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空から女の子が!

練習作3号

「親方、空から女の子が!」

 そんなことを叫びたくなるほど唐突に、空中に女の子が現れた


 幸い、自室のベッドで寝転んでいたため、しっかりと受け止められた

 ただ、その女性は『女の子』というにはあまりにも大人びている

 現れた女性の下敷きになりながら、ぼんやりとそんなことを考える


 非現実的な目に合うと俺は思考を止めるらしい

 でも偏見じゃなければ、大抵の男子高校生なんてそんなもんだと思う



「お、ラッキー!お兄ちゃんの上に出た!」

 30過ぎの女性が俺の上でくつろぎながらなんか言ってる


 …………?


「お兄ちゃん?」

 あまりに意味不明なその言動につい聞き返してしまった


 俺には確かに妹が一人いる

 しかし、俺の妹は空中から現れたりしないし、ましてや俺より一回りも年上なわけがない


「そうだよ。お兄ちゃん。私は未来からやってきた如月(きさらぎ)ハル。可愛いくて美人な自慢の妹ですよ〜」

 年のわりに子供っぽい仕草で自称妹の大人びた声が聞こえた



 まったく、疑問の解答でさらに疑問を増やさないでほしい


 高校生にもなって「未来から」なんて言葉を真に受けるほど馬鹿じゃない

 まだ、マジシャンの美人局(つつもたせ)と言われた方が現実味がある。

 それでも十分に意味不明だが


 それに未来の()という言い分も、タチが悪い

 俺の妹は、今も総合病院で入院している

 生まれつきの心臓の病で、生まれて15年まともな生活なんて送れたことがない

 そして余命が持ってあと一年とも……。


 そんな可愛い妹を語るような奴は許せない

 反射的に殴ってしまっても許されるはずだ


 俺に馬乗りしている女性が服のボタンを外し、胸をさらけ出していなかったら殴っていたに違いない




 あくまで俺の名誉のために弁明しておくが、別に女性の胸が見たかったからとか、ドギマギしたからとかで手を出さなかったわけじゃない。

 断じて違う!!


 そもそも妹の胸を見たところで興奮なんてしねぇし


 重要なのは、はだけた服の奥、胸の谷間に生々しく残る手術痕があったことだ

 それは明らかに心臓の手術をした痕だった。


「えっちなお兄ちゃんのおかげでハルは今日も元気に生きています!」


 妹を名乗る女性は元気よく、俺をからかって笑った。

 ひとまず、(はた)から見たら勘違いしかされないであろうこの体勢をどうにかすべきだろう

 名残惜しく思いつつも、俺はベッドから起き上がることにした




 頭が冴えてくるとだんだんとこの状況の現実味が増してくる

 それと共に疑問がどんどん湧いてくる


 未来からってどうやって?

 ハル(いもうと)はいつ手術して元気になるのか?

 なんのためにこの時代に?

 ハルに彼氏はできたのか?

 未来の俺は陽葵(ひまり)と結婚しているのか?


 …………


 いやその前にこの女性が如月(きさらぎ)ハルであることを確認すべきなのではないだろうか?




「ハル、質問だ」

 唐突な俺の発言に、自称妹は期待に胸を膨らませるように、こちらに顔を向ける。

「俺の可愛い 「私!!!」 かのじょの……」

 まるで早押しクイズのように女性が答える


 …………


 妹らしさを感じる

 これは案外、会話するのが大変そうだ


「人の質問は最後まで聞くように。次それやったら妹とは認めないからな。……それでは俺の可愛い彼女の名前はなんでしょう?」

「水野陽葵(ひまり)先輩!!」

「俺の誕生日は?」

「天才の日!10月31日!」

如月きさらぎハルの小学生の時の夢は?」

「お兄ちゃんのお嫁さん!!」


 まさかここまで(よど)みなく答えられるとは

 これは本当に未来から妹がやってきたのかもしれない




 ひとまずいろいろ質問をしたいが、どうしても気になることがある


 これは男の子なら仕方がない。


「どうやってタイムスリップをしてきたんだ?」


 その質問にハルはものすごく饒舌に話し始めた

 ポケットから取り出した真っ白に輝くピラミッドのようなもの、それがタイムマシンらしい

 想像よりもだいぶ小さい


 映画みたいに、変なポットとか改造した車とか使うと思ってた

 原理についての話を小一時間ほどされていた気がするが、使い方を除いて何を言っているのかさっぱり理解できなかった


 ただ俺の妹は将来、かなりすごい科学者になれるらしい

 それが心の底から嬉しかった




 もうひとつ聞いておくべき質問がある

 なんとなく聞きたくない気がするけれど、聞かないわけにはいかないだろう


「なