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1話「転生風読み、空の牙を見る」

1話「転生風読み、空の牙を見る」


 土の匂いで目が覚めた。鼻先を撫でる風の温度は、夜明けの残り滓みたいに冷たく湿っている。身を起こすと、視界の表面に薄い図が立ち上がった。等圧線。白い糸のような線が地平を縫い、そこに青紫の筋が絡みつく。魔力線。二つは互いに嫌い合っているのか、離れたかと思えばまた重なり、重なったところだけ薄黒く脈打つ。渦核。遠くの空、雲の裏側で何かがゆっくり歯を研いでいる。


 ここは王都の外れ、朝市の広場に隣接する空き地だった。昨夜、気を失う前の最後の記憶といえば、真っ直ぐな道路、雨樋の勾配、そしてスクリーンにちらつく渦度分布——そこから先は、音だけになり、途切れて、真っ暗。それが、目の前の泥と麻袋の感触に繋がった。


 身体は無事だった。痛いところはあるが、致命的な穴は空いていない。服は見慣れない織りの粗布。腰には細い革紐で結んだ道具袋。中身は石筆、細縄、短い折尺、見慣れない材質の釘。指を動かしながら、私は自嘲した。転生——という言葉が浮かぶのを、否定しきれない自分がいた。


 風が少し、変わる。視界の等圧線が寄り、二本の魔力線が急に太った。鼻の奥に金属の匂いが走る。静電気に似ている。渦核が遠いのに、こっちを見た気がした。


 広場ではもう店が組まれ始めていた。杭を打つ音、布を張る音、塩漬け肉の香り、焙じた穀物の香ばしさ。濁った下水の溝は浅い。雨が降れば、すぐあふれる構造だ。市場の屋根は骨が弱い。布に頼る張力の向きが悪い。風は東南から回り込み、突風になれば、布を逆に引き剥がす。視界に浮かぶ線図は、黙っていても私の注意を誘導した。等圧線の曲率が示すのは、午前中に一度、短い豪雨があるという予兆。渦核から伸びる黒い動悸は、噛み合わせを試す牙の形をしている。


 露店の一つで、幼い声が半泣きになっていた。

「お、おじさん、これ、立たないの」

 おじさん、というほど年でもない、と思いたいが、子どもから見れば世の大人は全部おじさんだ。声の主は、小麦色の頬の少女。目は水色に近く、よく晴れた日にはたぶん空と競い合える。背中に結んだ布包みから、干したハーブの香りがした。

「屋台が風に負ける。父さん、いつもはもう少しでできるのに」

 屋台は四本の木柱に布屋根を渡す作りだが、柱の向きと布の張り方が、今の風には不利だった。風上に広い面を見せている。しかも、地面の勾配に逆らって排水溝と直角だ。雨が来れば、屋台の足元で水が踊り、荷が浮く。


「名前は」

「エミ」

「蓮だ。ちょっと貸して」

 私は屋台の片側を持ち上げ、方向を九十度、ぐるりと回した。風に対して狭い面を見せる。布の端は風下に落とし、屋根の頂の紐を一本、斜めに延ばして風上の杭へ取る。三角の向きが変わるだけで、布は息をし始めた。端のひらひらは頑固だったが、麻縄を一本足して、下水の溝と平行に雨水の逃げ道を作る。木箱は足元の二つを外の方へ寄せ、重心を下げる。

「屋台の向きを変えるだけで、被害は半分になる。雨が来ても荷は浮きにくい」

「ほんとに?」

「試してごらん。布の中央を押して、風の真似を」

 エミが恐る恐る布を押す。屋台は唸り、しかし、さっきのようには揺れない。張りの向きが違う。細縄一本で、力の逃げ方が変わる。エミの顔が、光にほどけていく。

「立った! 立ったよ、父さん!」

 よほど嬉しかったのだろう。エミはそのまま踵を弾ませ、市場の奥へ駆けていく。彼女の呼ぶ父親の姿を探す前に、視界の図がまた震えた。等圧線が一段、詰まる。魔力線の太さが一瞬、痩せ、次の瞬間に太り返す。渦核の脈が、早い。


 この街は雨に弱い。下水は浅く、溝の幅は広いのに深さが足りない。壁は土と藁で塗られている。飽和したら剥げる。家々の屋根の勾配は穏やかで、流下速度は遅い。いくつかの棟木は、湿りを含んで黒ずんでいる。朝市の通りの敷石は中央が沈み、両側が高い。水を逃がす意図はあるのだが、溜まった泥が逃げ道を塞いでいる。豪雨が一発、来れば十分に冠水する。そういう作りだ。


