閑話②-Ⅱ話 勇者井川君のダンジョンアタック
閑話②-Ⅱ話です。
井川君の初めてのダンジョンアタックです。
そして聖騎士団、お前ら大丈夫か?
閑話②-Ⅱ
「此処がチタダンジョンかぁ~ 」
そこには巨大な穴が有った。
まるで露天掘りの鉱山(すり鉢状の地形)の真ん中に大きな穴があってそこから中に入るらしい。
〔元々露天堀鉄鉱山の真ん中に突然開いたダンジョンらしいです 〕
「さて、今日は入り口の前にて野営して明日突入する予定で居てくれ。野営場所の設営は我々、第1騎士団に任せてくれ 」
「よろしいので? 皇太子殿下? 」
「まさか、あの連中には任せられないよ 」
確かに一緒に長距離行軍して来た(馬車に乗ってきただけ? )聖騎士団の殆どの者は倒れていた。
皆さん使い物になってない状態だった。
〔エ~ト、皆さん聖騎士団デスヨネ? 〕
「それにしては勇者殿は平気なんですね? 」
「そこは鍛えてって嘘です。まぁ、魔法ですね。皇太子殿下は? 」
「なんだ魔法かってどうやてるの? 俺達は長距離行軍の訓練を積んでいるからね。まぁ、慣れだよ 」
僕が乗っていた馬車は聖騎士団の馬車なのだが………
実際に馬車移動はサスペンションも無い木製の車輪の馬車なので揺れが半端なかった。
〔乗ってるだけで車酔いできるよ! 〕
それで魔法で尻の下に風魔法でエアクッションの魔法(空気の座布団)を展開してみた。
マァ、バレないと言うか、それ所ではない聖騎士団の面々
〔最初は破裂して調整が大変だったよ(笑) 要研究かな? 〕
第1騎士団が手際よくテントを設営していく。
回りに何か棒の様な物を刺していく?
〔何だろうね、あれ? 〕
「あぁ、あれは魔除けの結界を発生させる魔道具だよ。この魔道具のお陰で魔物が寄って来ないんだ。便利だろう 」
「ヘェ~、便利な物が有るんですね? 」
「この魔道具はダンジョンから発見した古代の魔道具を何とか複製させた物でああやって等間隔で設置すると魔物が入ってこないんだよ。結構出回ってる魔道具で旅の必需品だけどね 」
便利な魔道具だね。
ん、あの魔道具、[鑑定]で見たら効率が悪いねぇ?
〔勝手にいじったら不味いよね(笑) 〕
こうして明日の朝からダンジョンアタックをする事になった。
はたして、明日までに聖騎士団が使い物になってるだろうか?
〔テントの中で唸ってるよ! 〕
次の日、何故か復活している聖騎士団の面々?
聞けばポーションを使ったらしいって!
〔貴重なポーション使ってどうするの? コイツラ物資の補給(兵站)とかの概念が……… 有るわけ無いか(笑) 〕
全くなってない連中はほっとくとしてこれからどうするかだったが………まぁ、足を引っ張るようなら置いていくかな(笑)
もっとも第1騎士団に付いていけるのか、コイツら?
このチタダンジョン、10層まではゴブリンダンジョンで、11層からは何故かゴーレム軍団が登場してそれが40層付近まで続くらしい?
