↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神が愛した、罪の味 ―腹ペコシスター、変装してこっそりと外食する―  作者: 椎名 富比路
海鮮丼は、罪の味 ~漁港の海鮮丼とオジサンの……~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
42/44

干物は、罪の味

 現在、わたしは海賊退治の依頼で船に乗っています。


 なんでも最近、向かいにある島の方たちが徒党を組んで、海賊となったそうな。

 貨物船や貴族の船から金品を強奪するという、悪質な事件が後をたたないそうです。


「シスター・エンシェントねえ。オレもよく知らないんだ」


 おやつにホッケの干物を食べながら、戦士のミュラーさんが答えました。ミュラーさんも、シスター・エンシェントのことは存じ上げないそうです。


「オレが現役になったときから、すでに冒険者を引退なさっていたとしか。けれど、伝説はたくさんあるぞ」


 なんでも、魔族の大半を倒したとか。ひええ。わたしは一、二体を相手にして息を切らしていたのに。


「アタシが子どもの頃、おとぎ話に出たわ。世界の裏側まで万病に効く薬草を取りに行く旅の話なんだけれど」


 ヘルトさんに至っては、この状態です。


 想像も付きません。いったい、何が起きたというのでしょう?


「どうした嬢ちゃん、オレたちのことをじっと見つめて」

「は、はあ」



 いけません。干物がおいしそうと思ってしまいました。

 お昼が味の薄いお粥だったのが、災いしましたね。


「一つどうだい?」

「いえ、結構です。貴重なおやつを」

「こんなの余るくらいあるから、遠慮しなくていいぜ」


 ミュラーさんが、ホッケを近づけます。


「うわあ」


 香ばしい、干物独特の匂いが漂ってきます。


 ああ、わたしってどうして誘惑に弱いのでしょう。


「そうですか。では、スモモと交換しましょう」

「OK。もらうぜ」


 携帯食のスモモを干物と、ミュラーさんとシェアしました。

 ちなみにこのスモモは、食べると半日は何も食べなくてもお腹がもちます。

 ちょっとしたポーションの役割も、果たしてくれますよ。


「いただきます」


 

 はあ。罪深《うま》い。


 カリッと噛んだ瞬間、風味に脳が支配されます。サクッとして、歯ごたえもバッチリです。ずっと噛んでいたいですね。何も付けなくてもおいしいです。


「おいしそうに食べるわね」


 そういえば、お二人の前で食べる姿なんて、酒場のときくらいでしたかねぇ。

 お酒をいただけないので、一人で枝豆を処理するマシンになっています。


「酒は……苦手だったな」


 教会の戒律うんぬん以前に、わたしはアルコール類が苦手なのでした。

 一五を超えているので、元服はしているのですが、身体が受け付けません。


「じゃあ。アタシから。炭酸なんてどう?」

「すいません。ごちそうになります」


 ノンシュガーの炭酸を、いただきました。

 うわああ、合いますね。

 よく冷えた炭酸水とホッケの干物が、笑ってしまうくらいナイスカップリングします。


「ですが、ごめんなさい。何もありません」

「いいわよ。今度、オタカフェについて来てちょうだいな。一度食べてみたかったのよ、あそこのオムライス」


 興味はあったらしいのですが、一人で入る勇気がなかったそうで。


「お前にしては、珍しいな」


 ミュラーさんが、ニヤつきます。


「だってあそこ、お師匠がいるんですもの」


 頬を膨らませ、ヘルトさんがワインの瓶を傾けました。


「お師匠って?」

「これよ」


 ヘルトさんは、ストロボカメラをバシャバシャと撮るジェスチャーをします。


「ああ、はいはい。あのカメラ小僧の子爵様か。たしか……カレーライス様、だったっけか?」



「カレーラス師匠よ。殺されるわよ、あんた。そりゃあ、あの方はスパイス農園を持ってるけれど」



 カメラマンの子爵様とヘルトさんが、お知り合いだったとは。


 あの人って、そんなおいしそうな名前だったんですね。

 カレーが食べたくなってきます。


「苦手なのよ、あの人。アタシにドレスを着せたがるから」

「とても似合うと思いますが。そんなにおイヤですか?」

「スパンコールの大人向けなら、喜んで着るわよ。でもフリッフリのゴシックなんて!」


 ワインをラッパ飲みしながら、ヘルトさんは愚痴をこぼしました。


「アタシにはゴシック調なんて、ガキの服にしか見えないわ。もっとアダルトな服が着たいのよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。