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9話「空は折れ、人は立つ」

 朝の等圧線は紙を折る前の折り目みたいに薄く筋を見せ、魔力線は東の端でひとつだけ引っかかった。引っかかりは爪先のささくれに似ている。気にしすぎると血が出る。放っておくと布が破れる。《風読》を立ち上げると、郊外の古塔の腹の中に、昨夜から眠らせていた音が、ふたたび身を起こすのが見えた。宰相は諦めていない。彼は折りたたんだ札をもう一度開き、折り目の上から別の線を引こうとしている。古塔の螺旋を、増幅の渦に“育てる”——その目論見の匂いが、石の呼吸に混じっていた。


 私は塔の欄干に手を置き、骨で等圧の節を拾った。今日の合図は、昨日より一音多い。高・低・高・間。間が長い。間が長いのは、誰かが息を潜めているからだ。息を潜めるのは獲物だけではない。狩人もよく潜める。


「古塔の螺旋を逆用する」私は独り言のつもりで口に出し、隣にいたグラールに笑われた。

「逆用はあなたの好物。言ってからやるんじゃない、やってから言え」

「今日は先に言う。半歩ずらす計画だ」

「半歩?」グラールの眉がわずかに上がる。「欲がない」

「欲のない半歩が、流体には効く。渦核は正確さが嫌いだ。ずらされると、機嫌を直すまで噛まない」

「詩に聞こえるから、帳面に数字の欄を増やすわ」彼女は筆を走らせた。「“半歩偏位—骨評”。あなたの骨で判定」

「骨の証明は、灯で補強する。市井の塔を全部、手信号に切り替える用意を。灯は短く、腕は長く」


 午前のうちに、風舌の列は軽く掃除された。ざらつき板を二枚交換、逆止の喉に油を挿し、浅皿に二杯分の空を残しておく。数字は張り出しに準備され、配給所の鍋は湯を立てながら匂いだけ街に歩かせる。ベルンは金具の袋を肩から下ろすと、古塔の図を覗き込み、舌打ちした。

「螺旋は、鉄の階段と同じだ。上から見るか、下から見るかで踏み板の角度が変わる」

「今日は下から見る」私は頷く。「渦は上から降りる。こちらは下から持ち上げて半歩ずらす。剥離は剥がすより逸らす」


 リザは術師団の屋上で式の縁を研いでいた。黒板の上には、昨日からの列——〈界層薄膜化/音相干渉/符間遅延/人声重畳〉——に小さく新しい符が添えられている。〈螺旋偏位—半歩〉。チョークの粉が指先に雪のように残っていた。

「古塔の螺旋は、上昇する流れを“とぐろ”で受け、わずかな捻れで上へ送る。上からの舐めに対しては増幅器だけど、横からの“逆”には不器用」リザは素早く式の余白に矢印を描き足す。「だから、下でわずかに横へ押す。押すのは魔力線だけでせず、井戸と皿の“管”を使って水の重さで支える。空は気紛れでも、水は礼儀正しい」

「半歩の量は?」

「骨の言うとおり」リザが笑う。「《風読》の骨評で決める。式は、骨に嫉妬しない」

「骨は詩に弱いぞ」

「だから、短い詩を混ぜた。高・低・高・間。間は呼吸の場所。術式は呼吸に負けると、優しくなる」


 昼過ぎ、古塔の周りの草はささやきをやめ、宰相の札が風で鳴った。〈祭儀/立入禁止〉。禁止の札は、じつは招待状だ。誰に対してか——権威に飢えた者へ。王女は扇を閉じ、北で兵を横に広げた。今日は“止めない壁”の再演だ。扉の閂は外され、避難導線は光鍵と手旗で重ねて引き直された。エミはその中央に立ち、腕を高く、低く、水平に——手信号を使う構えだ。灯は夜の道具。昼は腕だ。腕の長さは、灯に勝る。


 私は古塔へ向かった。石の肌は昨日より乾いている。乾いた石は、音をよく通す。螺旋階段の踊り場に耳を当てると、慎重に押し寄せる波の音が背骨に伝わった。三拍、二拍、五拍。宰相は昨夜、拍子を壊されたはずなのに、別の拍子を拾っている。拾うのが上手いのだ。悪い手癖ほど、学習が早い。


 塔の腹に共鳴石が三列で並び、導魔糸が蔓を作っている——はずだ。もう中は見ない。見たがる目は、罠に引かれる。見ずに骨で読み、外で針を刺す。私は《風読》の線を薄く起こし、塔の外周に短い杭を等間隔で打った。杭は木で、先端に胴に沿うように軽い曲がり。舌の小さい版。風舌より短く、角度は甘い。名をつけるなら、“微舌びぜつ”。微舌は塔の膝に沿い、膝裏に空気の皺を作る。皺は、半歩のための余白だ。


