13 世界の理
目が覚めると、見知った天井。
ここはモノカさんの家の、客間ですね。
えーと、そうだっ、決闘!
身体を起こそうとしたら、
「うひゃぅ」
何これ、めっちゃ筋肉痛!
「大丈夫ですか」
全然大丈夫じゃないですよぅ、って、アヤさん!
「無理なさったみたいで、心配しました」
ありがとうございます、って、けんちゃん!
おふたりから、説明していただけました。
どうやら、決闘、勝っちゃったみたいです。
全然覚えていないんで、すごくもやもやするんですけど。
「決闘の詳しいことについては、後ほどモノカさんから聞いてくださいね」
勝っちゃったんですか、僕。
「運命の奇跡、みたいな、本来はあり得ない出来事が起きたみたいです」
運命?
「カミスさんとモノカさんの固有スキルが、同じ『信心』だったことが、運命、ですね」
奇跡は?
「カミスさんとモノカさんが『絆結びの指輪』で結ばれていたことが、奇跡、です」
どういうことでしょう。
固有スキル『信心』は、お互いに信頼し合ってる仲間の固有スキルが使えるようになるもの。
いままでこの世界にいた『信心』持ちは、僕とモノカさんだけ。
過去に例が無かった『信心』スキル同士の『信心』で、なんといいますか、世界が混乱しちゃったのだとか。
「そして『絆結びの指輪』の共有、ですね」
本来の効果は、ステータスや精神状態や感情の適度な共有なのですが、あの時の僕たちは精神状態や感情がすごくシンクロしちゃってたらしいのです。
「そのせいでステータスが過剰に共有されちゃったみたいで」
つまり僕もモノカさんみたいな武人に。
「『信心』スキルの異常発動と『指輪』の異常な共有効果が同時に起きてアレしちゃったみたいで、普通ではあり得ないことが起きたみたいです」
それで決闘の勝利……
「この世界の理としては起きてはならない異常事態だったのでカミスさんの身体が心配だったのですが、大事にはいたらなかったみたいですね」
筋肉痛がものすごいのですが。
「一時的とはいえ、あのモノカさんの身体能力を得たわけで、カミスさんの身体には相当な負担が」
それは納得なんですけど、すごく痛いです。
「骨折とか筋肉の断裂とか神経の損傷とかは無いようなので、しばらく安静にしていてくださいね」
ありがとうございます、でもすごく痛いんです。
「看病したい人は大勢いるみたいなので、大人しくなすがままに、ですよ」
何をなされちゃうんですか。
「今後はもっと穏やかな感じの効果になるよういろいろ調整しておきましたので、モノカさんと末長くお幸せに」
ありがとうございました、モノカさんとはまだアレなんですけど。
「それでは、皆さんによろしくです」
おふたり、深々と礼。
そして静かに『転送』で去っていきました。
けんちゃんたちが去った後、すぐにみんなが部屋に来ました。
エルミナが泣いちゃったりして、本当にごめんなさいです。
「これ以上目覚めなかったら、エリクサー改を使わねばならないかと」
クロ先生、心配かけてごめんなさい。
「もう大丈夫かな。 なにせ看病してくれる人には事欠かないし」
看病?
「その状態では、寝返りもうてないだろう」
確かに、指一本動かしても筋肉痛です。
「大人しく、全てを受け入れるように」
全てって、もしかして。
「夫の一大事を介抱するのは妻の務め、何でもお申し付けくださいませ」
ありがとう、エルミナ。
って、何でもはちょっとマズいかも。
「何を今さら、大人しく観念するがよかろう」
シスカが真面目顔で、って、僕寝巻き姿なんですけどっ。
「ちゃんと皆で着替えさせましたので、ご安心を」
皆って誰なんだいっ、クリス。
「カミスパパ、なにか食べたいもの、ある?」
ごめん、ハルシャちゃん。
いろいろといっぱいいっぱいで、なにも食べられそうにないよ。
それから、みんなとお話ししました。




