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雪華散りゆき夜叉となりて…  作者: フランスパン
第二部 京都編 新選組
25/74

二四話 油小路事件

ついに出る敵!


それから三日経った。

坂本龍馬の一件以来憔悴していた龍久だが、どうにか職務に戻る位には回復した。

あの暗殺の犯人として原田が疑われたり大石が疑われたりと、龍馬暗殺はいまだに尾を引いている。

 そんな中、突如会合が開かれた。それも幹部の面々を集めた重要なものだ。

「皆に集まって貰ったのには訳がある、まずは彼の話を聞いて貰おう」

 今度は皆に挨拶もそこそこに人を呼んだ。

 入って来た人物を見て、龍久は驚いた。それは伊東と平助と共に此処を後にしたはずの斎藤だったのだ――。

「なっなんで斎藤さんが!」

「斎藤は伊東の組織『御陵衛士』に潜伏していた間者だ」

 つまり斎藤は新選組を出て行ったのではなく、伊東一派の情報を収集する為に一時的に『御陵衛士』に所属していたというのだ、何と言う策だろうか。

「斎藤が掴んだ情報によると、奴らは新選組に害を及ぼそうとしているそうだ」

「害ってなんだよ土方さん」

 新八が問うと、土方は少し間を空けて答えた。


「近藤局長の、暗殺だ」


 一瞬で騒然となった。近藤の暗殺それは新選組を潰そうとしている動きととらえるしかない。あの慎重派の伊東が裏でそんな恐ろしい事を考えていたとは、龍久は驚いた。

「俺達は今夜伊東を暗殺する、新選組に反旗を翻した事、後悔させてやる」

 土方がそう言うが、龍久は一つ重大な疑問があった。

「へっ、平助はどうなるんですか!」

 斎藤が間者であった事は分かったが、『御陵衛士』と刃を交えると言う事は、平助と斬り結ぶ事になる。そんな事龍久はしたくない。

「そうだぜ土方さん、平助だけでも逃がしてやってくれねぇか、あいつは良い奴なんだ」

 新八もそう必死に訴えた。土方は苦い顔をしつつも決してつっかえす様な事はしない。彼も平助を生かしたいという気持ちがあると言う事だ。

「……分かった、藤堂君は出来るだけ逃がしてやってくれ」

 近藤がそう言った。土方は特に何も言わなかったが反論しないと言う事はそれで良いと言う事なのだろう。

 こうして新選組と『御陵衛士』の抗争が始まったのである。


 作戦としては、まず一席設けると言う事だった。

 近藤と土方が伊東を酔わせて、その帰路を原田、新八、斎藤他数十名の隊士で奇襲し、更に伊東の死体を使って衛士達をおびき寄せて一網打尽にするという豪快な物だ。

 龍久はこの作戦には参加しないのだが、平助の事は原田や新八にこれでもかというほど頼んで来たので、これで良しとする。

 もうしばらくすれば、皆が出て行くだろう。龍久は一人庭を眺めていた。

「……嫌な夕焼けだなぁ」

 今日の夕焼けは自棄に紅くて、なんだか落ち着かなかった。龍久は部屋に戻ろうとしたのだがその時、ふと人の気配がして視線を戻してみると、葛葉が立っていた。

「葛葉、お前またいきなり現われて……」

 いつも急に現われる奴だが、今日はまた幽霊の様に出て来たので驚いた。

「龍久、俺今からいけない事をしようとしてるんだ……」

「えっ……何だよ急に、お前がいけない事してるのは何時もの事だろう」

 なんだかいつもの調子で来ないので、気味が悪かった。熱でもあるのだろうか。

 葛葉はまた真剣な表情で龍久を真っ直ぐに見つめる。

「藤堂の事、助けたいか?」

 突然何を言い出すかと思った、なぜ平助の事を葛葉が知っているのかは分からないが、それに関してはもう手は打ってある、心配する事は無い。

「いや、それは永倉と原田だけだろう? 他の平隊士は何も知らねぇんだろう?」

 何時になく真剣な葛葉が、真面目な顔で言い放った。


「藤堂は、今夜『三浦』に殺されるぞ」


 一体何を言っているのだろうか、なぜ『三浦』に殺されると分かるのだろうか。たしかに今日の任務に就いた隊士の中に『三浦』という隊士がいる。

 そいつが、平助を殺す。龍久の頭の中は酷く混乱した。

「まっ……待ってくれよ葛葉、お前は今まで俺を助けてくれた事が何度もあった、俺がこうして組長になれたのもお前のおかげだ……でもお前はなんで知ってるんだ? お前は何時だってこれから起こる事を何でも知っていて、俺を助けてくれる……」

 今まで何度か疑問に思ったが、その度に考えないようにした事だ。

「葛葉……お前は何者なんだ? どうして俺を助けてくれるんだ?」

 そう尋ねると、葛葉は顔をしかめて視線を逸らした。

「……そうだな明日話してやるよ、俺の事を」

 意外だった、はぐらかされると思っていたのだが葛葉はそれを承諾してくれた。

「今は藤堂を救うぞ、言う通りにしてくれ」

 こうして平助を救う為に葛葉と共に動き出したのだった。



 御陵衛士屯所前。

 平助は月を見ていた、綺麗な夜月で酒でも飲みたい気分だったのだが、一緒に呑む相手がいなかった。

(新選組に居た時は、良く龍久とのんだっけなぁ)