 白い線と青紫の筋が、わずかに笑った気がした。雨は好きか、と問われているみたいだ。私は、自分の胸の奥が落ち着かないのを知った。工学で助ける快感——身体がそれを覚えている。あれは数字の快感ではなく、流れる水の音が一段低く変わる瞬間の快感だ。うまくやれた、と骨が言う。


 エミが戻ってきた。背の高い男を連れている。腕に縄の痕があり、手のひらはひび割れている。市場で屋台をやっている者の手だ。

「君が屋台を直したのか」男は礼を述べた。「助かった。朝の風で布が剥がれかけていた。エミが誰かを呼んでくるって言うから、半分は諦めていたが……」

「蓮と名乗りました。ちょっと向きを変えただけです」

「向きだけで、変わるもんだな」

「風は、面に当たると牙になる。点に当てれば、ただの息です」

 男は「牙」という言葉に眉を上げた。

「空の牙か。北の砂漠には、突風を牙と呼ぶ民がいると聞いた」

 彼の視線が空を探し、私も一緒に見上げる。空はまだ柔らかい灰色だが、南東の端に弓状の雲が見え始めていた。低く、速い。犬が鼻先を湿らせる前触れみたいな雲だ。視界の線図は、何も言わずに、私の心臓の鼓動を映す。


「父さん、また来るの?」エミが不安げに尋ねた。「この前みたいに、屋根が飛ぶの?」

「飛ばさないようにするんだよ」私は答えた。「ひとつ条件がある」

「条件?」

「みんなの屋台を、少しだけ動かす。重いものは外へ、軽いものは内へ。布の張りは斜め。排水の逃げ道を作る。俺が指示する。怒鳴るけれど、怒っていない」

 男が目を見開き、次の瞬間には頷いた。

「市場の者に声をかける。おい、ベルン! 押してくれ!」

 市場の端で見張りをしていた大男がこちらへ走ってきた。彼は最初、私を怪訝そうに見たが、空とエミの顔と男の腕の縄痕を見比べ、すぐに屋台の脚を掴んだ。

「どっちへ?」

「風下に二歩、排水溝と平行に。杭は斜めに、ここからここへ。縄は一本、余っているだろう?」

「ある」

「なら、布の角に撚りを足して、引っ張る。結びは滑りにくいものを使う」

 ベルンは文句も言わずに動いた。彼の動きは重たく、しかし正確だ。私はその背中に少しばかりの尊敬を覚えた。こういう腕のある人間がいる街は、長く持つ。


 市場の中を走りながら、私は要点だけを繰り返した。屋台の向き。重心。逃げ道。紐の角度。人の顔が困惑から理解へ、理解から納得へ、納得から安堵へと少しずつ移っていくのを横目に、視界の線図は黙々と輪郭を鋭くした。等圧線がまた一段、寄る。魔力線は、息を潜めた獣の背中のように、滑らかな盛り上がりを見せる。


 南東の空で、雲の裏側が一瞬、閃いた。雷ではない。光の向きが違う。雲の内側から外側へ、歯が押し出される形の閃き。私は思わず、言葉を飲んだ。空の牙。視界の渦核が、そこで黒い血脈を増やす。牙の根本は、弱い地形に向けて、素直だった。王都の外れ——この市場の屋根と浅い下水が、今日の朝飯だと言っている。


「蓮!」エミが手を振る。「こっちの屋根も!」

「行く」

 私は走った。息はまだ平らだ。足は言うことを聞く。屋根に上り、布の背に手を当てると、布はちょうどよく震えている。張りを殺しすぎると、次の風で負ける。生かしすぎると、今の風で千切れる。中庸は動きの中にしかない。私は布の端をひとつ噛んで、紐をもう半回し、回す。指の腹に麻の硬さが残る。


 市場の反対側から、甲高い声が上がった。

「勝手な真似はやめなさい! 市場の縄張りを乱すな!」

 役人の言葉に似ていたが、服は市場の管理組合のものだった。革のベルトに印章袋。頑なな顎。彼女の名はグラール、と誰かが囁いた。グラールは私の手元ではなく、足元を見た。彼女の視線は正しい。足場は滑る。怪我をすれば、私を怒鳴れば済む話ではない。

「グラールさん」私は声を落ち着けて言った。「怒っているのはわかる。やり方を変えるのは怖い。でも、変えない方が、被害は大きい」

「根拠は?」彼女の顎は上がっている。

「風が教えてくれる。あと、下水の深さと勾配。布の張り方。杭の打ち込み角。あなたの靴の泥の付き方」

 私は指した。彼女の靴の泥は、つま先の外側に厚く付いている。市場の中央から外に向かう傾斜の途中で一度、泥に足を取られている証拠だ。グラールは眉を顰め、それでも譲らなかった。

