表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雪華散りゆき夜叉となりて…  作者: フランスパン
第四部 決戦編
63/74

六〇話 幸福な暮らし

 八月二四日 若松周辺。

 龍久は一人陣の横で会津の景色を見ていた。

 夏の日差しが周辺を照らし、北の地の涼しい風が頬を掠めてゆく。

「……行くか、龍久」

 彼に声をかけたのは土方だった。雪にやられた怪我も癒えている。

 しかし彼を見つめる龍久の表情はどこか暗い。

「はい……土方さん」

 龍久は足元に置いた手荷物を見る。荷物と言っても刀やちょっとした金銭、そして白い襟巻一つだけだ。

「お前らも、行くんだな」

「はい、局長」

 そこには斎藤とその他数名の隊士達だった。皆荷物を纏めている。

「局長、今までお世話になりました、そして……申し訳ありません」

「頭を上げろ斎藤、お前はお前の背負う物を決めたんだろう、だったら謝る必要はねぇ」

 この日土方は会津を去る事を決めた。

 最早陥落寸前の会津ではなく、更に北の地で、再起を図る事にしたのだ。

 斎藤は再び深く頭を下げて、その後視線を龍久へと向けた。

「龍久、行こうか」

「はい、斎藤さん」

 龍久は斎藤の隣に来ると、土方と向かい合った。

 そして彼と同じ様に、土方に向かって深々と頭を下げた。

「土方さん……お世話になりました」

「確かに、お前には世話を掛けられたな」

 土方はそう皮肉を言ったが、表情はとても穏やかだった。龍久の下がった頭を軽くたたく様に撫でた。

「お前はお前の信じる道を行け、まだお前は若いんだ」

「……でも、俺土方さんに会いに行きますよ」

「馬鹿野郎、人が見送ってるんだ、そこは素直に行くって言えよ」

「はい……でも、俺は必ず会いに行きますよ」

龍久の言葉に土方は少し戸惑ったが、きっと彼なりの激励なのだろうと、小さな微笑みで返した。

「ああ、楽しみにしてやるよ……」

 土方はそう言って背を向けた。そして他の隊士達と共に北へと向かって歩き始めた。

 その姿は、どことなく寂しそうにも思えた。

「行くぞ、龍久」

「はい、斎藤さん」


 

