いずこも同じ
人間たちの汚さに辟易としたユーベルトートはゴブリンたちを命をかけて守る決意を胸にゴブリンの
村に帰ってきた。しかし、そんなユーベルトートの小物をゴブリンたちが留守の間に盗んでいた
ユーベルトートは何としてもゴブリンの村を救うのだという信念をもって村に帰ってきた。荷物を調べると、小物がなくなっていた。現代からこちらにくるときポケットに入っていたボールペンや携帯ストラップ。そんなもの、別に必要なかったが、こちらが命をかけて守ってやろうとしているのに、勝手に部屋に入り込んで物を盗んでいくゴブリンどもの根性がゆるせなかった。
「どうしたい」
部屋の荷物の前で黙って突っ立っているユーベルトートを見つけてやる夫が声をかけてきた。
「物を……盗まれました」
「ああ、ゴブリンはそういう性分だから気をつけるこったな」
「何のために、あなたは戦っているんですか、こんな盗人のために」
ユーベルトートがそういうと、やる夫はすこし視線を斜め上にあげて腕を組んだ。
「そうさなあ……程度問題かな」
「程度?」
「お前が困っているとき、人間どもは誰も助けてくれなかった。日頃は綺麗な付き合いをしていても、
本当に隣人が困ると無視する。逃げる。放置する。見捨てる。だが、ゴブリンはお前を助けた。それが全てだ。拾われた命、失ったポールペン、どっちが重い?」
「まあ、そうですね」
ユーベルトートは釈然とせず頭をしたに向けた。
「人間も、ゴブリンもそんなに綺麗なもんじゃねえ。悪いこともする。それでも、そのどっちかを選ぶなら、酷さが少ないほうを選ぶしかねえだろ。せこくて、嘘つきで、手癖が悪くて、でも、時々俺らを助けてくれる。俺はそんなゴブリンが大好きだね。お前がそれがゆるせないなら、今から人間の村に帰るがいいさ。どうする?」
「マイノリティは……正義ではないのですね。少数者でいじめられてる者の中にも卑しい奴はいる」
「そうだよ、で?どうする」
「私はあなたのために戦います」
「へへっ」
やる夫は首をすくめた。
「まあ、あんまり期待しねえことだな、俺だってろくでもねえ人間だ。人間だからな、へへへ」
やる夫はそういってその場を離れた。
ゴブリンのせこさに辟易とするユーベルトートであったが、それでも、人間とゴブリンどちらにつくか、
それを考えたとき、やはり、追い詰められた時、命を救ってくれたゴブリン側につくことを
ユーベルトートは決意するのだった。