 昔をどれだけ懐かしく思っても、もう戻れない事ぐらい分かっている。もう変わってしまったのだから。

「さて、戻るか」

 平助が屯所の中へ戻ろうとした時だった、自分を呼ぶ声がした様な気がして振り返った。

「誰だ!」

 まさか物の怪の類かとも思ったが、声の主は案外簡単に姿を現した。

「久しぶりだな、平助」

 やって来たのは龍久と葛葉だった。意外な人物の登場に酷く驚いた。

「龍久、それに葛葉お前らなんで此処に居るんだよ」

「平助……何も聞かずに俺達について来てくれないか?」

「はあ? 何言ってんだよ」

 そもそも新選組の面々が此処に居るのも不味い事なのだが、龍久が何を言っているのか平助の理解の範疇を超えていた。

「ついて行くってなんで? 龍久お前変だぞ?」

「頼むよ平助!」

 龍久が自棄に真剣なのを見ると、冗談や酔狂の類ではないのが分かった。平助がどうすればいいのか悩んでいると、屯所から衛士達が数人出て来た。

「伊東先生が、油小路で新選組に斬られた!」

「早く籠を呼べ! 伊東先生の元へ!」

 皆急いで駆け出して行った。だがその言葉は当然平助にも聞こえていて、すぐにその後を追おうとしたので、龍久は腕を掴んで引き留めた。

「龍久、離せよ伊東さんが! 伊東さんが!」

「嫌だ! 絶対に離さない、離すもんか!」

 相変わらず小柄な割に力が強い。油断したら振り払われてしまいそうだが、龍久はその腕をしっかりと掴んで離しはしなかった。

「このっ、離せよ龍久!」

 平助が振るった拳が龍久の顔面に当たった。酷い音をたてたので、流石に平助もひるんでしまった。友人である彼に本気で手を上げたのはこれが初めてだった。

「……たっ龍久」

「…………平助、お前が怒る気持ちは分かる、俺だって仲間が討たれたら哀しいし、仇を取ろうと駆けだすと思う」

 龍久の顔は真剣そのものだが何処か哀しそうでもあった。それに平助は圧倒された。

「でも、今ここでお前を行かせたら、お前は死んじまう! 俺はお前を見殺しにできない」

 声を荒らげて、龍久はその言葉に自分の思いを全て込めた。


「俺は、友達に死んで欲しくないんだ!」


 それは、心からの言葉だ。嘘偽りなど一切ない。ただ心から平助に死んで欲しくないと言う龍久の思いだけが溢れた言葉だった。

「……卑怯だぜ龍久、お前そんな事言うなんてさ」

 平助の腕から力が抜けた。それに気がついた龍久も手を離したが、平助はどこへも行こうとしなかった。

「分かった、一緒に行くよ龍久」

 その言葉を聞いて心の底から安心できた。だがこれからどうやって平助を逃がすのか全く具体的な案が無い。

「説得終ったな」

 葛葉が屯所の中から出て来た。つい先ほどまで傍にいたはずなのに、一体何時の間に中に入ったのだか、相変わらず謎が多い。

「ほら、お前の刀だ」

 葛葉は平助の手荷物を纏めて持って来た様だ。刀や笠、羽織なども纏めて持って来た。

「それと、ちょっと失礼」

「いてっ!」

 突然平助の髪の毛を一本引き抜くと、まるで人の様に斬られた紙を取り出した。

「なんだそれ……いててっ」

「まあ、表向きには藤堂平助には死んでもらわないと困るからな、こいつはその準備だよ」

 そう言うと葛葉は少し二人から距離を取って、路地の向こうの暗闇へと消えた。しばらくすると何事もなかったかの様に戻って来た。

「さて、油小路はこれで良いだろう……とりあえず京を出るぞ」

 


