第二章 アイドルは女王様 - 17 - 選択
第二章 アイドルは女王様 - 17 - 選択
なのに、圭太は。
「ごめん、ミアさん。君一人で避難してくれないか? 俺、どうやらここから動けないらしい」
一旦走るの止めた後、圭太の足はまるで地面に張り付いたみたいになっていた。
今すぐにでも逃げないといけない、そう頭では思っているのだが、圭太の足はどうしても此処から動こうとはしてくれなかった。
「なに言ってるんですか? さぁ、行きますよ」
ミアは焦る様子を隠そうともせずに、圭太の手を取り引っ張りながらそう言った。
ほとんど力任せに引っ張っているのに、圭太の足はそこから一歩たりとも動こうとはしなかった。
「やっぱりダメだよ、ミアさん。俺さ……行かなきゃ」
それが自分の意志なのかどうかすら、圭太には分かっていなかった。
ただ感じるのは、自分の内から溢れ出る強い衝動のみ。
その根源となっているのか、今の圭太には理解することすらできなかった。
「ダメですよ、圭太さん!」
ミアが叫んだ時には、圭太はもう走り出していた。
まばゆい光が、空を切り裂いている。
圧倒的な破壊力を持ったビームは、圭太の存在など関係なく無作為に王都を破壊していく。
犠牲者がどれほど出ているのかは想像もつかないが、ただこのビームを放っている怪獣はそんなことなど気付いてもいないだろう。
その怪獣の足が止まっていた。
何者かの攻撃に晒されて苦しんでいるようにも見える。
そうなるとビームの放出を初めたのは、苦し紛れのようにも伺えた。
だが、遠目からはそれ以上のことは分からない。
懸命に近づこうとするが、目標となる怪獣の姿はしっかりと見えているのに、走っても走っても距離は縮まらなかった。
あまりにスケールが違いすぎて感覚的な距離とは齟齬が生じているのだ。
たがやめるわけにはいかなかった。
というより、やめるという選択肢は圭太の頭の中になかった。
そうやって走ってはいても、いつまでもやれるわけではない。
ましてや全力疾走など百メートルも走れば限界となる。
そして、とっくに限界は過ぎていた。
すでに走るというよりは早く歩いているに近いスピードだ。
一旦は置いてきたはずのミアが追いついてくる。
圭太の横に並んで走っているが、圭太のように息を切らしてはいない。二人の体力差は歴然としていた。
そのことに圭太も気がつくが、あまりに息が切れて何も話せない。ミアが横に並んで走りながら何も言わないのは、圭太とはまた別の理由からだ。




