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盲目の元聖女と元護衛騎士  作者: 立花 みどり


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09.つつまれる


 家に着くまでの間なんとか涙もを止めようとしたけれど、意思に反して止まらずアルの肩をぐっしょり濡らしてしまった。


 それでも止まらない。一生分流れているかもしれない。

 今日ここで決着をつけたら、この家を出なければいけないかもと思うと涙が止まらなかった。


「シーラ、シーラ、こっちを見て。何があったか話してください」


 ソファに座るアルを跨いで、向かい合うような姿勢になる。目を合わせづらくて、肩に顔を埋めようとしたけれどアルはそれを許してくれなかった。

 強引に目を合わせようとするから私は必死で目を瞑るしかない。魔力視も使わず、さらに目をぎゅっと閉じる。


「なぜ泣いているんですか。僕が目の前にいるのに」


 あなたが目の前にいるから泣いてるんだよ。


「シーラ、長いこと家を開けてすみませんでした。明日からは一緒にいますから、泣かないで」


 それでも一生一緒ではないでしょう。


「あなたが泣いているのを見ると辛いです」


 私も泣きたくてないているわけじゃないんだよ。


 思っていることは一つも言葉にできなくて。ただひたすら涙を流して。アルは目の前で狼狽えていて。ああ、私でもアルの感情を動かすことがまだできるんだと思いながら、気づけば眠っていた。



**



 どれだけ泣いても、どれだけ夜更かししてもいつもと同じ時間に目が覚めた。

 いつもと違うのは目の前で自分を抱きしめているアルが起きていたことだ。


「シーラ、起きましたか」

「……もしかしてずっと起きていたんですか」

「流石にあんなに泣いている姿を見て呑気に寝ていられないですよ」


 ふふ、と苦笑する。


「シーラ、なぜ昨日は泣いていたんですか」

「言わないとだめですか」

「言わないと離しません」


 それはもう力強く抱きしめられる。逃がさないと言わんばかりに。


 一晩眠ったからか沈みきっていた思考は少しだけ落ち着いていた。

 アルのこの、いつも通りの過保護な様子に安心したのもある。


 私は話すことを決めた。


 先日謎の女性に言われたこと。ここ数日考えていたこと。

 本当に自分は愛人なのか、屋敷を建てているのは事実か、出ていったほうがいいのか、そんなことを話した。

 彼女から聞いたことや出て行った方がいいかと聞くたびに私を締め付ける腕の力は強くなった。


「まず、シーラは間違いなく恋人です」

「ほんとう?」

「ええ」

「屋敷のことは……黙っていてすみません。驚かせたかったんです。シーラと暮らすために建てていました。ハンナにも軽く口止めをしていたので、余計不安にさせてしまいましたね」

「……はい」

「シーラが見かけた女性はおそらく屋敷に出入りする商人か、僕の姉です。いずれにせよ恋人でも婚約者でもありません。僕に婚約者がいるとすれば、それはシーラです」

「でも、私は孤児でアルは貴族で、」

「それは問題ではありません。……本当はもっとお膳立てする予定でしたが。今言わないとシーラが逃げそうだから。……シーラ、僕と結婚してくれませんか?」


 断ることは許さないと言わんばかりに抱きしめられるだけでなく、足まで挟み込まれる。逃げるも何も身動きが取れない。


 なんとなくいつもより緊張していて、縋りついているみたいだった。抱きしめる腕はいつもよりこわばっているし、いつも顔は真正面にあるのに今は私の肩に埋められている。



 ……顔が見たい、と思った。


 一年前、求婚された時にはアルの表情を見ることができなかったから。今なら色はなくとも表情をみることはできるから。

 魔力視を発動して少し体を離す。肩に埋まるアルの顔が見たいから、そっと手を添えて顔を上げてもらう。

 そこにはいつもの綺麗な顔がある。誰もが魅了される美しい顔が、私だけを真剣に見つめていた。


 じっと見上げると、私が魔法を使って見ていることに気づいたのか少しだけ恥ずかしそうにしながら。それでも目は逸らさずに。こんな顔で嘘をつくわけがない。本当なんだ。


「……私でいいんですか?」

「あなたがいいんです。もしも拒否されても強引に言いくるめて結婚するつもりでいたくらい、シーラじゃないとダメです」

「そ、そんなに?」

「ええ。……結婚してくれますか」

「がんばります」



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