 三人で一路伏見方面へと向かった。

「龍久、お前は伏見まで行ったら屯所へ帰れ、流石にそれ以上は帰れなくなる」

「でも俺も平助を送りたいんだ」

 しかし葛葉は了承してくれなかった。どうやらかなり遠い所まで平助を逃がすつもりなのだろう。しぶしぶ諦める事にした。

「大丈夫だ龍久、生きてればまた会えるだろうさ」

「平助……、そうだな今はお前を助ける事が優先だ、会えるかどうかはその後考えるよ」

「お前はやっぱり後先考えないなぁ龍久」

 そう言って平助が笑った。そんなつもりはないのだが、どうやら周囲からはそうは思われていないらしい。

「龍久、お前はさ変な所で頑固でしかも嫉妬癖があって、剣術と恋愛についてとんと才能がない奴だけどさ……」

 そりゃ平助に比べたらそうかもしれないが、そう正直に言われると傷つく物だ。だが平助は穏やか表情で続きを述べた。

「正直で単純で嘘が無いから、一緒に居て清々しいんだ……お前は本当に良い男だよ」

 平助はそう言って笑った。なんだか褒められている気がしないのだが、しぶしぶその言葉を呑み込む事にした。

 こうして七条通りまでやって来た。すぐ横を鴨川が流れている、こんな状況でなければ三人で月でも眺めながら酒でも飲んだだろう。

 だがそんな時、どこからともなく音が聞こえて来た。

 びおおん、びおおん。

 なんとも良い音なのだが、なぜだかすごく嫌な予感がした。なにか良くない事が起こりそうな、そんな感じだ。

「誰だ!」

 葛葉が叫ぶと、暗闇の中からまるで溶けだして来た様に人が現われた。

 長い黒髪を垂らし、片目にはまるで蛇の様な刺青をしており、もう片目を髪で隠していた。白い着物上から紫の羽織を着ていてなんとも男か女か判別しにくい奴だった。

 琵琶を手に持ち弾きながらこちらに歩いて来た。どうやら音はその琵琶らしい。

「本物の藤堂平助氏とお見受けするが、間違えありませぬか?」

 声も中性的で不気味な奴だ。だが葛葉そいつを酷く警戒している様で身構えている。

「ほうほう、その出で立ちもしや貴方は……」

「くっ葛葉、一体誰なんだよあいつ」

 薄気味が悪かったのでそう尋ねたのだが、その人物は葛葉の名前を聞いて笑った。

「葛葉? はははっ葛葉と名乗っておるのか、なんともまあふざけた名だ、あはははっ」

 一体何が可笑しいのかちっとも分からない。だが葛葉の顔からは何時ものふざけた物は無くなり、それを酷く警戒している。

「ならば(わたくし)は『玉藻』と名乗りましょう、『葛の葉』殿?」

「趣味わりぃぞ、『玉藻前』殿」

「趣味が悪い? 貴方には言われたくないですねぇ……こんな偽物を使って『藤堂平助』を逃がすなんて……」

 そう言って玉藻と名乗ったそいつは、葛葉が先ほど平助の髪を結わえた人型の紙を見せて来た。だがそれは無残にも真っ二つに斬られていた。

「貴方は『保守派』のお方でしょう、なぜ歴史を変えようとなさるのですか? 坂本龍馬は見捨てた癖に……」

 坂本龍馬を見捨てた、それは一体どういう事なのか、この玉藻は葛葉と一体どんな関係があるのだろうか、龍久には理解できない事ばかりだった。

