第二章 アイドルは女王様 - 04 - 裸身
第二章 アイドルは女王様 - 04 - 裸身
圭太は反射的にビクッとしたが、ミアはそれを何も言わずに優しく受け入れてくれる。
「こちらです」
二の腕に自分の腕と胸を絡めながら、導くミアの行動はよりいっそう圭太の色んな所を固くする。
お湯の中を十歩ほど進んだ所で、ミアが立ち止まり圭太の耳元に綺麗な口を寄せて囁く。
「さぁ、顔をお上げください」
ロボットのウォークのようなぎこちなさで歩いてきた圭太だったが、いくらなんでもこのままではどうにもならないということは分かっている。
まるでコマ送り映像のように、圭太はゆっくりと顔をあげていく。
浴場の中にある炎と水面が跳ね返えす、幻想的にゆらめいている明かりの中に彼女は全裸で立っている。その姿がゆらゆらと水面に映り込んでいるのがまず目に飛び込んできた。
その瞬間、圭太は固まってしまう。
周り中美女に囲まれている。そして、今圭太の横に寄り添い立っているのはそれよりもワンランク上にいる美女である。
だが、揺らめいている水面に写った姿を見ただけでも、そんなミアすらをも格段に引き離す魅力を持つ女性であることが分かってしまった。
そして、圭太は彼女のことを知っている。
だからだ、それがなおさら固まってしまう理由になる。
そんな圭太に向かって聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「圭太さん、頑張って」
なんとも美しく可愛らしく、そして頼もしい声であった。
その声に導かれるように、圭太は顔をあげていく。
すると、蛍光灯やLEDの明かりと違い、薄暗くゆらめき独特の暗さとセピア調の色調で、けして見えやすいとは言えないはずなのに。
その姿は圭太の目にひどく眩しく写った。
まるで太陽を直視したかのように眩しいのに、でも一度でも目にしたら目を離すことができなくなってしまう。
花や蝶や大自然の中に、美しいと言われるものは数多く存在しているだろう。
だが、最も自然でありながら、その美しさを真の意味で理解できる存在は、人間の雄しかいない。
ただ美しいだけの花や蝶や、そんなものとはまったく次元の異なる美しさ。
人間の女としての魅力の頂点を極めし美しさを持った存在がそこにいた。
その姿になって初めて分かる、美しさの本当の意味。
どれほど高価な宝石や、最高と呼ばれるデザイナーが作りし服を身にまとおうとも、そんなものはしょせん真の美の前においてはゴミ屑に過ぎない。
今、圭太が目にしているのは、究極の美そのものであった。




