07 勝負
ストッパー役のセシエリアさんがいなくなって暴走しかけたヴァニシアさん。
彼女を止めてくれたのは、クリスでした。
「ライクァおじさまとの手合わせの前に、ぜひ私と」
「望むところっ」
クリスとヴァニシアさんの本気の手合わせは、それはもうスゴいものでした。
剛腕で大剣を存分に振るうヴァニシアさん、
劣らぬ剛腕で長槍を自在に操るクリス。
凄まじいまでの気合いと打ち合い。
お庭の空気がびりびりと震えました。
思わずハルシャちゃんのお目目をふさいじゃいましたよ。
隣にいたモノカさんも、マクラちゃんのお目目をふさいでおりました。
勝負は、まさに五分と五分。
明確な決着はつかないまま、夕飯のお知らせでお開きに。
「ライクァ殿はクリス殿よりも」
「一度も勝ててはおりません」
ヴァニシアさん、天を仰いで嘆息。
「鍛錬の道に終わりは無し、か」
「ライクァおじさまとの勝負は」
「クリス殿と雌雄を決するまでは、浮気は失礼というものだろうな」
夕陽を背に、がっしと握手するふたり。
バトル乙女ふたりの熱き誓い、ですね。
「つまり、私もカミス殿と婚姻を結んで共に暮らせば、いつでもクリス殿と手合わせ出来る、と」
「いかにヴァニシアさんでも、カミスとの結婚を軽々しく考えてもらっては困ります」
ありがとう、クリス。
「確かに、手合わせのダシに結婚などとは、カミス殿には失礼千万。 まずはしっかりと、契りを結ばねばな」
「いけません、ヴァニシアさん。 まずは心を落とすのが先と、リリシアさんから伺っております」
ありがとう、リリシアさん、って、僕のためのアドバイスになっていないのですが。
「女であるということは、やはり難しいものなのだな」
ため息をつく、ヴァニシアさん。
クリスがヴァニシアさんの一部を、じっと見つめております。
「まずは、夕飯前に汗を落とそうか」
困り顔のクリスが引っ張られていきました。
隣にいたモノカさん、とても哀しそうなお顔、ですね。
「勝負は時の運、などでは、絶対に無い」
大丈夫ですよ、愛らしさでの勝負なら、この家でもトップクラスですって。