 この後、土方は榎本武揚率いる旧幕府軍と合流。

 そして奥州越列藩同盟と軍議をするも、間もなく同盟は崩壊。

 土方は旧幕府軍と共に、より北への地――蝦夷へと向かうのだった。

「……龍久、どうやらここまでの様だな」

「……はい」

 しばらく進んだ後、斎藤は龍久にそう言った。二人の視線が向かうのは、街道の横に佇む葛葉にだった――。

「斎藤さん、今まで本当にありがとうございました」

「ああ、お前も達者でな」

 龍久は深々と頭を下げると、名残惜しそうに斎藤達を見つめて葛葉の元へと向かった。

 斎藤は葛葉に軽く会釈をすると、皆を率いて先へと進んで行った。

 新政府軍との戦いの場へ、向かって行った。

「……行こう龍久」

「…………呆気ないんだなぁ、終わりって」

 それは幕府軍の終わりを言って居るのか、それとも新選組の終わりを言って居るのか、あるいはどちらもなのか、葛葉の知る由ではなかった。

 龍久はしばらく、戦いの場へ向かう斎藤達を見送ると、葛葉に向かって笑う。

「行こう葛葉、俺達の居場所に」


 若松周辺のある山奥。

 竹林のすぐ横にある小屋の前に龍久は居た。小さく深呼吸をして戸を開けた。

 戸を開けてすぐ土間があり、その隣には囲炉裏の居間がある。

 その横に、壁に力なく寄りかかってぴくりとも動かない雪が居た――。

 その顔に生気は無く、どこを見つめる訳でもなく、ただ呆けていた。

 人形の様な雪の側に来ると、龍久は真っ白い頭に触れると、優しく撫でた。

「ただいま、雪」


***


 雪の心は、壊れてしまっていた。

 龍久の腕の中で大泣きしたあの日から、こうやって人形の様にただ部屋の隅の方で呆然としている。

言葉を話す事もなく、口へ運ばなければ飯も食べず、連れて行かなければ用も足せない。

最早人の手を借りなければ、まともに生きて行く事も出来なくなった。

龍久はそんな彼女の身の回りの世話をしながら、この小屋で暮らし始めたのだった。


「雪、おはよう」

 龍久は囲炉裏の火で味噌汁を温めながら、居間に敷いた布団で寝ている雪に声をかけた。返事は帰ってこないが、布団の中で大きく伸びをすると、浅葱色の着物を着た彼女が起き上がった。

「今日のは自信作だぞ」

 そう言いながら龍久が膳の上に、椀によそった味噌汁を置いた。雪は何も言わずに布団から出てくると膳の前に座った。

 玄米のご飯を山盛りにして、膳の上に載せる。菜っ葉と茄子の味噌汁と、漬物、そして玄米である。

「ほら、食べよう」

 雪の手に箸を持たせると、ゆっくりと食べ始めた。それを見てから龍久は自分の膳に、味噌汁とご飯をよそって食べ始めた。

「うん……美味い」

 新選組の下っ端だった頃に、飯炊きをしていた経験が役にたった。

 雪は何も言いはしないが、口へと運んで食べてくれている。それだけで十分だった。

「ご馳走様でした……、雪ももういいのか?」

 雪はご飯を半分以上残していたが、箸を置いて縁側の方へと向かった。

 龍久は膳を片付けると、洗い物を始めた。水源は下の小川だけなので、水瓶に貯水している。なかなかの重労働で、水汲みは大変だった。

 早く起きて朝餉を作り、その後洗い物と洗濯をして、こう思うと女性の労働と言う物は、とても大変な物だというのが分かる。

(母上も、大変だったのか……)