「微舌、二十。角度は骨で」ベルンが肩を回す。「金具は鳴らない。鳴ったら、折れる」

「折れていいのは空だけだ」私は頷いた。「空は折れる。人は立つ」


 宰相は塔の内部で息を殺していたに違いない。彼は砂時計を持ち込まない。代わりに、術者の呼吸を砂として落とす。術者は落ちながら上にあがる。上がりながら落ちる。そういう顔が好きなのだ。見えないところで、誰かが背伸びしたときの沈黙は、骨にひっかかる。私はそのひっかかりに、微舌の端をわずかに触れさせた。


 《風読》が黒いひだを見せる。渦核は塔の真上に狙いを合わせ、半歩のずれを嫌って自分の方を正す。正す動きは、変化だ。変化は刺さる。私は骨に従って、微舌を一本、二本、寝かせた。寝かせた舌の背で薄い剥離が起こり、塔の腹の螺旋に“逆目”の擦れが入る。擦れは歌の最小単位だ。歌は三音。高・低・高。間。リザの式はその間を待っていた。


「——入れる」リザの声が術師団屋上から届く。〈螺旋偏位—半歩〉の符が走り、塔の腹の上昇流の肩に、軽い圧がかかる。魔力線は空気の中で目に見えない棒を伸ばし、棒の端で自分の影をつつく。影はすぐには逃げない。逃げないうちに、骨が「ここ」と言う。その「ここ」は、塔の中心から指一本ぶんの外。半歩の、さらに半歩の始まり。私は杭の角度を一指だけ寝かせ、微舌のざらつきを一段、上げた。剥離は深くない。剥がすのでなく、逸らす。逸らした流れは、塔の螺旋の“踏み板”の角度を半音、ずらす。半音のずれは、共鳴石の気位を狂わせる。


 塔の内部で、誰かが怒鳴った。声は宰相ではない。補佐頭の硬い声だ。硬い声は割れる。割れた声の隙間から、毛細のような風が漏れてくる。漏れ口は、半歩の正しさを教えてくれる。私は漏れに合わせて、三番目の微舌を抜いた。抜くと、塔の肌で音が変わる。均一の嫌いな相手には、ばらつきが効く。


 雲底が低く、帯が太くなる。渦核はついに舌を伸ばした。舐めるのではない。塔のてっぺんを折りにくる。折られる前に、空を折る。空を折るには、紙のような“折り筋”を先につけるのが良い。私は市内の旗に合図を送り、光鍵の色を琥珀から淡い白に変えさせた。光の筋は夜ほど強くないが、塔と塔のあいだに薄い折り線を浮かび上がらせる。折り線は、風の通り道を紙に描く見取り図だ。風は見取り図に弱い。


 市井の塔の上で、エミが腕を上げた。灯ではない、手信号。彼女の指は、鍋の蓋に触れるときと同じ癖で、小さく手首を返す。高・低・高・間。間が、少し長い。長いのは、呼吸の合図。合図は人を静かにする。静かになると、空が聞く。空が聞くと、半歩は通る。


 リザの術式は限界の音を立てていた。黒板の符の列はもう緩い余白を持たず、余白は彼女の額の汗に移っている。〈界層薄膜化〉の膜は薄い紙のように震え、〈音相干渉〉の音叉は、麻痺する寸前の筋肉のように細かく痙攣する。〈符間遅延〉は遅れを出し過ぎると破綻する。破綻していないのは、エミの手だ。手の合図には「遅延」がない。目で見る動作に、人は自然に合わせる。人の理屈が空の理屈の背中を押す。


「まだ?」屋上から、風務局の年少が叫んだ。彼の声は数字の端が見えるくらい真面目だ。

「まだ。——いま」私は答え、三つ目の合図を送った。骨が言った最小のずれ。半歩の中の半歩。微舌を一本、反らせる。反らせる角度は、指の幅ほど。反らせながら、塔の根元の浅皿にわずかな水圧をかける。井戸と皿を繋ぐ“管”が、あの薄い棒の影を下から支える。空は軽く、水は重い。軽いもののわがままは、重いものの礼儀で中和できる時がある。


 その時——空が折れた。目に見えるわけではない。耳にも触れない。骨にだけ、よくわかる。等圧線が紙細工の山折りと谷折りになり、魔力線がその折り目に沿って働きを変える。渦核は塔の真上から半歩、外へ送られ、宰相の仕込んだ共鳴の道筋を外れる。外れた渦は、増幅の臨界に届かない。届かなければ、噛まない。噛まない代わりに、舐める。舐める間に、剥離は逸らされる。


 塔の内部で、共鳴石が“疲れた音”を立てた。音は一度だけ。二度目はない。導魔糸の束ね目が緩み、蔓の形が解ける。補佐頭の怒鳴り声が早口になる。早口は焦りの歌だ。歌は短いほうがいい。長い早口は、息がもたない。息がもたないと、宰相の狙いは漏れる。


