第一章 二人の嫁、襲来 - 06 - 希舞
第一章 二人の嫁、襲来 - 06 - 希舞
もちろん圭太には、そんな舞がどうしてこんな所にいるのかなんて知りようもなかったし、なんだか知らない方がいいような気がし始めていた。
だがこれまでの人生がそうであったように、圭太の思いなど関係なく、世の中というのは勝手に動いていく。
「ふっ、残念ね。もう、式は終わる寸前よ。あなたはそこで黙ってみていればいいの。これまでがそうであったように、あなたは絶対にあたしには勝てないのよ」
絶対的な王者がそうするであろう余裕を見せながら、余裕たっぷりに類が言ってのける。
「まだよ。式はまだ終わっていない。あんたなんかに、圭太の第一婦人の座を渡すもんですか。子供の頃教わらなかった? 物事は下駄を履くまでわからないって……」
舞が言った瞬間、大聖堂の中が漆黒の闇に包まれる。
自分の手を確認することも出来ないような、文字通り漆黒の闇である。
圭太が何もできずに固まっていると、両手を左右から掴まれて、いきなり引っ張られた。
「うぎゃっ」
痛さで圭太が悲鳴を上げると、今度は同時に両方離される。
その直後、圭太の周りでバシュッとかボシュッとかいう風切り音と共に、ドカンとかズウッンとか、腹に響くような打撃音も聞こえてきた。
まったく見えないが、明らかに何者かが闘っているような気配を感じる。
ところがそれも、長い間ではない。
いきなり圭太の足元が抜ける。
そのまま自由落下が続き、まるで圭太は悪夢の中にいるかのように、闇の中を落ち続けた。
その落下がいつ終了したのか、圭太にはわからなかった。
もちろん何処にいるのかもわからないし、自分に何が起きているのかも別らない。
唯一わかるとと言えば、自分が今寝ているということくらいである。
ごつごつした場所でも、硬い場所でもなく、なんとなく平らでふわふわとした感触の場所に大の字になって寝ていた。
起きようとしたが、そう簡単にはきそうもなかった。
というのも、圭太の上には何かが覆いかぶさっていたからである。
なんとかしようと圭太がもがいたせいなのかも分からないが、覆いかぶさってきていた物はするすると動いて、圭太の体から服を次々と剥ぎ取っていく。
闇の中で自分の置かれた環境が確認できないまま、二分後には圭太は下着以外全て剥ぎ取られてしまっていた。
自分自身がどういう状況になっているのか理解できたのは、世界に再び光が戻ってきた時だった。