 思い出すのは自分の母親の事だった。母は奉公人と一緒に家事もしていたので、きっとこんな思いを毎日の様にしていたに違いない。

「……はぁ、なかなか手馴れないなぁ」

 日頃自分がどれほど女性を頼って生きていたかを痛感しながら、龍久は洗濯物を干した。そして、ふと空を見上げると日は随分高い所にあった。

「しまった遅くなった! 雪、俺町に行ってくるからな!」

 龍久は桶を適当に置くと、背負子と鉈を持って出かける準備をする。最後に銭が入った袋を懐に突っ込むと、縁側にすわっている雪の元へと近づく。

「じゃあ雪、俺仕事に行ってくるから……ここで待っててくれよ」

「…………」

 雪は何も答えてはくれなかった。

だがそれでも龍久は微笑むと、雪の頭を撫でて山を降りはじめた。



 龍久の今の仕事は、柴刈りである。

 雑木林の枯枝や腐葉土などを町で売って収入を得ると言う、新選組時代の彼の給金の何十分の一の金子で生活していた。

 とは言えども、流石にこれだけでは収入があまりにも乏しい。

「はぁ、この木の中から小判でも出てこねぇかなぁ……」

「そんな竹取物語みたいな事、ある訳ねぇだろう」

 声がした方を見ると、木の合間を縫う様に葛葉が現れた。

 その手には、見事な鯵の干物と麻で編まれた袋を持っていた。

「ほら米だ、これを殿下に食わせてやれ」

「うおっ、白米じゃねぇか、しかも干物まで! すげなぁ葛葉、よく手に入ったな」

 もう何日も白米など食べていない、たったこれだけでも十分なご馳走だった。葛葉は小さなため息をつきながら、切り株に腰を下ろした。

「……もう一月か、お前と殿下が一緒に暮らし始めて、早いもんだ」

「そうだなぁ、持って来た金子ももう底を尽きそうだし……」

 土方と斎藤と別れて、もう一月が経とうとしていた。

 ほんの少し前まで戦場に居たとは思えないほど、緩やかな時間が流れていた。

「葛葉の言った通り毎日話しかけてる、出来るだけ明るく振る舞うようにしてるし、暗い話題も避ける様にしてる」

「殿下の心の傷は、陛下を失ったショックと『手当て』の反動だ……その傷を癒せるのは、人との繋がりやふれあいと言う物だ、だからとにかく毎日話しかけてくれ」

「うん、それが雪の為になるなら、そうする」

「……悪いな、お前も辛いだろう」

 だがこれは龍久にしか出来ない事だし、龍久が望んでいる事でもある。

「……龍久、お前手を怪我したのか?」

「ん……ああこれ」

 龍久の右手には、包帯が巻かれていた。不格好でとても頑丈に巻かれている。

「お前やっぱり無理してるんじゃねぇのか? 柴刈りなんて、刀振ってたお前に出来るわけないだろう……」

「……でも、もうこれしかないんだろう?」

「それは……」

 葛葉の一族の拠点は、もう陰陽師に場所が割れてしまっている。他の場所に匿うとしても、場所を知られる可能性の方が高かった。

「俺が一族の中で力があれば、一族総出でお前達を守れるんだが……俺は一族をあまり信用していない、だから力になってやれなくて……すまん」

「いいよ、俺が頑張ればいいんだから」

「……お前大人になったなぁ、昔の龍久君ならすぐに駄目だぁとかいってたのに、いつからこんな頼もしいパパになってもうっ、お母さんちょっと哀しいけど嬉しい!」

「それは褒めてるのか……」

 


 月が変わっても、雪は言葉を話してはくれなかった。

 ただ一日中呆けているだけだったが、龍久はそれでも雪に話しかけていた。

金も無く、稼ぐには仕事をしなければならないのだが、飯炊きと洗濯、その他掃除などをしていると、仕事もろくに出来ない、正に介護の悪循環だった。

 秋が深まり、もう神無月になった。

 山々は色づき、徐々に寒さが増して、日が暮れるのが早くなった時の事だ。

「はぁっはぁ、まずいっまずいぞ!」

 すっかり暗くなり、星々が顔を出した頃、龍久は山を駆け昇っていた。

 作業に没頭するあまり、龍久は時間が経つのも忘れてしまった。これから飯炊きをして、水汲みをして、洗濯の残りだってしなければならない。

(雪腹すいてるよなぁ……ああもう、俺の馬鹿!)

 今は過ぎた時間を後悔するよりも、足を動かす方が優先される。

 ようやく小川までたどり着くと、竹林の隣の小屋へと向かって走る。

(あれ、俺火を焚いて行ったんだっけ?)

