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第1話 ヴァージンロード。

女の子なら一度はあこがれるヴァージンロードを、マルガレーテは父の代わりに弁護士のロルフさんに手を取られて歩く。

先月16歳になったばかり。花嫁姿を両親に見せれなかったのは残念なような、そんな気もした。もう一度着る機会はなさそうだ。


急仕立てのウェディングドレスではあるが、さすが侯爵家が用意しただけあって、シンプルだが品のあるものに仕上がっている。ヴェールは引かれている赤いじゅうたんに着くかつかないかぐらい。持たされたブーケは白いバラでできている。


祭壇の前で待っていてくれる私の旦那様になる方は、黒髪にサファイアブルーの瞳を持つモーリッツ侯爵家の嫡男、リーンハルト様。はにかんだ笑顔がたいそう可愛らしい。今日はもちろん白の正装に襟元に白いバラを飾っている。


旦那様に手を取られて、祭壇に向かう。

モーリッツ侯爵領にある教会は、かなりの大きさがある。古いが綺麗に手入れされている。ステンドグラスから光が差し込んで綺麗だ。

歴代の嫡男殿の結婚式はここで行われてきたようだ。本来なら、たくさんの参列者に囲まれるのだろうが…参列者は旦那様のおじいさまと執事長と侍女頭。


「病めるときも、健やかなるときも、愛を持って互いに支え合うことを誓いますか?」

「ちかいます」

「誓います」


神父様に祝福を頂いて…私たちは神の前で誓い合って、正式に夫婦になった。

指輪を交換して、跪いて旦那様にヴェールをあげていただく。

「それでは、誓いのキスを」

リーンハルト様が練習した通り、小さなキスを私の頬にくれた。


結婚証明書に、リーンハルト様が署名を入れる。続いて私も署名して…結婚式が無事終了した。




***


さて。お次はお約束の初夜だ。


屋敷に帰って、いつもよりほんの少し豪華な夕食を3人で食べて…就寝。


私の部屋とリーンハルト様の部屋は続き部屋になっていて、おたがいの真ん中の部屋が二人用の寝室になっているので、そこで眠るのだが、リーンハルト様はさすがにお疲れだったらしく、3秒ぐらいで寝落ちされた。


マルガレーテもするりと布団に入って、勢いよく毛布を蹴り上げたリーンハルト様に毛布を掛け直す。

「お誕生日おめでとうございます。旦那様、これからよろしくお願いしますね。おやすみなさいませ」

そう言いながら、リーンハルト様の綺麗な黒髪を撫でる。

ごろりと寝返りを打ったリーンハルト様がしがみついてくる。


…うちの弟もこんなんだったなあ…小さい頃は、雷の鳴った夜なんかはこんなふうに私のベッドに潜り込んできたものだ。


そう思いながらマルガレーテは小さなリーンハルト様を抱きしめて眠った。

規則正しい小さな寝息が思いのほか心地いい。温かいし。



こうして、モーリッツ侯爵家、嫡男のリーンハルト様は満6歳で、私の夫になった。


私の侯爵夫人としてのお仕事の一日目は、何とか無事に終わった。








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