第二章 アイドルは女王様 - 09 - 舞の心
第二章 アイドルは女王様 - 09 - 舞の心
転生前の記憶を引き継ぐことは、無限の記憶と経験を引き継ぐことになるが、同時に延々と終わることなく続く悲劇的な宿命を背負い続けることをも意味していた。
一つ一つの英雄としての人生は物語としてありふれたものであったとしても、それが終わりも見えない悲劇が繰り返されることを意味するものなのだとするならば、さすがにありふれたものであるとは言いかねる。
ただ一番肝心なことは、そんな運命を背負いながらも、その英雄はただの一度も自分の背負った戦いに背を向けたことはなかったことである。
そう言ったことを考えると、彼こそは英雄となるべくして英雄となったことは容易に理解できる。
ただ、それだからこそ、永遠に繰り返し続く悲劇を背負い続けることへと繋がるのであるが。
そんな英雄の話しを聞かされた圭太は、話しを聞く前以上に困ってしまった。
生まれ変わりがどうとか言う以前に、なにもかもが圭太とはかけ離れ過ぎていて、想像力を働かせるのにも限界を感じていたからである。
そもそも、なぜ圭太にそんな話しを聞かせたのかも分からない。
舞は圭太の気持ちを予め分かっていたかのように……いや、分かっていたのだろう。
圭太の手を取ると、それをそっと自分の胸元へと持ってくる。
もちろん圭太は固まったが、舞は構わず語りかける。
「圭太さんは覚えていないでしょう。でもね、わたしの胸は貴方の腕の温もりを覚えている。貴方の体の温もりを、あたしの全身が記憶している。こうして、貴方に触れられているだけであたしの体は感じています。あたしの心は震えている。どうしてだか分かりますか、圭太さん?」
もちろん圭太には分からなかった、わかるわけもない。ただ、いままでの話の中で薄っすらとは察し始めてはいたが、そのことを受け止められずにいる自分がいたのである。
圭太は結局何も答えることが出来ずに固まっていることしかできなかった。
ただ首を振るだけでも、意思は伝わる。だが、圭太にはそれすらできなかった。
しかし、そのことを舞は予め分かっていたかのように、圭太の瞳を見つめたまま何も言わずに手に取った圭太の腕を自分の乳房に持っていく。