「事故が起きたら、だれが責任を取る?」

「今、責任の話をする時間はない」

「では、あなたを拘束する」

 彼女の手が印章袋に伸びたとき、空が鳴った。音ではない。皮膚で聞く音だ。市場のあちこちで、誰かの喉が乾いた鳥みたいに鳴った。

 私は見た。空の牙が、形を持った。


 それは雲の腹から垂れ下がる、緩やかな漏斗、のようでいて、刃のようでもあった。濃い灰の線が空から地面へ、とがって落ちてくる。突風——いや、ただの突風ではない。魔力線が牙の沿いに螺旋を描いている。空気が、噛みつきながら落ちてくる。上から押し潰すのではなく、楔の先で刺す。地面に触れたところで、四方に走る。見慣れた表現で言えば、マイクロバースト。けれどこの世界では、魔力の歯が一本、まじっている。


「伏せろ!」私は叫んだ。「布を押さえろ! 中央じゃない、風下の端だ! 杭を抜くな、緩めろ! 逃げ道を殺すな!」

 叫びながら、私は一番危うい屋根の上に身を投げた。布の端に手をかけ、唇で縄を噛み、指で結び目をほどき、別の杭にかけ直す。力は真ん中に集めない。流す。牙の先が広場の端に突き刺さり、そこから白い砂煙が四方に走った。埃と水滴と、細かい藁の破片。空気の塊が地面にぶつかり、そこから波が立つ。


 屋根が唸り、一本の杭が悲鳴を上げ、私は自分の腕の筋肉が火を噴くのを感じた。牙の触れた場所では、軽い屋台が持ち上がりかける。私は考えるより早く動き、屋台の足元の木箱を蹴った。重心が下がる。屋台は踏みとどまる。牙は市場を横に走り、布と布の間を噛み、紐の撚りをほどこうとする。私は撚りを足す。エミが隣で、両手で布の端を押さえている。彼女の口は、恐怖で少し開いていたが、泣いてはいなかった。


 牙が走り去ると、雨が落ちてきた。一気に、ではない。最初の一列は大粒で、冷たかった。次の列は細かく、密だった。市場の敷石は、すぐに濡れ、溝には薄茶色の波が立つ。私は屋根から飛び降り、溝に溜まっている泥の塊を手で崩した。流れは細く、しかし確かな速度を持つ。ここでも中庸が効く。一気に抜けば、上流が崩れる。少しずつ、連続的に、落差を吸っていく。


 雨の中、ベルンが濡れながら動き、手伝いの少年が縄をほどき、別の女が木箱を押した。グラールもいつの間にか自分の上着を脱ぎ、布の端に乗せて重しにしている。彼女の視線は相変わらず厳しいが、敵意の角は取れていた。


 雨脚が太くなる。等圧線の詰み方が一段、緩む。牙は一本、二本と、遠くへ去っていく。渦核はまだ脈打っているが、近場での歯の研ぎは当分ない。市場は、持った。布はところどころに裂けが入ったが、致命ではない。木箱の角は柔らかく濡れ、塩漬け肉は濡れ布で覆って守られたままだ。


 私は雨の中、笑ってしまった。笑うつもりはなかった。勝手に喉が笑った。身体が、やっと血と骨の使い道を思い出したからだ。工学で助ける快感。数字が音に変わる瞬間。私はその中に、まるで昔から住んでいるみたいに、自然にいた。


 雨が細かくなる頃、エミが私の袖を引いた。指先はふやけて白くなっている。

「今の、空の牙……?」

「牙だ。ここでは、なんて呼ぶ?」

「“空の咬み”って言われる。獣の歯形みたいに、畑に跡が残るから」

「いい名だ」

 グラールが近づいてきた。全身ずぶ濡れで、眉毛から水滴が落ちる。それでも、彼女の顎はまっすぐだった。

「認める」彼女は言った。「あなたがいなければ、今日の市場は半分以上やられていた。……出自は?」

「迷子だとしか言えない。目が覚めたらここにいた」

「迷子のくせに、風と水に詳しい」

「仕事だった」私は短く答えた。「前の世界では」

 グラールは目を瞬かせ、笑った。乾いた笑いではない。雨の音に混じって、柔らかかった。

「前の世界。いいわね。嘘にしては気が利いている。名は蓮、と言ったか。今日の働き、組合として報いるべきだが、まずは温かいものを。市場の寄り合い所で手当を受けなさい。……それと」

 彼女は足元の溝を指さした。

「あなたの言う“逃げ道”、正式に検討する。下水の見直しは、いつだって後回しになる。今日、後回しにしなかった借りを返す」


 寄り合い所は、昼には賑やかだった。人熱と蒸気で、外よりも雨が近い。鍋で温めた根菜の匂い。私は椀を受け取ってすぐ、中身を二口で飲み下した。熱が血の中に走り、足の裏まで届く。足の裏が、現実に戻る。身体の端々に残っていた震えが、汗に変わる。