「坂本をやったのはお前なんじゃねぇのか、死んだ方が好都合だろうからなぁ」

「さあてどうでしょうかねぇ、まあ死んでくれた方が何かとやりやすいのは事実ですよ」

 くすりと不気味に笑うと、まるでそれが合図だったかのようにぞろぞろと人が現われた。どれも黒い装束を身に纏い札で顔を隠し、なんだか人間の様に思えなかった。

「貴方方も死んでくれた方が何かとやりやすいですけどねぇ」

 それを合図に黒装束の者達は一斉に短刀を抜いた。多勢に無勢一体何がどうなっているのか分からない内に、そいつらは襲って来た。

 すぐ様刀を抜いて平助と共に応戦する。

「葛葉、なんで俺達狙われてんだよ!」

「どうもやっこさんは、藤堂に死んで欲しいみたいだぜっと!」

 葛葉も体術で応戦しながら、黒装束の向こうで微笑んでいる玉藻を睨みつけている。

「しゃらくせぇ!」

 平助は敵を斬り倒していく。やはり新選組を辞めても剣の腕は健在の様だ。

「おいこのアマァ、俺達を狙うなんて良い度胸してるじゃねぇか!」

「…………あまだとぉ」

 微笑んでいた玉藻が顔をしかめた。随分安い挑発に乗った様で平助を睨みつけている。好機だ、敵が怒りでまともな判断が出来なくなった所を一気に叩く。

「ああおめぇみてぇな薄気味わりぃ奴なんざ女だな、それで十分だ!」

 案の定、玉藻は酷く怒りながら動ける黒装束に向けて平助を討つ様に命ずる。全ての戦力が平助に向かう。

「あめぇんだよ!」

 平助は黒装束を踏み台にして、高く跳び上がった。狙うは頭である玉藻ただ一人。

「いけぇ平助!」

 相手は丸腰、手に持っているのは琵琶ただ一つ。例え琵琶を盾にしても平助ならばそれごとたたっ斬る事が出来るだろう。

「よせぇ藤堂!」

 しかし葛葉はそう叫んだ。だが既に、平助は大きく振りかぶっていた。

「だあああああああああっ」

 怒号と共に、上から下へ真っ二つに切り裂いてやろうと渾身の力を込めて振り降ろした。

 ――――だが。

「愚か」

 玉藻のその紅でも塗った様に紅い唇が大きく開いた。口の中には闇が広がっている、まるで全てを呑み込んでしまいそうだったのだが、そこから何かきらりと光ったのが見えた。

 何が光ったのか分からない、一体何があったのか平助には分からなかった。


 次の瞬間、平助の頭が貫かれていた。


 二尺二寸はありそうな打刀が、平助の頭を貫いていた。

 一体どこから現われたのか眼を疑った、その刀は間違えなく玉藻の口から出て来たのだ。人間のなせる業では到底ない事ぐらい瞬時に理解出来た。

 ただ理解できなかった事は一つだけだった。


 平助が死んだと言う事だけだった。


 体が地面に力無く落ちても、龍久はすぐには反応できなかった。

 あの平助が、あの藤堂平助が死んだなど、考えられない。何かの錯覚かと思ったが、平助の顔には間違え無く刀が刺さっている。

「……口は災いの元ぞ、藤堂平助」

 玉藻は柄をしっかりと握ると、額から鼻に向けて引き裂きながら引き抜いた。瞬間頭からじわじわと血が溢れ出して来た。