 古塔の裏の扉が、ひっそり開いた。誰にも見られたくない扉。見られるためにだけ用意された扉。そこから宰相が現れた。衣は落ち着き払っている。顔は薄い。薄い顔で、厚いことを言う準備をしている。砂時計は持っていない。砂は、もう落ちない。彼は私を見ず、塔の縁を見ず、ただ地平の向こうを見て笑った。笑いは刃物ではない。せいぜい、紙の端で指を切る程度だ。今日は紙が折れている。指は切れない。


「儀は終わった」宰相が言った。「王都は守られた。王家の采配だ」

 私は肩の力を抜いた。「王女の扇は、扉を開けた。あなたの札は、影を切られた。儀は“折れた”。空は折れた。人は立っている」

「詩は、政治ではない」宰相の目じりがわずかにかぎになる。「政治は数字だ」

「数字は配給所にある」グラールの声が背後から落ちてくる。彼女は張り出しを腕に抱え、紙を宰相の目の高さで開いた。〈避難導線・遵守率九割五分〉〈喉・逆流ゼロ〉〈屋根圧・平均一割六分低下〉〈古塔偏位・骨評・半歩〉。数字の横に、名が並ぶ。エミ、ベルン、風舌工、舌係、喉係、皿係、灯係。名は奪いにくい。

「それと——」グラールは紙の端を返した。別の紙。〈宰相家別邸倉・共鳴石空箱〉〈配備先・南中帯〉〈夜の墨〉。昨夜の張り出しの延長だ。市井の手で書かれ、王家の印影の“跡”が扇の影から透けている。


 宰相はそれらを一瞥して、肩を竦めた。「市井の噂。王家は、噂で動かない」

「噂ではない」声が左から挟む。セレスだ。護衛は多くない。扇は閉じている。閉じた扇は言葉より重い。「王家記録庫の写しは、公開された。巻四十五から六十。百年前の“増幅”の節。今夜の螺旋の“偏位”の符。——あなたの補佐頭の署名の跡」

 補佐頭の顔が、紙より白くなった。白は美しいが、嘘を隠せない。宰相はそこで初めて眉を動かした。動きは小さい。小さいほど、本物だ。


「国家反逆の嫌疑をかけるのは簡単だ」宰相が言う。「剥がすのは、難しい」

「札は朝露で剥がれる」リザが屋上から、疲れた笑い声で言った。「剥がした“跡”が記録になる」

「民に“王家への敵意”を煽ったのは誰だ?」宰相は台詞を変えない。変えない台詞は、詰みの前の癖だ。「儀を妨害し、城の権威を傷つけ……」

「殿下」風務局の年長が進み出た。彼の手は震えていない。「数字の板は城の広間にも貼る。『止めない壁』と『扉・二十三』。王家の権威が避難に使われた——事実として」

 セレスは頷いた。「貼れ。王家の壁が歩いた。歩いた壁は、王都の誇り。私の誇りではなく、王都の」


 宰相の目が細くなる。細くなった目は、暗い棚の奥の蜂蜜壺を見る目に似ていた。舌先が甘さを思い出している。だが、壺はもう空だ。共鳴石の箱と同じように。彼は最後の札を探し当てたように、静かに口を開いた。

「王女殿下の失政だ。危機管理は王家の責。市井に負わせた“公開工事”とやら……」

「公開工事は王家の“許可”だ」セレスは言葉を遮らない。ただ、扇を持つ指を少しだけ捻った。捻りは軽い。軽い捻りで、大きい意味が出る。「責は王家に来る。だから、王家は“見える化”した。見える責は、受け持てる」


 そのとき——市井の塔の上で、エミが両手を交差させた。空の上で短い鳥の影が旋回し、風鈴が一つ、低く鳴った。合図だ。高・間・高・高・低。〈扉—閉〉。避難導線の末端が閉じられ、群衆の流れが自然に止まる。止めるのは、壁ではない。終わりの合図だ。終わりが来ると、人は立ち止まり、誰が扉を開けたかを見る。扉の前に立っているのが、今日の王女だ。噂ではなく、目の前で。


 宰相の肩がわずかに落ちた。落ちたのは砂ではない。顔だった。顔の重さは砂に似ている。落ちると、音がする。音は小さいが、塔の石はよく聞く。石は記録し、記録は紙に写り、紙は灯に晒され、灯は噂より速く歩く。


「——宰相」セレスは柔らかく言った。「あなたを拘束する。名のためではない。跡のため」

 兵が二人、前に出た。槍は寝かされ、鎖は見せない。丁寧な拘束。丁寧は、正しさに似ている。宰相は抵抗しなかった。抵抗の札は、もう持っていない。持っているのは、朝露で剥がれかけた“国家反逆”の札だけだ。その札を、彼はもう自分に貼ることはできない。札は人に貼られるものだ。街に貼られるものではない。