もっとも10層のボス、ゴブリンキングを倒せば次からは11層まで転移石で行けるらしい。
〔10層毎にボスがいるらしい? 〕
第1騎士団は既に30層まで元々攻略済みで主力組は31層から訓練するそうで、今回は第1騎士団の新人達の教育するために1層から突入する組に別れて進むとの事。
〔第1騎士団の新人達って聖騎士団よりたくましくないか? 〕
「あれ、皇太子殿下は1層からですか? 」
「まぁ、新人の教育も訓練だよ。実際は30層からでも行けるけどね(笑) 」
「ヘェ~そうなんですか。それで第2皇子殿下は? 」
「ウグ、………私はチタダンジョンは初めてだから君と一緒だよ。だから第1層から行くぞ! 」
「まぁ最初の5層まではゴブリンが3匹づつしか出ないし6層からリーダーやメイジが出て来て9層からジェネラルが出て、10層のボスがゴブリンキングと取り巻き軍団が大体35匹から55匹かな? 」
ヘェ~そんなダンジョンなんだ。
しかしゴブリンねぇ。
〔ファンタジーの定番だね。緑の臭い人は 〕
「な…………そんなに居るのか………… 」
「エ~ト、そんなに大変なの? 実感が無くて……… 」
「アハハハハ♪ 確かに勇者様には実感は無いだろうね。君の世界にはゴブリンがいないのだろう? 」
「エェ、確かに魔物がと言うか魔法も無いですね。その代わりに科学は発展してましたね。もっとも魔法の方が便利でしょうね 」
「科学とは何だ? まぁ後で教えてもらうか。さてゴヴォロフ、先に行くか? 後から来るか? 訓練するなら先頭で戦闘すれば経験値は稼げるぞ(笑) どうする? 」
ゴヴォロフ第2皇子率いる聖騎士団が先頭で進む事になった。
最初はゴブリンが3匹づつしか出ないので余裕で倒していたが5層に入った途端、リーダーやメイジが率いるゴブリンチームが相手になると途端に連携が取れず疲弊する聖騎士団。
〔何だこの連中? 連携が全くできないって? 〕
結局僕が剣技と魔法(初級魔法のみ)でなんとか倒した風にしてその場しのぎをした。
聖騎士団の練中は既にボロボロだった(笑)
〔あ、貴重なポーションまた飲んでるよ! 後何本残ってるのやら? 〕
「おいゴヴォロフ、ポーションは後何本残ってる? 」
「……………ウルサイ兄貴、まだタップリ有るわ! おい、後何本有る? 」
「ハ、後………11本です 」
聖騎士団の今回の突入人数は6人、ポーションの残りが11本?
本来は引き返すべきだろうにどうするの、ポンコツ聖騎士団?
〔本当に大丈夫か、コイツら? 〕
僕が何か言おうとしたら!
「ゴヴォロフ、もう引き返せ。お前らこのペースでポーションも無くなったらどうするんだ? 暫く3層付近でレベルを上げとけ。じゃないと、死ぬぞ! 」
皇太子殿下は少し殺気を放ってゴヴォロフ達聖騎士団に言う。
ビビる聖騎士団って?
〔おい、どんだけ弱いんだよ。まぁ訓練見てたらこっちが鈍る様なものだしね(笑) 〕
「兄貴、それでは勇者様の訓練に成らないだろう? 」
「勇者殿はこっちで見てやるよ。新人の訓練次いでにな。何ならゴヴォロフ、お前だけでも一緒に来るか? 」
「ウグ、わかった。ただ聖騎士団から1人付いて行かせる。 バカーノフ、お前が一緒に行け。勇者様の世話をしていろ! 」
聖騎士団のゴヴォロフ付きの聖騎士バカーノフが一緒に来ることに。
この人、見た目頼りない様に見えるんだけどねぇ~。
「では先に行きましょう、勇者殿。ゴヴォロフ、一応護衛を2人付けておく 」
護衛には、"ピンチになった時のみ助けてやれ! "と言っていた。
「……………わかった。兄貴こそ勇者様を守れよ! 」
こうしてゴヴォロフ第2皇子殿下達聖騎士団は撤退していった。
後で聞いたらそのまま外まで撤退していったらしい。
〔無理もないけどね(笑) 〕
「……………さて、邪魔者も居なくなったしさっさと10層まで行くぞ! 」
この後は、サクサク10層前まで進んだ。
10層のボス部屋の中に入ったら、ゴブリンキング中心のゴブリン軍団(総勢50匹)が待ち構えていた。
〔まぁ、定番なのかな? 第1騎士団の方々は余裕ですね? 〕
10層でゴブリンキングを倒した後………
「さて勇者殿、少し休憩しましょう 」
「えぇ、そうですね。しかし第1騎士団の新人さんは鍛えてますね。全く被害も無いし。………本当に新人? 」
「アハハハハ、流石勇者殿。ヤッパリわかりますか? 」
「そりゃそうでしょう。完璧なチームワーク、僕のホローも完璧だったし。新人ではこうはいきませんよ! 」
ここまで完璧なチームワークを見せられて、気が付かないのも変でしょうに。
しかし………
「あ、そうそう。バカーノフ君、こっちに来て。お茶くらいご馳走するぞ! 」
「……………殿下、いい加減にしてください。バカーノフって本当にバカっぽでしょうに! 」
「ヤッパリですか。彼は聖騎士団内に放った間諜ですか? 」
「流石勇者殿。まぁ弟の様子を調べる為に送り込んだんだよ 」
「そうですよ。聖騎士団の連中、馬鹿すぎるでしょう。何せ自分達の方が偉いと思い込むのはいいけど巻き込むなですよ。しかも物資もまともに用意できないし。もう嫌ですよ、元に戻して下さいよ! 」
そう言って変装を解くとそこには耳が長い色男が現れた!?