 小屋からうっすらと明かりが見えた。

少し困惑しながら、龍久は戸の前にやって来た。

「ごほっ……ごほっごほっ」

 小屋の中から、雪の咳き込む声が聞こえた。まさか何か病気にでもなってしまったのだろうか、龍久は不安を抱えたまま、戸を思い切り開け放った――。

「大丈夫か雪!」


 そこには、釜戸の前で火吹き竹をもって咳き込む雪が居た。


「げほっ、げほっ……うえっ」

「…………雪」

 雪の前の釜戸には火がたかれていて、土釜が湯気を吹いている。

 その光景はまるで、雪が飯を炊いている様に思える――。

「あ……お帰り龍久」

「――っ!」

 それは久しぶりに聞いた雪の声だった。小さく微笑んで、そう自分に言葉を掛けてくれた。今まで何度声をかけても返してくれなかった雪が、自分から声をかけてくれたのだ。

 あまりの喜びのあまり、龍久の眼に熱い物がたまって行く。

「雪……お前」

「寒かったでしょ、ご飯もうすぐ出来るから、先に着替えて待ってて」

 そう言ってまた微笑んでくれた。居間には、龍久の替えの着物が置いてある。

 更に囲炉裏には汁物が作ってあるのか、鍋が火にかけられていた。

 それはなんだが、夢を見ている様な幸せな光景で、龍久を目尻に溜まっている涙を、雪に気が付かれない様に拭った。

「うん、ただいま雪」



 龍久が着替えを済ませると、雪が炊きたてのご飯とよそっていた。

 お膳には、豆腐と茄子の味噌汁、山菜の天麩羅、そして美味しそうなご飯。

 龍久の貧相な食事とは大きな違いで、更に囲炉裏の炎で岩魚が焼かれている。

「……すごい」

「はい、龍久」

 そう言って雪は山盛りのご飯を龍久に手渡した。そして自分の膳には椀に半分ほど持ったご飯を置いた。

「この岩魚と天麩羅どうしたんだ」

「岩魚は罠を仕掛けて取ったの、天麩羅は山で山菜を探して来たんだよ」

「すごい……」

 龍久は圧倒されながらも、箸を手に取った。それに続いて雪も箸を取る。

「いただきます……」

「いただきます」

 まず天麩羅へと箸を伸ばした。からっと揚げられた衣は、上野の専門店にも匹敵する出来だった。

「んっうまい! その辺の野草でこんな美味い物が出来るのか!」

「ふふふっ龍久、それ初めて会った時とおんなじこと言ってるよ」

 確か雪に味噌汁をご馳走になったのだ。思えばそれ以来彼女の手料理など食べていない。

 だが、この料理を見ただけで十分分かる。雪は料理が天才的に上手い。

「ご飯もうまいな……本当に俺と同じ米なのか!」

「えへへっコツがあるんだよ」

 雪ははにかんだ笑顔を見せながら、白米を口へと運んだ。

「雪はそれだけで足りるのか? 雪はほそっこいんだから、もっと食え」

「ちゃんと食べてるよ、大体龍久の方が食べ過ぎなんじゃないの」

「そんな事ない、俺は飯二杯だぞ!」

「だってこ~んな山盛りのご飯だよ! 龍久は将来絶対太るね」

「うるさい、俺が太るんだったら雪は骸骨だな」

 そう皮肉で返す。しばらく二人で睨み合ったのだが、だんだん笑いが込み上げて来て、二人そろって肩を震わせた。

「くすっふふっ、あははははっ」

「ふははっははっ、あはははははっ」

 そして一緒に大笑いした。

 それはまるで、幸福なあの頃に戻った様な、穏やかな時間だった。

 二人分の笑い声が、山にこだました。



 夕餉の後、雪は穴が開いた着物を繕い、龍久は薪を積んでいた。

「はい龍久、これ半纏だよ」

 藍色の生地で繕われた半纏で、布団を繕ったもので作ったらしい。

「最近急に冷え込んで来たもんなぁ……、一体いつ作ってたんだよ」

「龍久が出かけてる時に少しずつね、驚かせたくて内緒にしてたんだよ」

「雪……でも、お前の分は?」

「私のは後でいいの……早く着て見せてよ」

「雪ぃ……」

 嬉しくて泣きそうになったが、恰好が悪いので必死に我慢した。

 そして、言われるがままに龍久は半纏を羽織る。あのせんべい布団の綿とは思えないほど、暖かだった。

「大きさもぴったりだね」

「ありがとうな、雪」

