道具屋、勇者になる準備をする。
国から連絡を待って数日遂にその時が来た。
「リク~、家に手紙が届いてるわよ~」
家の外からアーネシアのいつもの元気な声が響く。
「手紙? 取り敢えず持ってきてくれ、アーネシア」
「もぅ~私は召使じゃないわよ、リク」
アーネシアは不満を漏らしつつ俺の部屋に手紙を持ってくる。
「コンコ~ン、入りますよ~」
アーネシアはそう言い、ノックをして俺の部屋に入ってくる。
「アーネシア、わざわざノックをしなくても来るのはわかっている」
「リクが部屋に入るときはノックをしろって女子みたいなこと言ってたんじゃない」
「まあ、そんなことはどうでもいい。手紙をよこせ」
と俺は言いアーネシアの手から手紙を奪い取り、手紙の中身を見た。
「つ……遂に、この日が来たか……!!」
「遂にって事はやっと国から連絡がきたのね」
「ああ、これで俺も勇者だ!!」
「それで、紙にはなんて書いてるの?」
「明日の朝、城に来いと書いてある」
それを聞きアーネシアは目を見開いていた。
「そ、それって、今から出発しなきゃ間に合わないじゃない」
「え? まじ?」
「そうよ、この町からじゃ八時間はかかるわ。だから、早く支度して行ってきなさい、リク」
「行って来いって、アーネシア、お前は行かないのかよ?!」
「リクが勇者になるのになんで私がついていかなきゃダメなの? 子供なの?」
「クソっ、わかったよ。準備して行ってくるから、さっさと部屋から出て行ってくれ」
「はいはい、わかりましたよ~っだ」
アーナシアは文句を言いながらも素直に部屋を出て行ってくれた。
「さてと、準備といっても国に行くだけだし服装を整えるのと、護身用の武器を選ぶだけでいいか」
俺は、服装を整え父さんに護身用の武器を借りに行った。
「父さん、最近、魔王とかも出てきて何かと物騒だし護身用に武器を貸してくれよ。
あ、そうだ確か最強の剣『アルジオ・ディアハーカ』があったじゃん、あれ貸してよ」
「あれはコルビィス・ヘイアンさんからの預かりものじゃ、貸すわけにはいかん」
「え~、ケチだな父さんは~」
と俺が駄々をこねていると、店の入り口から声が聞こえた。
「まあまあ、そう言わさんな。ターナーさん。剣には代えがありますけど息子さんに代えはありませんよ。」
「これは、ヘイアンさん。お久しぶりです。」
「ああ、お久しぶり。息子さんに剣を貸してやってはくれないかね。ターナーさん」
「ヘイアンさんがそう仰るのであればぜひ」
「ありがとう、息子さんや、護身用とは言っていたがどこに行くのかね?」
コルビィス・ヘイアンと呼ばれる中年の男が俺に問いかけてくる
「剣、お貸しいただきありがとうございます。僕は、勇者の洗礼を受けるため国へ行きます」
「そうか! 国へか! ならば少し使いを頼めないかな?」
「ええ、喜んで」
正直、中年男のお使いは面倒だがこの剣を借りるためにはしょうがないと思った。
ただ、その男の使いというのはどういうものか。それだけが不満だった。