだ。金持ちが悪事を働くためにわざと利用している建物だと分かる。その中で一番重厚で綺麗な扉が目に付いた。

 すると指輪の光がその扉を指す。ここにユリアがいるという事だ。

 怒りのまま高額そうな扉を蹴りつける。ドコッという音と共に、扉は正面へと吹っ飛んだ。

 埃がたつその部屋へゆっくりと踏み込むと、信じられない光景を目にする。


 俺のユリアに何しやがる!!!


 そのまま怒りが頂点に達し、気が付けば俺は周りの不純物を取り除き、ユリアを抱きしめていた。

 ユリアは力が入らないのかぐったりしながらも、どうにか俺を抱き返そうと腕を曲げている。健気なその様子に胸が締め付けられそうになる。本当にどうしてこいつは、いつもどんな時でも、人の事ばかり気にするのか……。

 ユリアに了承を取りそっと抱き上げる。気を失った彼女を改めて見ると、本当に痛々しい。

 暫くするとティモン達がやって来た。下で女二人を捕まえたとの事。そこに転がっている二人も捕まえておいてくれと頼み、ユリアを心配するティモンとダリアスに後を任せて、俺は先に馬車でユリアを連れて行く。

 途中、自分の部下に指示を出しているマーロンに出会う。目配せだけしてティモン達と同じように後を任せる。やり過ぎだという様に呆れた顔をしていたが、そんな事はどうでもいい。

 ユリアの赤くなった頬を撫で、俺は城へと急いだのだった。



 あちこちが痛い。

「ん~」と呻くと、冷たい手がそっと頭を撫でる。

 目が覚めるとそこには美貌の王子、ハリーが心配顔で覗き込んでいた。

「何か飲むか?」

 コクリと頷くと水差しの水を注ぎ、ゆっくりと背中に手を当て起き上がらせてくれる。そのままコテリとハリーの方に倒れ込む。

 お腹が痛い。ああ、そうか。私お腹を殴られたんだった。

 ハリーは黙って肩を抱きしめてくれる。

「水、頂戴」

 私が掠れる声で頼むと、ゆっくりとグラスを傾け口元に注ぎ込む。コクリ、コクリと喉が潤されて、やっとどうにか落ち着いた。

「寝ている間に医師に診てもらったよ。全身痣だらけだけど、骨や内臓に異常はないから安心して」

 そう言ってよしよしと頭を撫でるハリー。

「お話、する?」

「落ち着いてからでいいよ。まずはゆっくり体を休めて」

 そんな会話をしていると扉をノックする音がした。ハリーが入室を許可すると、侍女がゆっくりと頭を下げる。

「何?」

「何度も申し訳ありません。マリノチェ侯爵が一目ユリアーズ様にお会いしたいと、夫人を伴ってお待ちです」

「お父様?」

 侍女の言葉に吃驚する私。そういえば、ここは私の部屋じゃない。

「ああ、そうだったね。うん、じゃあこちらに呼んでくれるかい? たった今目を覚ましたから」

「かしこまりました」

 そう言って侍女が下がった後、私はハリーにたずねる。

「家、じゃ、なかったの? ここは、お城?」

「ユリアが攫われたと知った時、城に医師を待機させていたからね。こちらに運んですぐに診てもらった方が早かったし、何より後々の処理がこちらに報告に来る。俺はユリアから離れられないし、全てを管理するにはこちらの方が都合が良かったんだ」

「離れて、くれても、大丈夫、だった、よ」

「あんな状態のユリアを放っておいて、俺がそんな事できると思うか?」

「でき、ないね。ハリー、優しい、し」

「優しいのはユリアにだけだよ」

 そう言って顔を近付けてくるハリー。

 あ、キスされる。そう思って瞼を閉じる……バタンッ!

 扉がノックもなく開け放たれた。

「ユリア~、目が覚めたと聞いたぞ。大丈夫か~?」

「ユリア、無事ね。無事なのね」

 けたたましく走り寄って来たのは、私の両親。心臓がバクバクいう私と違って、ハリーはというとにこやかに席を譲っている。因みに私が倒れないように、いつの間にか背中には大量のクッションが置いてあった。くっそぅ~、なんでそんなに余裕なのよ。

「心配、かけて、ごめん、ね」

 慌てながらも掠れる声で謝る私に、お母様は涙を流す。お父様は部屋に入った時点で泣いている。

「貴方が謝る必要なんてありません。それよりも痛い? 苦しい? 薬はちゃんと飲んだ?」

「何か入用な物はないか? 本当は屋敷に連れて帰りたいのだが、医師が今は動かすなと言うから仕方がない。けれど慣れない場所では不安だろう。なんならケイトをこちらに呼ぶか? 彼女がいれば少しは安心するだろう?」

 彼女もものすごく心配して、今も一緒に来ようとしていたしな。と言う二人。

 うん、気持ちは嬉しいよ。すっごくね。私がフフっと笑う(笑った振動でお腹に激痛が走ったけれど、なんとか堪える)と、その顔を見て両親もやっと落ち着いてくれた。痛みに耐えた甲斐あったね。

「私、どれくらい、寝てた、の?」

「二日間だ。その間熱が出ていて、本当に苦しそうだったぞ。今はもう熱はないな。良かった」

 そう言ってお父様が私の額に手を置く。そのまま頭を撫でてニッコリと笑った。

 あ、なんかこういうの、幼い時以来かもしれない。最近頭を撫でるのはハリーだけだもんね。へへっとお父様と二人で笑い合っていると、お母様が突然微笑みながら、変な事を言った。

「殿下には感謝しないとね。ずっと貴方についてくれていたのよ」

「え?」

 私は両親の後ろにいるハリーを見る。忙しい王子様が何をしているのよ。

 照れ隠しも相まって、ムーっという顔をした私に「着替えや体は拭いてないからね。流石に後で怒られると思って、それは侍女に任せた」と言ってきた。

「当り前です」と怒鳴ったのは、お父様。

 それでもなんだかんだとハリーを認めているお父様は「いいですか、殿下。今はまだ婚約者ですからね。慎みをもってください」と念だけを押した。

 余り長くいては疲れるだろうと、早々にお母様にお尻を叩かれて帰って行ったお父様は、とっても恨みがましい目でハリーを見ていた。うん、お父様。物分かりのいい父親を演じようとしたけれど、無理だったみたいだね。最後に本性、ちょっと現れちゃった。

 二人になった私は、ハリーに無理矢理スープを飲まされた。ゆっくりと少しだけ。そしてしっかり薬も飲まされた。そういえば寝ている間、薬はどうしていたのだろう? と声にだして首を傾げると、ハリーがニヤリと笑った。

 まって、その顔……まさか、口移しじゃないよね?

 私がフルフルと震えていると、無理矢理寝台に横たえられて眠るよう命じられた。

 やってる事は母親みたいに甲斐甲斐しいのに、ところどころ男が垣間見えるのはなんでだろう? ああ、ハリーだからか。

 そうして私は目を瞑る。次に目が覚めても目にするのは、この綺麗なご尊顔なのだと思うと安心して眠れそうだ。

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