 拘束の報は、鐘が二打鳴る前に、市井の灯で四隅へ走った。短い列。高・高・低。〈終〉。終は終わりではなく、次の始まりの印だ。印は、配給所の壁に押され、張り出しの紙に小さく追加される。〈古塔・螺旋偏位:半歩〉〈空・折〉〈人・立〉。名詞は短いほど、強い。


 夕刻、“公開報告”が再び広場で行われた。風務局の板に数字が増え、術師団の黒板の余白に〈折り筋〉の図が描かれ、グラールの帳面に「半歩偏位—骨評」の欄が新しく生まれる。エミは手信号の図譜を子どもと一緒に描き、ベルンは微舌の金具の規格を書き、リザは疲れた指で式の最後に小さく〈礼〉と書いた。礼は数じゃない。礼は、噛み合いの潤滑だ。


 報告の最後に、セレスが短く話した。

「王家の壁は、歩いた。城は扉を開け、市井は灯を繋いだ。術は詩を嫉妬せず、数字は飯の前に座り、骨は半歩を選んだ。——空は折れ、人は立った。以上」

 “以上”が、広場を満たした。以上の後ろで、湯気の匂いが立ち上り、子どもが指で三音をなぞる。高・低・高。間。間は今日は少し長い。長い間は、街が呼吸を取り戻す時間だ。


 宰相は地下の部屋に移され、砂時計は没収された。砂は落ちない。落ちない砂は、記憶の瓶に戻される。百年前の王の沈黙から始まった増幅の拍子は、瓶の底に降り積もり、今夜、半歩のずれで封を切られた。封を切ったのは、英雄ではない。鍛冶の指、配給の印、子どもの歌、婆さんの判、王女の扇、術師の汗、風務局の板、そして、微舌のざらつき。ざらつきは、言い返す言葉。刃物より鈍いが、長く残る。


 夜、私は塔の上で《風読》を畳み、欄干に額を当てて短い文を書いた。


 ——剥離は剥がすより逸らす。逸らすのは半歩でいい。半歩は礼儀に似て、人の側にしか置けない。


 等圧線は緩く、魔力線はほどけ、渦核は遠くで眠気をこぼす。空は今日、折られたことを覚えている。覚えた空は、次に折れにくい。人は、今日、立ったことを忘れやすい。忘れる前に、紙に、灯に、歌に、金具に、皿に、喉に、扇に、骨に、落とす。落としたものは、奪いにくい。


 エミが階段を上ってきた。手のひらに灯の煤。頬に塩。指の関節にわずかな“ざらつき”。彼女は塔の反対側を覗き込み、「古塔、もう黒くない」と言って笑った。

「灰だ」私は答える。「灰は台所の色だ」

「塩の相棒」

「塩は、記憶の保存だ」


 リザは遅れて現れ、黒板の小さな写しを私に渡した。〈螺旋偏位—半歩〉の式に、〈折り筋〉の図。式の片隅に、子どもの字で書かれた三音。高・低・高。間。隅の隅に、もっと小さく〈人・立〉。術は嫉妬しなかった。詩は刃物にならなかった。数字は冷たくなく、油は乾かなかった。扉は重くなく、灯は眩しすぎず、子どもの手は滑らなかった。——どれも、半歩の続きだ。


 明日の張り出しには新しい欄が加わる。〈微舌・規格〉〈半歩偏位・骨評〉〈手信号・図譜〉〈止めない壁・事例集〉。事例に名前がつけば、街の誰かがそれを使える。名のない技は、偶然にしか効かない。名のある技は、日常に効く。日常に効くものだけが、百年の渦に勝つ。


 星は少ない夜だった。少ない星は、灯を目立たせる。塔の上の灯は短く、薄く、しかし確かに、四隅に返事を呼んだ。高・低・高・間。返事は遅れてもいい。遅れは礼儀だ。礼儀は噛み合いの潤滑だ。潤滑のある街は、折り目が美しい。美しい折り目は、噛まれにくい。噛まれにくい街は、笑いやすい。笑いは、最強の逆位相だ。


 空は折れた。人は立った。立った人は、歩ける。歩けるなら、次の半歩も選べる。半歩の先は、まだ霧だ。霧は敵ではない。霧は余白だ。余白に短い歌を書き、ざらつきを指先に残し、扉の閂の重さを忘れ、灯の芯を短くし、皿の縁を指で数え、喉の革に油を挿し、旗の笑い皺をなぞり、骨で折り筋を探す。


 ——半歩でいい。半歩で、空は折れる。半歩で、人は立つ。

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