第一章 二人の嫁、襲来 - 05 - 異議あり!
第一章 二人の嫁、襲来 - 05 - 異議あり!
それだけでも人生最大の異常事態であるのに、呆然としている間に結婚式の場に放り込まれて、花婿にさせられようとしている。
それも、何度も言うが日本を代表する美少女の花婿としてだ。
ここまで追い込まれているというのに、圭太は未だになにがなんだか分からないままの状況が続いている。
運命の花嫁は、一瞬たりとも立ち止まったりすることなく、圭太の横まで歩いて来て止まった。
顔の前には純白のベールがかかっており、その向こう側には日本で屈指の美しさを誇っている笑顔が圭太に向けられていた。
いつの間にか、二人の横には司祭的な誰かが立っている。
何かを話しているのは確かなようだが、あまりに早すぎて圭太にはまったく理解することができなかった。
ところが突然司祭の声がゆっくりとなり、普通に聞き取れるようになる。
「それでは二人とも、神の門前にて誓いの口づけを……」
司祭が言いかけたところで、どこかからか大きな声が発せられる。
「異議あり!! その誓い、その結婚、待ってもらいましょうか!」
声が聞こえた直後、花嫁が歩いてきた道に、大聖堂の天井から何者かが降ってきてふわりと着地する。
猛禽類が獲物に襲いかかるような速度で降下しながら、最後の一瞬で減速して羽毛のようにふわりと舞い降りる。
それに合わせるように、漆黒の長い髪が彼女の体の周囲でふわりと舞っていた。
圭太と類、二人の正面に舞い降りたのは、タイプこそまるで違うが、類と並んでも遜色ないほどの美少女であった。
「何もかもあなたの思う通りにさせたりはしないわよ、類! 他のことならともかく、圭太さんの第一婦人の座を黙って明け渡すほど、あたしは甘くないわ!」
黒髪長髪の美少女。
これまでに一度も会ったことなどないが、圭太はこの黒髪美少女のことを知っている。
おそらくといういうような、曖昧なことではない。
彼女に似た美少女が日本にそう何人もいるはずがなかった。
まちがいなく、彼女はアイドルグループ、マジカル・スイーツ・Θのセンターである希舞である。東のNHP64、西のマジカル・スイーツ・Θと言われるアイドルグループのセンター同士ということは、上原類と人気を二分するトップアイドルと言っても過言ではない。