 そう素直に礼を言うと、雪ははにかんで笑っていた。

 その可愛さと言うのは最早異常で、龍久の頬を一瞬で赤くする事など造作もない。

「……龍久、顔赤いよ」

「いやっ、これはその……半纏が温かいからだよっ!」

「そうかなぁ? 普通だと思うけど……」

「ほっほら雪、もう遅いから寝よう寝よう、明日も早起きしないといけねぇんだから」

 無理矢理話題を変えて、龍久はいつも通り雪の布団を囲炉裏の側に敷くと、奥の部屋に自分の布団を敷く。

「肌寒いから、薪を多めにくべとくからな」

「うん……」

 雪はとりあえず布団の中へと入る。龍久はそれを見届けると、行灯の明かりを消した。

「お休み、雪」

「お休み、龍久」

 龍久は暗がりの中、部屋の輪郭を頼りに自分の布団に潜り込んだ。

 だがこの部屋は北にあり、太陽の日が当たらず昼夜問わず底冷えしているので、肩まで布団をかぶせても寒い。

(……やっぱり寒いなぁ、もう少し囲炉裏の火にあたって来るんだった……)

 夏場はそれほどでもなかったが、冬が近づくにつれて寒さは厳しさを増すばかりで、本格的な冬が来てしまったら、凍死してしまうかもしれない。

(……熱燗で暖まりたいけど、そんな金もないしなぁ……)

 こんな環境に置かれて、ようやく自分が恵まれた環境に居た事を理解した。

 上野の家では喰うには困らず、新選組では毎日の様に飲み歩いていた。

 金を稼ぐと言うのは、ここまで難しい事なのだと、寒さと共に体に染みわたって行った。

 元々この奥の部屋で寝るのは、雪に危害を加えない事の意思表示である。もし部屋が逆なら、出入り口が居間側にしかないこの部屋を、龍久が見張る様な事になってしまう。

雪が監禁されていると勘違いして余計な心労を負わない様に、龍久はこの部屋で寝ているのだ。

(……でも寒い物は寒いなぁ……)

 震える龍久、そんな時居間へと続く戸が開いた。

見ると暗闇の中で雪の真っ白い影が見えた。龍久は体を少し起こして彼女を見る。

「どうしたんだ雪? 何か用か?」

「…………」

「雪?」

 一体何があったのか、龍久が首を傾げると、雪が突然抱き付いて来た。

「うわっ!」

 そのまま龍久は、雪と共に布団に倒れこんだ。突然抱き付かれて、龍久の心拍数は限界まで上がるのだが、前にこん風な夢を見た事がある気がする。

(そうだ、あの時は確か喉を――)

 思わず喉を押さえる龍久、あの時は喉元を食いちぎられたのだ――。

 しかし、雪は喉を食い破るどころか、龍久を抱きしめて、そのまま胸板に顔をうずめた。それはなんというか、甘えてきている様にも見える――。

「ゆゆゆゆっ雪ぃぃ! ここここっちは寒いだろう、いっ囲炉裏はどうしたんだよ……」

「消して来た……一晩焚くのもったいないよ」

 そう言うと雪は龍久をもっと強く抱きしめる。龍久の体に雪の肌が触れ合って、薄い胸が当たる。

 それはなんというか、男としては最早我慢できないほどの状況だった。

「いやいや、ほらっあの男女七歳にして席をおなじゅうずせずって言うだろう! こういうのは、そのええええっと……」

 珍しく難しい言葉を使って、とりあえず離れて貰おうとするのだが、雪は龍久から離れる所か、布団から出ようともしない。

 恥ずかしさと興奮から、困惑する龍久。どうすればいいのか分からず、今にも頭が爆発しそうな時だった。

「……龍久は、ここに居てね」

 そう、雪が小さく言った。

 小さな声だったが、龍久には十分聞こえた。それは雪の心からの言葉の様に聞こえる。

 彼女が好きだった人は、もう皆居なくなってしまったのだ。

 それを聞いたら、もうしっちゃかめっちゃかになっていた頭が、落ち着きを取り戻していった。

 龍久は掛け布団を掛け直すと、雪の頭をそっと撫でた。

 すると安心したのか、雪は少しずつ目を閉じていった。

そんな彼女を見つめて、龍久は優しく語りかけた。

「……お休み、雪」

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