第二章 アイドルは女王様 - 30 - 爆心地
第二章 アイドルは女王様 - 30 - 爆心地
この二人の間に文字通りの意味で立たされている圭太は、ミアに助けを求めるような視線を送るが帰ってきたのは優しげな微笑みだっだった。
どうやら、この状況を抜け出す方法は用意されてはいないようである。
結局圭太にできることは、何事もないことを願いながらこのまま立っていることくらいしかなさそうだ。
火花を散らしている二人の現役美少女アイドル。
それを見守る長い金髪の美女。
彼女たちの中心にいる圭太。
ある意味呑気な光景であると言える……かも知れない。
それが、爆心地であり今まさに核爆発の真っ只中にいるのでなければ。
核分裂反応自体はすでに終わっているが、発生した火球とその熱照射による影響は今この瞬間も続いていた。
発生した巨大な熱量によって発生した上昇気流は、じきに雨雲を呼び吹き上がった土砂と共に黒い色をした雨を降らせることになる。
それは放射化された物質を多量に含んだ、いわゆる死の雨である。
このままここにいれば、確実に浴びることになるだろう。
圭太を中心にして発生した不思議な空間が、その死の雨の影響まで防いでくれるのかは謎である。
そもそも、この空間がいつまで続いてくれるのかもわからない。
争いながらも、その不安に二人の美少女アイドルは気がついていた。
「そろそろ頃合いね」
最初に切り出したのは舞だった。
「そうね。続きは他でやりましょう」
その提案に類も同意する。
「圭太さん。今から跳ぶから、少し我慢してね。……さぁ、いくわよ舞」
類は圭太の左腕を自分の首に回して、体をぴったりと寄り添わせながら舞に呼びかけると。
「こっちは、いつでもいいわ」
舞は反対側の右腕を自分の首に回して答える。
次の瞬間には、圭太の体は空中に浮いていた。
一体自分の身に何が起きているのかも、よく理解できない。
視界を真っ黒な塵が覆っていて、自分が置かれた状況をまるで確認できなかったこともある。
ただ、その時間は短かった。
ふわりとした浮遊感がやってきた次の瞬間には、遮っていた真っ黒な塵の中を潜り抜けていた。
いっぺんに開けた視界には、澄んだ青空が映っている。
そして、眼下には核爆発によってなぎ倒され、無残な姿になった王都の街並みが見える。
高さにすれば、東京タワーとほぼ同じくらい。
その高さにまで舞い上がった後、両側を類と舞に支えられた圭太は自由落下を開始する。
要するに落ち初めたのである。




