第二章 アイドルは女王様 - 12 - 再生
第二章 アイドルは女王様 - 12 - 再生
そして、その中からコードが浮き上がり、それはAからFまでのアルファベットと数字で表される16進数の組み合わせへと変化する。
だが、それが意味を持ったのは、そこからさらに漢字へと変化したときだった。
文字は『再生』の二文字。
剣によって貫かれたはずの胸の傷が瞬時に消えていく。
一体何が起こったのか分からないまま圭太がその場で立ちすくんでいると、全裸のまま舞が抱きついてくる。
「圭太さん、ごめんなさい、ごめんなさい」
しゃくりあげるような声で、素肌をぴたりと張り付かせたまま、舞は圭太の耳元で何度も謝る。
初めて自分の素肌で感じる美しい女性の肌の感覚に、ひどく戸惑いながらも圭太は舞が小さく震えていることに気がついた。
ぴったりと抱きつかれているために、舞の顔を見ることはできなかったが、泣いていることくらいは圭太にだってわかった。
その理由だって想像がつく。
なのに、どうしても今自分が生きている理由に関してはわからなかった。
自分が死にかけた……いや、実際には死んでいたのかもしれない。
それが夢などではないことは、体に残っている痛いという感覚がはっきりと示している。
「俺は一体……」
状況を把握しきれない圭太がそんな事をつぶやくと、当然その声は舞の耳にも届く。
「それが圭太さんの力なの。正式には事象改変能力。でもみんなチート能力って呼んでいたわ。死者を蘇らせることくらい、どうということはないわ。でも、その力にとって、そんなことなんて瑣末なことに過ぎないの。だから、圭太さんの力を利用したい者や、圭太さんのことを脅威に感じて排除したい者。それぞれの理由で戦いを挑んできたり、謀略をしかけてきたりする。だから守らなくてはいけなかったのに。あたしが……あたし達が……」
話している間、ずっと舞の体は小さく震えていた。
必死で押し殺そうとはしているが、泣いていることは間違いない。
たとえ見えなくても、圭太にだってそんなことくらいは分かっていた。
ただし、こんな時間はそんなに長いこと続かない。
いきなりズンときた。
体感的には地震に近いが、明らかにそれとは違う。
揺れは一瞬で収まったからだ。
だが、一度ではなかった。
少し間をおいて、またズンとくる。
それは、連続して繰り返される。
泣いていたはずの舞は、圭太の手を取り浴場の中を走り出す。
「これよりヤマタイは戦闘態勢に移行する!」