「驚いた? 僕の本当の名前はセルゲイ。エルフなんだよね。まぁ、この国は人種差別が酷いからね。こうして変装も必要なのさ 」
そう言ってまた元に戻していた。
「まぁロシナ聖教(教皇)は何を考えてるのか? 大体奴隷と信者を2万人も殺して何が神の元に行っただよ! ただの教皇派以外の粛正だろうに! 」
どうやら思っていたよりヤバイ方向に向かっているらしい。
「勇者殿はどこまでご存知か知らないが、おそらくは貴方はロシナ聖教の尖兵として対チョウカ帝国に使われる 」
「それか、大ロシーナ帝国のクーデター要員ですか? 」
「……………何故そう思います? 」
「ちょっと考えればわかりますし、あの第2皇子殿が次の皇帝は俺だと普段から自慢気に言ってますしね。こんなにしっかり者の皇太子が居るのに、何処からあの自信が出てくるのかが解りませんけどね? 」
この後、今後の話としてチョウカ帝国との最前線の話を聞いたら、何この場所はとなった。
初めて地図らしい物を見せてもらったが、何と最前線の場所がまるでクレーターの外苑部の取り合いみたいになっていた。
〔クレーターの中は内海になっているみたいな? 〕
普通は国境の川を挟んでの渡河作戦なんだが、この国境の川、大アムール川が大河で流も早く水深も深くしかもこの世界の船舶技術はマダマダ未熟で渡河することが無理と言うか不可能だった。
流石に川幅が3kmも有ると泳いで渡る事もできない。
〔泳ぎきっても疲れていて相手に殺られるだけだった 〕
しかも川沿いは両岸とも湿地帯になっていて陣地も造りにくく、軍隊の進行も事実上不可能だった。
その為に川を挟んでのにらみ合いと言うかほぼ無防備でも問題ないらしい。
〔勿論、監視用の陣地は有りますけどね。その為の村が有るらしい? 〕
この内海クレーターの外苑部分の外側(東と南側)は外洋らしく近くに大陸は無いらしい。
内海と外洋はどこかで繋がってると噂になっていたが場所はわからないらしい。
〔戦争中の為に、調査ができないらしい 〕
現在はこの外苑部分の取り合いになっていて、今の所大ロシーナ帝国が押している状態だが、何時押し返られるか油断のできない状態らしい。
そして決定的なのは大ロシーナ帝国もチョウカ帝国も決定打が無い事だった。
〔その為の勇者召喚だったらしい。教皇の手柄としてって何で? 〕
「所で勇者殿、君は何をしたいのか。………いや、何をするのかな? 」
うん、この皇太子は薄々感付いているのかな?
「何をですか? 」
「まぁ良いけどね。こっちに影響が無ければ良いけどね 」
「その前に教皇が仕掛けて来たらどうするのですか? 皇太子殿下 」
「私の事はジェーコフで良いよ、勇者殿 」
「なら私も………ウ~ン、そうだ! アーサーで良いですよ 」
「ン、アーサー? 確かアキヒコ・イガワが本名なんだろ? 」
「こっち《異世界》風に名のるならアーサーでいこうかとね(笑) 」
まぁ、アーサー王の話が好きだったからね。
「その方が良いかもね。では改めてアーサー殿、よろしく 」
「ジェーコフ殿よろしく 」
一旦地上に戻ることに。
この後バカーノフは10層突破したことを報告してこの後もと言うか勇者付きの護衛として暫く付き添う事に。
〔聖騎士団内で少し地位が上がった為、諜報活動も楽になったとか。まぁ、ジェーコフ殿との連絡役になってもらったけどね 〕
こうしてチタダンジョンの攻略を続けることに。
閑②ーⅡ
こうして皇太子と裏で取引できるようになった。
うん、この皇太子は腹黒いね(笑)