第一章 二人の嫁、襲来 - 21 - ガーゴイル
第一章 二人の嫁、襲来 - 21 - ガーゴイル
生きているガーゴイルがこんなに恐ろしいものだとは正直思わなかったが、類が言い残した結界から出るな、という言葉を信じてその場から一歩も動かなかった。
すると、三匹のガーゴイルは類の残していった結界に激突してそのまま道路の上に転がった。
いくら怪物と言えども、猛スピードで結界にぶつかったら相当痛いらしく、しばらくの間路上で顔や頭を抱えて苦しんでいた。
もし、結界がなかったら、あるいは結界から外に出ていたら、まったく違う展開になったであろうことは簡単に想像できる。そう考えたら、さすがに圭太はその様子を見ても笑えない。
だが、ガーゴイル達の苦しみも、いつまでも続くというわけではないらしい。
一頭が頭をさすりながら、ふらふらと立ち上がると、他の二頭も続いて立ち上がってきた。
もちろん狙うのは圭太である。
おそらく最大の武器であろうグロテスクな形をした鉤爪を圭太に向ける。
結界ごと引き裂くつもりなのだ。
果たしてそんなことが可能なのか圭太にはわからないが、少なくともガーゴイルには諦めるつもりは毛頭なさそうである。
圭太のそばまで近づいてきたガーゴイルが、鉤爪で引き裂くためにおもいっきり腕を振りかぶったそのとき。
ガーゴイルの体が、中心線から上下にずれた。そのずれはそのまま激しくなり、二つに別れて路面に倒れる。
その後ろから来ていたガーゴイルの頭が、弾けるようになくなった。
そして、三頭目のガーゴイルは首だけが路面に落ちて、その上に折り重なるように自分自身の体が倒れこんだ。
「圭太さん、怪我はない?」
類が双剣を再び一つにまとめながら心配そうに聞いてくる。
「ああ、たぶん……」
圭太は、反射的に頷く。ちょっぴり漏らしたことは内緒である。
「ったく、あたしの圭太さんにちょっかい出そうなんて、十年早いのよ」
ガーゴイルの頭を消し飛ばした腕から光を消し、舞は地面に転がっている死骸に向けて吐き捨てた。
「思ったより、敵の動きが早いわね。まずは圭太さんを、ロードニアにお連れしましょう」
提案するように類が言うと。
「ふん、あんたの言うことなんて聞きたくないけど……。さすがに、圭太さんの安全がかかっているんじゃしかたないわね」
しぶしぶとだが、舞もそれに同意した。
で、やっぱりなにがなんだか分かっていないのは圭太だけである。




