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転生して来たアイドル達は、おっさんの嫁だった  作者: ぢたま
序章 圭太、死神から結婚予告を受ける
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序章 圭太、死神から結婚予告を受ける

序章 圭太、死神から結婚予告を受ける


「やは、おはよう」


 加賀圭太はいきなり挨拶をされて目を開く。

 すると、目の前にはとんでもなく巨大な目玉があって圭太を覗き込んでいた。

 もちろん、圭太はびっくりする。

 それも尋常じゃなくびっくりする。おそらくは、生まれてきてから一番のびっくりだ。


「ええええっ!」


 悲鳴ともなんともつかないような声を圭太があげると、目玉は急に離れていって男の顔になった。

 圭太が見ていたのはとんでもなく大きな顔のアップだったようだ。

 だが、どのみちびっくりするのには変わりない。


「ええええっ!」


 寸分違わぬ驚きを圭太は見せる。


「元気そうで何よりだ、圭太くん」


 腹に響くような重低音の声が響きわたる。


「えええっ?」


 いきなり名前を呼ばれて、圭太は驚いた。

 というのも、圭太に巨人の知り合いはいなかったからである。


「とりあえず、ここがどこで私が何者かわかるかね?」


 言われて初めて圭太は起きる。そして周囲を見回した。


「えええええっ!」


 この「ええっ」は現時点における、人生の中で最大の「ええっ」だった。

 というのも、夕闇に沈もうとしているような風景が360度に渡って広がっていて、圭太が寝ているのは山の頂上だったからだ。

 それもたんなる山ではない。麓の景色が霞んで見えないほどの高い山である。

 遠距離から見れば、針のさっぽに圭太が寝ていたといった感じに映るだろう。

 もちろん圭太には、こんな場所に心当たりなどない。

 当然話しかけてきた巨人なんて知らない。知るわけがない。


「わ、わ、わかりません」


 悲鳴のような、泣いてるような、よく分からない感情のまま圭太が答える。

 すると、巨人は頷く。


「だろうな。一応確認しただけだから気にする必要はないよ」


 重低音だが、内容は特に無いようだった。

 ちなみに、シャレというわけではないようである。

 わけがわからず圭太が黙っていると、巨人は構わず話し始める。


「この世界において、私はアヌビスとかハデスとかヤマとかイザナミとかサリエルなどと呼ばれてる。君にも分かりやすくいうと、死神だな。正確には万の世界における誕生と死を司っている神だ。ちなみに、話しておくが君は死んだわけではないので、余計な質問をする必要はない」


 腹に響くような声で、死神と名乗った巨人はどうやら圭太のことを安心させようとしているようであった。

 あまりにリアリティがあるから分かりづらいが、もしかするとこれは夢なのかも知れない、いや夢の可能性がとても高いという気分になってくる。

 そう考えると、圭太は若干ながら大胆になってくる。

 とは言っても、夢だろうが怖いものは怖いので、あくまで消極的な大胆さである。


「あのーすみません。僕に何をしろと?」


 死神にこんなところまで連れてこられるような心当たりというものは全くなかった。

 一番聞きたいことであり、聞く必要があることでもある。

 すると、それまで調子よく重低音を響かせていた死神が、急に渋い表情になる。


「やっぱり、それ聞いちゃうよね。俺としても話しておかなきゃなんないわけなんだけどさ。それで、最初に言っとくけど、これは運の問題なんだよ。誰かの思惑とか策略とか謀略とか、そういうのは一切関係ない。だから、真意とかを深読みしても時間の無駄だよ」


 重低音を若干控えめに響かせながら、死神がまずは言い訳めいた話から始める。


「は、はい……」


 まったく理解できないまま、圭太はとりあえず頷いておく。


「君には結婚して貰いたい……っていうか、結婚する」


 死神は響き渡る重低音で断言する。

 突然付き連れられた重低音より重い響きに、圭太はまったくわけがわからず放心状態となった。

 ちなみに今圭太は30才、一人暮らし独身、しかも彼女いない歴30年であった。

 要するに圭太は生まれてから一度も、女の子とおつきあいしたことがなかった。

 もちろんプロの人を含めて正真正銘のDT野郎である。

 そんな圭太が、いきなり結婚すると言われたのだ。


「ど、どゆこと?」


 というのが当然の反応である。

 助走もなしに棒高跳びをやらされるようなものだ。

 あまりに高い場所にあるハードルを、呆然と見上げるしかない。


「それと勘違いして欲しくないのだが、これは君たちの言うところの結婚とは違う。法律上の結婚ではなく、魂が結びつく方の結婚だ。どういうことかというと『生まれ変わってもずっと一緒だよ』のガチなやつだと思ってくれ。ただちょっとばかり違うのは、君の場合数が多い。とどのつまり、結婚相手が複数いる。もちろん、問題なのはそれだけではないのだがね」


 いきなり情報が押し寄せて来て、圭太は頭を抱えたくなった。

 そこに最後、さらに不安を煽るような一言が追加されている。


「それだではないって、どういうことなんでしょうか?」


 圭太はこれでもかというくらい控え目に聞いてみる。


「まぁ、それはあれだよ。色々とね、大人の事情というやつだ。それに、知りたくなかったと思っても、知ることになるのは間違いない。それまで、楽しみにしといてくれ。まぁ、長話もアレなんで、今日の所はここまでにしとこう。それじゃ健太くん、健闘を祈ってるよ。どんなに辛いことがあっても、そこに楽しみもきっとあるから。せいぜい頑張ってくれたまへ」


 死神は圭太が知りたがっていることにはまったく答えることなく、さんざん不安になることばかりを伝えるといきなり消えた。

 実際には死神が消えたというより、世界が暗転したと表現すべきだろう。

 何も見えなくなったからだ。

 だが、完全なる闇の中、またあの重低音の声がどこか遠くの方から聞こえてきた、


「すまん、一つ言い忘れた。お詫びに、というわけではないが。君のチート・ツール能力を開放しておいた。元々君自身が持っていた力だ、好きに使ってくれたまへ。ただし、どんなことになっても自己責任でたのむ。以上だ」


 そして、今度こそ本当に圭太の意識が完全に暗転した。


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