14『信心』
モノカさんから、決闘のことを聞きました。
すさまじい打ち合いの末、僕の棍が王子様の剣をへし折ったのが決着、だそうです。
そしてすぐに、僕が倒れたのだとか。
あれ、そうするともしかして、ここに運んでくれたのは。
「私が、運びました」
モノカさんにお姫様抱っこで運ばれちゃったみたいですよ。
あーもう、情けないったらないよ。
「あの凄まじい打ち合いの姿。 あれを見たなら、カミスさんの事を情けないという者はいないでしょう」
でもそれって、モノカさんの力なんですからね。
「いけませんよ、モノカ。 私たち家族は、名前は呼び捨てで、ですよ」
なんで嬉しそうなんだい、エルミナ。
「……カミス」
「……モノカ」
「これにて一件落着、かな」
全然落着してないよ、シスカ。
「私は、モノカお姉さまとお呼びしますからね」
なんで嬉しそうなんだい、クリス。
「これなら大丈夫かな、カミスパパ」
ワゴンテーブルを持ってきてくれたハルシャちゃん。
お茶をありがとう、実は喉がカラカラで。
お茶を飲もうと起きようとしたら、筋肉痛、超痛ってぇ!
「その筋肉痛の辛さは、とてもよく分かります」
モノカから、抱き起こされちゃいました。
何をされても抵抗不能、なのです。
「どうぞ、旦那様」
エルミナから、カップを口に当てられて飲まされちゃっても抵抗不能、なのです。
「お湯が冷める前に、やってしまおうか」
何をやるのかな、シスカ。
「タオルもいっぱい持ってきたよっ」
タオルって、なにするのかな、ハルシャちゃん。
「それでは早速、身体を拭きましょうか」
いかーん!
それだけは勘弁してくださいっ、
どんなに筋肉痛でも、ひとりでやってみせますからっ。
「始めよう、か」
って、ライクァさん!
来てくれたんですねっ。
「終わったら、すぐに呼んでくださいね」
女性陣が退室してくれましたよ。
「モノカ殿から伺いました、ぞ。 守るための武の真髄、見事でした、と」
ありがとうございます、ライクァさん。
でもあれって『信心』の力なんですよ。
「お互いの心が、深く結びついたからこその『信心』なのであろう、な」
そうですよね。
これ以上あれこれ言うと、モノカの覚悟を穢しちゃうことになりますよね。
「立派な心遣い、だ」
本当にありがとうございました。
でも、ライクァさんにこんなことまでしてもらって。
「クリスティアの婿殿の窮地でもある。 これは私が望んだ事、だ」
この御恩は、これからクリスのために成すことで。
「それに、早く元気になってもらわねば、城での入浴がつまらん、のだ」
そういえば、棍の修練を始めてから、デッキブラシの扱いも上達したんですよ。
「これから楽しみ、だな」
任せてください、みんなとの暮らしもお風呂掃除も、ピッカピカにしちゃいますから。
「勇者覚醒、だな」
男同士、何か通じ合っちゃった、だと良いな。




