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ファウスト(ガリレオ)〜自然主義軍師の幻視〜  作者: 語り部ファウスト


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第十四幕:愛する星

【第十四幕】

 やあ、君。自分の評価について考えたことはあるかい?

ボクにとっては君は天使だ。

君のために、こうやって物語を捧げるのはボクの苦労にはならない。

だけど、他の誰かにとって君はーーどんな存在と言われているのかな。

 さてーーガリレオは1592年から1610年までヴェネツィア共和国のパドヴァ大学で楽しく過ごせた。自由な学びを18年間、多忙な時期を過ごせた。

軍用羅針盤から改良版望遠鏡など、戦争に欠かせない技術を発展させた。

君はガリレオが自分のことしか考えない男だと思ったかもしれない。だけど、こういう話がある、

 1607年1月6日にガリレオの才能を見出してくれたグイドバルド・デル・モンテが亡くなった。彼には多くの子どもたちがいたが、そのせいで遺産分配で不公平な状況が出てきた。

 グイドバルドは数学者と物理学者でもあった。死ぬまで研究に打ち込んでいたが、最後まで完成させられなかった。

そこでオラツィオという息子が後を引き継ぐことになったが、知っての通り数学は稼ぎが低い。満足な研究なんてできない。そんな中で、ガリレオはパトロンとしてオラツィオを助けた。おかげで研究は完成された。ガリレオは恩を返す男なんだ。

 そんな中、ガリレオに教会からの質問状が来た。その中に、母が教会にガリレオには悪魔が取り憑いており、確認してほしいという内容だった。

ただ質問状は形式的なものであり、深刻なものじゃなかった。

 

「ボクが悪魔に取り憑かれているだって?」と彼は頭を抱えた。

 

「母さんめーー。ちゃんと相手をしなきゃいけないかもしれないな」

 

彼はフィレンツェ公国での自分の立場を思い出した。弟のミケランジェロもガリレオの評判のせいで故郷を離れていた。

 

「ボクはフィレンツェに戻らなきゃならないな。また母さんから訴えられるのは、恥だからねーー」

 

問題は自分が今まで構築してきたものを全て放棄しなきゃいけない事だった。

結婚してない妻と三人の子どもたちだ。

彼女たちをフィレンツェ公国に連れて行った場合、母は許さないだろう。

なぜかって?

ガリレオの側に、持参金のない女がいては困るんだ。

 自分を養ってもらえないからね。

結婚した娘たちの生活にも責任がある。孫がうまれたら、その子の面倒も見なきゃいけない。ガリレオは生きれば生き延びるだけ、負債がのしかかる。

まさに地獄が待っていた。

計算の得意なガリレオは、娘たちを見た。この子たちは私生児だ。

普通の娘と違い、結婚相手に持参金として持たせなきゃいけない額は多い。

彼女たちは修道院に送ることにした。

だが息子は手元に置いとく。後継者として、残すべきだと思った。

下宿の管理運営はマリーナに任せておく。

住み込みで働く職人と結婚したら、ここでの生活は安泰だ。しかも、彼らに売り上げを銀行に振り込んでもらえたら、ガリレオの収入はもっと多くなる。

パトロンたちとも連絡をとり、安定した収入を得ることにした。

 しかし故郷に戻るのを、トスカーナ大公の私生児であるジョヴァンニ・デ・メディチは良く思わなかった。

「ガリレオ先生。メディチ家なんかに関わらない方がいい。あそこは蛇の巣窟ですよ。何かあったら、彼らは手のひらを返す。あなたを守ろうとすらしない。」

そうガリレオに警告したが、家族から悪魔扱いを放置する方が危険だった。

当時は教会はピリピリしていたから、いつ爆発するかわからないし、パドヴァ大学も手のひら返しをしないとも限らない。

 

「ジョヴァンニ。私は行くよ。あの故郷の地では、私たちが、かつてのように振る舞えないとしても」

 

こんな風に言って、ジョヴァンニと道を別れた。白くて長い指と太く短い指は、名残惜しそうにね。

 1610年にガリレオは望遠鏡で月のクレーター、木星の衛星を発見した。

自ら発見した木星の衛星に「メディチ家の星」と名付けた。

 これをトスカーナ大公に献上した。

ガリレオの自尊心を満たせる「宮廷哲学者」という最高の地位と、名誉を掴み取ったんだ。

だけど哲学者としてよりも、数学者として名誉が欲しかった。それは欲しがり過ぎだったかもね。

このようにして故郷フィレンツェへ戻ったガリレオ。彼はゆっくりできると思っていたが、周りの家族が許さなかった。

ガリレオに楽な生き方をさせず、パドヴァと同じように下宿を運営させた。

かつて父がリュートを抱きしめていたように、ガリレオは望遠鏡を大切にした。

夜には星を眺めては、星の絵を描いた。

 

「現実など、ただの泥だ。星だけが、ボクを裏切らない……」

 

母はガリレオに金銭を要求するために、たびたびやってくるようになった。

母を犬のように怒鳴りつけたら、ものすごく吠えかかられた。

ガリレオは自宅では安心できなくなった。母は気が狂ったように同居を求めてきたが、彼は拒否してた。

ガリレオはサロンで星について、

知識者と対話するようになった。

現実的なものよりも、もっと美しいことを話したかった。

 そして1611年初夏の頃だ。母から悪魔と訴えられたガリレオはローマへ行き、自分の研究を披露した。

なぜかって?

母は毎回、ことあるごとにガリレオを『悪魔』を連発するからだ。

ガリレオのやる事を黒魔術であり、生贄を隠れて捧げているとまで話を盛られた。

周囲の連中は真実を、面白いかどうかで選択する。

 

『ガリレオは悪魔である』

 

こんな言葉が真実になるのも、時間の問題だったからだ。

だから、ローマに行く必要があった。

 ガリレオがローマに着くとキリナーレ宮殿や聖職者らのサロンを訪問しまくった。そして自慢の望遠鏡とは別の粗悪な望遠鏡のものを使って、彼らに星々を眺めさせた。

 

「こ、これはなんだーー!」と老聖職者が叫んだ。

 

「月がアバタだらけのように不気味なーーこんなものーー魔術に他ならない!」

母のように金切り声をあげてぶっ壊しにきた。このように人々の中に狂信は宿り続けていた。

 

「レンズを重ね合わせて見せているだけですよ。科学です。証明できます」

 

ガリレオは苦笑と失望を老聖職者に向けた。だが老人の耳には聞こえない。もう、ガリレオを悪魔だと思っていたからだ。

観測会が私的な火炙り会場になりそうだったとき、一人の男が止めた。

高貴な黒いローブを身にまとい、老人に静かに言った。

 

「おやめなさい。この方は魔術ではないと証明できるとおっしゃっています。

その言葉を無視し、未知に対して否定的であるのはーーどうかと思います」

 

マッフェオ・バルベリーニ枢機卿だった。


こうして第十四幕は、愛する星により幕を閉じる。


 

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