02 ふたり
いましたよ、屋台のオヤジさんこと藪雨銘寺さん。
モノカさんよりもずいぶん前に召喚されたメイジさんは、いろいろあって、今はご夫婦で屋台を営んでおります。
うどんオンリー屋台なのですが、こちらの世界の皆さんのお口に合ったようで、結構な繁盛っぷりとのこと。
「いらっしゃい」
こんにちは、メイジさん、セルマさん。
「今日はカップルでのご来店、ありがとうございます」
カップルって。
「いえね、もう街中の噂なんですよ。 若旦那がついに『可憐なる闘神』のハートを射止めたって」
なんか大変なことになっていますよ、モノカさん。
「……」
ありゃま、モノカさんがうつむいてぷるぷるしちゃってますよ。
こりゃいかん、こんな時に頼りになるのは、多分この中で一番大人なマクラちゃん。
「モノカお母さん、カミスお兄さんと結婚するの?」
こりゃいかん、普段は料理上手なマクラちゃんが火に油を注いじゃったよ。
「困りますよ、メイジさん。 モノカさんの気持ちも考えないで噂を広められちゃ」
そう、こういうことはハッキリさせておかないと、万がイチこのまま流されちゃったらエラいことに。
「お似合いだと思うんですけどねぇ、って、イタッ」
セルマさんがおたまでメイジさんの頭をぽかりと。
「御免なさいね、おふたりとも。 うちの人、こういうところは気が利かなくて……」
ありがとうございます、セルマさん。
無責任な噂をどうこうするなんて子どもたちの教育上もよろしくないので、旦那さんの教育の方、よろしくお願いしますね。
「そうなんですけど、私もお似合いだと思いますよ、おふたりは」
こりゃいかん、なぜかセルマさんまで乙女モードに。
気が付けば、三人娘がうどんをちゅるちゅるしながら、こちらを真剣なまなざしで見つめておりますよ。
いかんぞ、僕。
ハルシャちゃんに叱られない程度に急いで食べて、この場を退散せねば。
つるつるつるる、ごくん
「ごちそうさまでした」
なんとか速攻完食、さて、辺りを見回してみれば。
つるり、つるり
こりゃいかん、乙女モードのモノカさんがおしとやかにお食事あそばしておられますよ。
ここで急かすのは、男としては駄目ムーブ。
しかも屋台の周りには、いつの間にやら大勢のギャラリーが。
いかにモノカさんが有名人とはいえ、あの不躾な好奇の視線はそらさねば。
今の僕に出来ることは……
みんなの気を引くために今の僕が出来ること、
歌も踊りも武器での演舞も出来ないけれど、
子供の頃に夏休みのスタンプコンプを目指して頑張ったおかげで身体に染み付いている唯一の踊り!
「ラヂオ体操第イチッ」
孤独な闘いでした。
度胸なんて逆さに振っても出てこないはずの僕が、人前でこんなことが出来ちゃうとは。
あのメロディを口ずさみながら、最後までやりきりましたとも。
「……」
踊り終わって息を整えていたら、なぜか周りの皆さんから大きな拍手が。
妙な達成感をありがとう、皆さん。
「それでは、失礼しまーす」
みんなと、退散。
「まいどどーも」
メイジさんへのきっついおしおき、お願いしますね、セルマさん。