 長椅子の端で、ベルンが粗い布で腕を拭いている。隣ではさっきの男——エミの父親が、濡れた髪をかき上げながらこちらを見た。

「蓮」彼は言った。「うちの納屋、屋根が弱い。見てくれるか?」

「行く」

 即答すると、周りの何人かが笑った。ベルンが肩をすくめる。

「言い方に迷いがない。監察官みたいだ」

「監察官?」

「王都には風務局という役所があってな。風を読む連中がいる。だが、現場で動ける者は少ない。書類は風より重いんだ」

「重い書類は、風では飛ばないからな」

 私の軽口に、寄り合い所の空気が少しだけ緩んだ。エミは椀を抱えたまま、目を丸くして笑い、また飲んだ。


 昼下がり、雨は細くなった。市場の通りは薄い泥で磨かれ、敷石は洗ったように色が濃い。私はエミの家の納屋で、屋根の勾配と骨の状態を点検した。梁の節の位置が悪い。荷重が一点に集まっている。釘穴は湿りで広がり、留めは効いていない。私は折尺で寸を取り、石筆で印を付け、余っている板から楔を切り出した。楔を一枚、二枚と差し、梁の傾きに逆らう角度で噛ませる。わずかな変化だが、水はそこに反応する。流れが加速し、滞留が消える。


「ねえ、蓮」屋根から降りると、エミが言った。「うちに、泊まるところ、あるよ。父さんと相談した。市場を助けてくれたお礼。納屋の隅だけど」

「恩を売るのが上手いな」

「売るんじゃない。風はいつか返ってくる。父さんが言ってた」

 私は頷いた。転生だなんだと騒ぐ前に、夜露をしのぐ場所が要る。エミの父は、黙ってうなずいた。言葉は少ないが、信用の形を知っている顔だ。


 暮れかけの空で、渦核が遠く、また一度、黒く瞬いた。今日の牙は去ったが、空は噛むことを忘れない。私は納屋の隅の藁の上に腰を下ろし、道具袋の中身を並べた。石筆、細縄、折尺、釘。明日から要るものはもっと多い。排水の図を描くべきか。市場の溝の断面を測るべきか。風務局に顔を出すのが先か。順序はある。だが、手はもう動いている。麻縄の撚りを解き、より直して、丈夫な一本を作る。


 夜、雨はほぼ止み、屋根を叩く水滴の音だけになった。藁は乾いた匂いで、眠りは早かった。眼を閉じると、視界の等圧線はゆっくりと解け、魔力線は細い光になって、闇に沈んだ。渦核の黒は遠い。牙は眠る。眠るが、忘れない。そんな感じだった。


 夢の手前で、一枚の記憶が浮かんだ。別の世界、別の街。雨の前、私はたしかに誰かと並んで立っていた。人混みの向こうに、白い橋。高欄の角が濡れて光る。誰かの声が、私の名を呼ぶ——蓮——そして、風が答える——今、噛むぞ、と。


 翌朝、空は薄く晴れ、地平線近くで雲が破れていた。市場は傷跡を撫でながら、いつもの匂いを回復させる。ベルンは新しい杭を肩に担ぎ、グラールは帳面に何かを書き付けながら、たまに溝を覗き込む。エミは笑って、干したハーブを並べた。昨日より、屋台の向きは少しだけ利口になっている。


 私は広場の端に立ち、等圧線と魔力線の重なりを見た。昨日よりは穏やかだ。だが、王都の南側には、魔力線の流れの歪みが残っている。人工の構造が、風の道を塞いでいる匂い。誰かが、空を都合よく曲げようとしている。そういうやり方は、たいてい歯を呼ぶ。


 風務局の塔が、街の中心に立っているのが見えた。尖った屋根。あそこに行けば、言葉が通じる者がいるだろう。通じないかもしれない。どちらでもいい。風は黙っている。だから、こちらが言葉を持って行く。


 私は背中の道具袋を締め直し、歩き出した。足元で、昨日掘った溝が細い音を立てる。市場の端でエミが手を振り、私は軽く手を上げて応えた。空は青へ向かい、薄い白の線が風にほどける。遠くで渦核が小さく瞬き、牙の影を一瞬だけ、地面に落とした。


 空の牙は、忘れるためにあるのではなく、覚えているためにある。そう思えた。噛まれた跡を撫で、傷口が新しい皮膚になる。その過程に、工学はいつも小さな椅子を出して待っている。私はその椅子を持ち歩く者だ。転生だろうが、迷子だろうが、関係ない。


 王都の外れの市場は、今日も開く。雨の跡に光が照り、流れた水が薄い虹を作る。私は歩きながら、風に訊ねた。


 次は、どこを噛む?


 風は答えず、しかし、確かに微笑んだ気がした。

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