 これでようやく分かった、玉藻が平助を殺したと言う事が。

「平助ぇ、平助……嘘だろう、平助ぇ!」

 いくら名前を呼んでも答えなど返ってこなかった。ただ眼の前に平助だった物が転がっているだけだった。

「龍久! しっかりしろぉ」

 葛葉が駆け寄ると、気が動転している龍久を無理矢理立たせた。だが龍久は正気になど戻らなかった、ただ平助の名を呼ぶ事しか出来なかった。

「龍久、そうか貴様が南雲龍久か」

 玉藻はなぜか龍久の名を知っていた。だが龍久はそれに反応など出来なかった。

「我が大望を邪魔する者は全て消さなければならぬ、死んでもらおうか南雲龍久」

 玉藻は琵琶を置くと、右手に刀を持ちながら黒装束共に命令をする。

 だが、平助を討とうと黒装束共は玉藻の前に集まっていたので、後方には誰一人いない。葛葉はそれを確認すると、おもむろに龍久の足に触れる。

「良いか龍久、此処は俺がなんとかするから、お前は屯所まで逃げるんだ、何があっても止まるんじゃねぇぞ」

 葛葉は腿に人差し指と中指を当てた、そして脹脛に向けて下ろしながら詠唱した。

《走りの神よ、汝の力を此の者に与えたまへ――オン イダテイタ モコテイタ ソワカ》

 全く理解出来ていない龍久の背中を思い切り押すと、叫んだ。

「龍久、走れぇ!」

 その瞬間、まるで龍久の脚が自分の物では無くなったかの様に走り出した。

 それも馬の様に風の様に、到底龍久では出せるはずの無い早さだった。

 脚は勝手に、七条大橋の方へ向かって走って行く。だが龍久は葛葉の事が心配でたまらず振り返った。

「葛葉!」

 ちょうど七条大橋に差し掛かった時、龍久の眼にその光景が飛び込んで来た。


 葛葉の頭が鴨川に落ちた。


 平助を斬った刀で、玉藻は葛葉の頸を刎ね飛ばしていた。

 その時の玉藻の顔は禍々しい笑みを浮かべていて、絶対に忘れる事は出来ないだろう。

「葛葉あああああああああ!」

 何度止まろうとしても脚は言う事を聞かなかった。

 七条大橋を超えると、もう見えなくなってしまった。それでも龍久の脚は止まらなかった。ただ逃げる事しか出来ない自分が空しくて仕方がない。

もう二度と会えない親友。大切な友だったのに――。

 気がつくと不動堂村の屯所が見えた、そして門をくぐった瞬間に龍久の脚からは力が抜けて、その場に倒れてしまった。

 自分の呼吸以外何も聞こえない、何もない。誰もいない。

 そう思うと空しさと悲しさと悔しさがこみ上げて混ざり合い、良く分からない物になって眼から涙となって零れ落ちて来た。

「あああっああああ、平助ぇ、葛葉ぁ」

 一体どうすればよかったのか、何がいけなかったのか龍久には分からなかった。

 ただ親友達の死を嘆き、泣き叫ぶ事しか出来なかった。

「おい龍久! しっかりしねぇか」

 土方や近藤がやって来たが、そんな事関係無かった。

 この涙を止める事は誰にも出来なかった――。



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