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第4話 リーン 6歳。

領地の屋敷で私たちの新婚生活が始まった。


私の左手の薬指には金色の結婚指輪がはめられている。

リーン様には私が持っていた小さなアクアマリンの付いたネックレスに小さな結婚指輪を通して、首に下げて差し上げた。

「この石はマルの目とおんなじ色だね?海の色かな?」

「うふふっ。そうですね。では旦那様の瞳は空の色ですわね?」

にっこりと笑うリーン様が私の瞳を覗き込む。可愛らしい私の旦那様。

「いつか海を見にいこうね」

「いいですね。行きましょうね。約束ですよ?」

「うん」



毎朝、お天気が良ければ中庭を手をつないで散歩する。

朝食後に、リーンは家庭教師とお勉強。

その間、私は執務室で事務長か、いらっしゃれば大旦那様から領地の仕事を教わる。


昼食後は少しゆっくりして、リーンが剣術の稽古やマナーの勉強をしている間に執事長から家の仕事を教わる。

夕食までのわずかな時間、語学の先生に外国語を習うリーンの隣に机を並べて、一緒に勉強する。一通りの勉強はしてきたが、外国語は新鮮だ。この時間はリーンの方が先輩。


夕食後、もう少し年齢が上がればダンスなどの練習が入るのだろうけれど、今のリーンはお風呂に入って、眠る準備。今日読んでほしい本を抱えて、二人の寝室のベッドによじ登ってくる。

今日読む本は…冒険もののようだ。

くくっ、と笑いながら読み聞かせを聞いているなあ、と思ったらいつのまにか眠っている。


…甘えたい時期に、お父様もお母様も急にいなくなってしまったんですものね…


綺麗な黒髪に長いまつげ。女の子みたいにかわいい。毛布を肩まで上げてから、頭を撫でる。

「リーン様が大人になるまで、マルが側にいますからね?」


そっとリーンを起こさないように本を開く。

この国の歴史と、この家の歴史。家系図。社交に出る必要はないようだが、思い出したように突然押し掛けてくる親戚連中に舐められるわけにもいかない。

…そんなことを考えながら、マルガレーテはページをめくる。



***


ロルフはたまにふらりとやって来て、モーリッツ侯爵家の様子を見る。


今日もふらりと立ち寄ったら、執務室でマルガレーテが大旦那様に領地の帳簿を見てもらっているところだった。にこにこと事務長がそれを見ている。

ちょうど、あの結婚式から半年たったころだ。思ったより理解が早いな。実家でも教わっていたのかもしれない。


今度は実際領地に出ることになっているようだ。

俺はお茶を出してくれた侍女にウィンクして、二人の会話に聞き耳を立てる。

侍女は頬を染めて出て行った。


「馬車は二人乗りの馬車の方が小回りが利くから」

「はい」

「事務長をつけるから。いいか?舐められるな。」

「はい」


「実は、リーンハルト様も行きたがっていまして。いい機会ですので、ご一緒してもよろしいですか?」

「リーンを?ダメだ。絶対にダメだ!」

大旦那様はバーンと机をたたいてマルちゃんを睨み見つけた。



…息子さん夫婦は、馬車の事故だったもんな…。

…そうか、そう言えばこの人も急に息子と嫁を亡くしたんだったなあ。事件性がないかどうか調べろと言われて調べたが、不幸な事故だった。まあ…誰かの仕業だったら、そいつを憎むこともできるからこの人もある意味、救われたのかもしれないけどな。


「でもおじい様?リーンハルト様をいつまでも領地の屋敷に留め置くわけにはいきませんでしょう?」

「……」

「ゆくゆくは王都にも出られます。学院にも通われるでしょう。もちろん、当主として自分の領地を見もしないで治めるわけにはいきませんでしょう?」

「…それでも…ダメだ」


怯みもせず、顔色も変えずに…子供によく言って聞かせるようにマルちゃんが大旦那様を説得している。


ふうっ、と一つため息をついたマルちゃんは、一気に言い放った。

「おじい様のお気持ちは理解できます。納得はできませんが。今回は事務長と私で回りますが、いつまでも、というわけにはいきませんからね?」


おお。随分と口の立つ娘さんだ。


さすがの大旦那様もたじたじだな。彼女の言っていることが正論なのは認めるしかないだろう。マルちゃんは大旦那様の気持ちの整理をする時間の猶予を与えたようだ。


これはなかなか面白いものを見たな。

そう思って事務長を眺めると、相変わらずにこにこして二人のやり取りを見ている。

誰に対しても威圧的な態度をとっている大旦那様のいる執務室で、この人の笑顔を見る日が来るとはな…。


ロルフは自分の選んできたこの家の臨時の嫁が思ったよりも<当たり>だったことに、思わずニヤリと笑ってしまった。















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