逃亡
夫と私、K、Y子、当時のクラスメイトの女の子2人が同席していたけれど、完全に私だけが蚊帳の外だった。
KはY子に夫の隣に座るよう言い、「これでも仕事中だから」とちょっと座っただけでYちゃんが仕事に戻ってしまってからは完全に私を無視した。
名前も知らない女の子が気を遣って話しかけてくれたけれど、すでに大きなダメージを負った上にコミュ障な私はうまく会話も続かず、居心地の悪さをどうしようもなかった。
Kが「そういえばよ、コイツ(夫)こないだ俺と会った時にタバコ吸ってよ、3本」
とニヤニヤしながら話しかけてきた。
夫の慌てて止めた顔を見て、本当のことなんだとわかってしまった。
オーバーキルもいいところだった。
タバコのにおいが大の苦手で肺炎も怖かった私はタバコが大嫌いで、正式にお付き合いする時に「タバコを吸う人とはお付き合いできない、今吸っているならやめて欲しい」と私には珍しく要望をハッキリと伝えており、夫も「絶対に吸わない、Nちゃん(私)が大事だから」としっかり約束をしてくれていたのだった。
衝動的に店を飛び出し、近くの用水路が流れる冷たいトンネルの中にうずくまった。
私にとって、明確で確実な裏切りだった。