第一章 二人の嫁、襲来 - 04 - いきなり式場
第一章 二人の嫁、襲来 - 04 - いきなり式場
それまで、びったりとひっついていた類は、なんの説明もしないまますっと離れていった。
それから圭太は奔流に押し流される木の葉のように、色んな人達の手によって弄くり倒されるのである。
それから三十分後。
気がついたら圭太は生まれて始めて着るやたらと高そうな燕尾服を着せられて、どこかの教会の中とおぼしき大聖堂の祭壇の上に立たされていた。
大聖堂の中にはとんでもない数の人間が詰めかけていて、全員が圭太のことを注目してきている。
未だに圭太は何がなんだかわかっていない状態なので、どうすることが正解なのかすらもわからず、その場で固まっていることしかできなかった。
だが、そもそも迷っているような時間など用意されていなかったのだ。
大聖堂の最後部にある大きな扉が開き、そこから純白のドレスに身を包み、可憐なブーケを手にしている、日本を代表する美少女が登場してくる。
もちろん言うまでもなくそれは、上原類である。
それを見て初めて、ようやくこれが一体どういう状況であるのか、なんとなくではあるがようやく圭太にも理解出来始めてきた。
おそらく、というかほぼ間違いなく、圭太は結婚式場にいる。
そして、今登場してきたのは花嫁だ。
花嫁がいるということは、当然ながら花婿がいるということでもある。
それが誰か……などと考えるまでもない……ことだが、圭太は一応考えてみた。
見たがこの状況のなか、いくら周りを探してみても、それっぽい人物は一人しかいない。
すなわち圭太本人である。
本当は叫ながら、どこかに逃げ出したかった。
それか頭を抱えてその場にしゃがみ込み、現実逃避したかった。
こんな所に自分がいるという意味が、未だに理解できていないのだ。
いて良いのかどうかすら分からない。
いたたまれなさの局地である。
だが、その行動を周囲にいる多くの人々の視線が阻んでいた。
それで結局圭太にできることは、その場で固まっていることだけであった。
ついさっきまで、圭太はモテない男ランキングなるものがあったとしたなら、間違いなくその頂点付近に位置していたはずだ。
それなのに、寝込みをいきなり美少女に襲われた。しかもその美少女は日本を代表する美少女であったというだけでなく、気がついたらファーストキスを奪われていたのだ。さらにそれにディープなオプションがつく。最初のキス体験がいきなりのディープキスというオプションだ。