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水神様

作者: そらからり

とある少女の日記


×年6月12日

死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい――(ここから先は全て”死にたい“で埋まっている)


×年6月13日

なんでもいいから死にたいどうなってもいいから死にたい早く死にたい死にたい死にたい――(ここから先は全て”死にたい“で埋まっている)


×年6月14日

最悪だ。またアイツが来た。わざわざ隣のクラスから、私のことをジロジロと見て私の悪いところを探している。

あの魚のような目も肌も臭いも考え方も、全てが終わっている。

なんであんな奴が人気者で私が虐げられなければいけないんだ。

ああ、死にたい。

死んで楽になりたい。


×年6月15日

計画でも立てよう。

死ぬ計画を。

どこでもいい、わけではない。

死に顔を見られるのは負けだ。

アイツ、というわけではない。

誰にもだ。

私の死に顔を見た奴は私にとっての勝者だ。

私はこれ以上負けたくない。


×年6月23日

良い場所をみつけた。

〇×公園の池。あそこは人気が全くない。

きっと私が死んでも、見つけられることは無いだろう。

アイツによく似た魚がうようよと泳いでいて、私の身体を貪り喰らうのだろうが……それは仕方ない。

むしろ私の死んだ後の処分を、アイツに押し付けられると思うことにしよう。


×年6月27日

重りと縄も購入した。

いよいよ明日が実行日だ。

これでようやく、私は――


×年6月28日

(文字が滲んで解読不能)


×年6月29日

私は超能力を手に入れた!

手の届かない場所のものを動かせる力だ。

範囲はどうやら5m。動かせるものは私の筋力以上は無理みたいだ。

だけどどれだけ動かしても疲れない!

屈まなくても落ちたものを拾えるし、これはとても便利な力だ!


×年7月12日

手に入れた力は念動力というらしい。

私が力に目覚めたきっかけは、思い返せば池の底で水神様の像に触れたことだろう。

どんな像だったか記憶にない。顔も形も大きさも。

でも神々しかったのは覚えている。

まだお前は死ぬなと水神様に言われた気がした。

だからだろう、あれほど死にたいと願っていたのに、無意識に生を望んでしまったのか、不思議な力は縄を解き石を散らし私を水上へと押し上げた。

多分、水神様から与えられた力だ。

なにをすればいいのか分からない。

何のために力を授けられたか分からない。

でも私は超能力少女!

困った人を助けていくぞ!


×年7月15日

今日は道路のゴミを拾った!

ゴミ袋20つ分!

超能力のおかげで全然疲れない!


×年7月20日

今日は泣き止まない赤ちゃんをあやすお母さんがいたのでお手伝い!

私が超能力を使ったら赤ちゃんはピタリと泣き止んだ!

お母さんはしきりにお礼を言ってたな。

私は照れくさくてすぐに走り去っちゃった!


×年7月22日

今日は宿題を家に忘れてしまった。

だけど平気。

私には超能力があるから。

隣の席の新子さんの宿題プリントをこっそり私の名前に書き換えて提出しちゃった


×年7月27日

夏休みになったけど毎日暑くて外にでる気力もなくなる

でもそんな時こそ超能力の出番!

年動力はイメージすればたくさんの力に別れてくれるみたい。

一つ一つが私と同じ力があるからその全てを使って私自身を運ぶこともできた!

これで移動は楽ちん!


×年8月1日

たくさんの人を助けた


×年8月8日

たくさんの人を助けた

そのおかげかな

色んな人からの視線を感じる


×年8月10日

また私の周りをあの魚野郎がうろついている

超能力で振り払っても駄目。

不躾な視線を、酸っぱい臭いを、私に向けてくる。


×年8月30日

超能力は少し封印した方がいいのかもしれない。

人目に付き過ぎた。

人に知られ過ぎた。


×年9月6日

私は追われている。

どうやら命を狙われているみたいだ。

きっと、あの魚野郎が密告したんだと思う。

絶対にアイツの思い通りにはさせない!


×年9月7日

電車を待つアイツとその子分2人の背中を超能力で思いっきり押してやった。

ざまぁみろ!

バラバラになったアイツをみたらスッキリした。


×年9月9日

終わりだ終わりだ終わりだ終わりだ――


×年9月10日

そうだ!

新しい超能力を手に入れよう!

私にはそれができるはず!


×年9月11日

念動力は池の底で授かったから、違う超能力は別の方法で手に入れるしかない!


×年9月12日

明日、ビルから飛び降りる

私はそれで空を飛ぶ力を手に入れるんだ


×年9月13日

(文字が滲んで解読不能)





「――続いてのニュースです。昨日ビルの屋上から飛び降りた女子高生について続報があがりました。少女は、少女Aは日常的に違法薬物を使用していることが分かりました。判明しているだけでも7月から、どうやら自身を特別な存在と認知していたようです。また、近所の人間からはトラブルを抱えた者をみると笑う様子もあったと話を聞いています」

「――さ、先程の少女Aですが……殺人の容疑が……いえ、殺人事件の犯人として名前があがっていたと判明しました! S区での母子殺害事件、M駅での無差別殺人事件、他にも容疑だけでも幾つもあげられているようです! 続報をお待ちください!」

「――え? これを読むんですか? でも、少女Aの事件のほうが……局長指示? はぁ、分かりました……ええと、〇×公園の池で、水神の依り代として造られた像が引き上げられたとのことです……推定数百年の歴史があるらしいです。他に分かっていることは特に……ありません。どこかの大学が調査でもすれば……まあ、いずれは分かる……でしょう。写真は無いみたいですね。〇×公園で一般公開されているそうなので、興味のある方はぜひご自分の眼で、確認、してみてください。他に原稿は……無い? ……無いみたいですね。では、次はお天気に……ううん、違う、違うでしょう、今こそ――水神様を祀る時です! この“ありがたき奇跡”をお見逃しなく! いますぐに、〇×公園へ向かいましょう! ご家族と! お友達と! そして皆で水神様を祀り、奉り、崇めましょう! 水神様は、あなたをお待ちです! あなたを、あなたを、あなたを――」

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