淡い想い
軽めの百合になっております。
苦手な方は回れ右でお願いします。
はあ……
放課後の夕陽に照らされた屋上のベンチ。今日何度目かわからない溜息を大きく吐き出す。
というよりこの数ヶ月、気付けば溜息ばっかりだ。
それもこれもこの胸の気持ちに気付いてしまったわたし。いや、気付かせたあいつが悪い。
いや、悪くはない。はずだ。多分。
「やっほ〜!放課後の屋上でなぁに黄昏てるのかな?」
噂をすればというやつなのか。うっとしいとすら感じるようになってきたいつものテンションであいつが現れる。
「まだ悩んでんのかな?そろそろ俺に相談をしたらどうかね?」
そういって隣に腰掛けると同時にわたしの肩に腕を乗せてくる。
幼馴染ということを差し引いても異性に対してやる行動ではない。
しかしそれをこの女たらしに言ったところではぐらかされるだけだ。黙って腕を外してやる。
「悩んでる暇があったらとっとと言っちまった方が楽だと思うけどな」
馬鹿を言うな。相手は生徒会副会長だぞ。
そんな簡単に事が進むか。
「だから、生徒会書記長の俺が渡りをつけてやるって前から言ってんだろ?」
そんなことは問題じゃない!生徒会だろうが何だろうがわたしは折れないぞ!
ただ……
「女の子だから?」
うなだれるように小さく頷く。
そう。思いを寄せている副会長は女の子。同性だ。
別にそんな趣味だったわけじゃない。でも彼女に対してはちょっと違った。
深い交流があるわけじゃない。一目惚れに近かった。
「別にいいとは思うけどね、俺は。恋愛は自由だ!……まあ、お前が惚れるのもわかるよ。可愛いもんな副会長」
可愛い。そう、確かに副会長は可愛い。
でもわたしには可愛いよりもカッコよく見えた。
わたしはよくカッコイイと言われる。後輩や同窓の女子、さらには男子にも言われてしまう。
「バランスも良いしな。バレーレギュラー選手のスポーツ馬鹿に、成績優秀なミステリアス少女。おまけにどっちも美少女だ」
馬鹿と言う部分には多少不満はあるが間違いではないから言い返せない。
わたしがカッコイイと言われるのはバレーが理由だ。おまけに髪も短く切ってもらっている。
カッコイイというのは男らしいという意味で、褒めてはくれているのだろうが少し複雑だ。
でもわたしが彼女に感じているカッコイイは、女性らしい気品だ。
もしかしたら、わたしが持っていないものを持ってるから羨ましいだけなのかもしれない。
でも、それでもわたしは彼女が好きだ。言い切れる。
「だったら言っちまえよ」
口に出してたか!?
……顔から火が出そうだ……
「抱え込んでも身体に悪いだけだぞ」
ありがとう。でもやっぱり。言えないよ。
今日も部活なんだ。もう遅刻だけどな。
「おう」
立ち上がり、ユニフォームの入った鞄を担いで階段へと向かう。
練習してる間は全てを忘れられる。大事な時間だ。
「おい!」
ん?なんだ?
あの後輩に伝えることでもあるのか。女たらし。
「いや……何でもない」
何なんだ。さっきから言葉に棘を感じるけど、何か怒らせるようなことを言っただろうか。
まあ、いいか。女たらしは事実だしな。
また明日な。
「おう」
鉄階段を降りていく軽快な靴音を聞きながら少年は気弱な自分と応援しつつも悪いほうに転ぶことを望んでいる自分にイライラして、一つ大きな溜息を吐いた。
徒然なるまま書いてみました。