その1-3
「今日も快晴、パンを売るには絶好でしょう」
なんて独り言を言いながら、ちょこちょこ森のある街道を歩いていく。荷車はそんなに重くはないし、もし魔物に遭遇すればダッシュすれば逃げられる、かもしれない。
―――ルーン……
……すごい嫌な音が聞こえた。歩みを止めずに周囲を見渡す。
―――ニュルーン
……泥とか、ゼリーとか、比喩表現でそう言ってもおかしくない魔物がゆったりと、でもなんか異様なまでに早くこっちにきてる気がする。
「やばい。走ろう」
というか、走らなきゃやばい。そう思った頃にはもう走っていた。
息荒くダッシュ。足を止めた時点で荷車壊されて、最悪私も死ぬ。最悪なパターンだ。二、三度振り返る。何故かいつの間にか他の魔物も付いてきてるし、このままだといずれ追いつかれる……かもしれない。慌てつつも私は辺りを見渡す。すると遠くに冒険者用の休憩所が見えた。あそこに逃げ込めば身の安全も確保されるだろう。
これ以上走ってもいずれスタミナ不足を起こすかもしれない。私は荷車を無理やり方向転換させるように足を動かして休憩所の前へ。少しだけ距離があるので急いで木箱を手当たり次第とる。
「残り一個……やめた。これ以上欲張って追いつかれるのはまずい」
その一個だけは諦めて休憩所の中へ入り、扉を閉める。そこからは動けずにへたれこむ。外からは何やら音が聞こえてくる。しかしいまはあんまり気にとめる気はない。とにかく休憩も兼ねて息を整えていた。
……しばらくして。呼吸もある程度整ってきていた。
「外からの物音は……あんまり聞こえない」
扉を開けて荷車を確認する。荷車は少し欠けていて、諦めた木箱は荒らされてパンのカスぐらいしかなかった。とはいえ、前向きに考えればその一個で済んだ、のかもしれない。
「時間はかかったけど、まぁしょうがないか」
周囲の安全を確認した後、木箱をまた荷車に戻して歩き始めた。
「今日も快晴。帰り道は不安で仕方ありません」
そんなこと呟きながら歩き続け、やっとの思いで村にたどり着いた。見渡すと、自然豊かで空気もきれいに感じる。畑とか、果物の実る木とかもあって、まさに田舎村だった。
「とりあえず依頼主に挨拶しないと」
結構遅くなったような気がするため、そういった意味も兼ねて挨拶しないといけない。なるべく早足で向かうことに。見渡しながら進んでいると、公園らしきところで小さな子供がこちらを見ながら近づいてくる。
こんな田舎村なので、人来ることが珍しいのだろう。私は無視して歩こうとしたが、動きを止める。
「せっかくだし、無料配布のバターロールでも渡しておけばいいか」
これぐらいの寄り道は大丈夫だろう。木箱を一個開ける。子供は興味深そうな顔でこちらを見ている。
「はいこれ。せっかくだし、食べて行って」
一個渡して、木箱を閉ざして歩き始めた。なんか善人みたいでちょっと恥ずかしい。
「お姉ちゃん! ありがとう!」
………渡さなきゃよかった。結構恥ずかしかった。誤魔化すかのように代わりに片手を大きく振っておいた。
ふと、懐かしい感覚にも襲われた。思わず足が止まりそうになったけど、振り払うようにすぐに一歩を踏み出した。そんな感覚も、気のせいだろうと、私はそう思うようにした。
元々この部分は選択肢で、後の展開は一緒。
先に急ぐの場合だと「パンを数個落とす」展開でしたが後の話には特に支障なしでした。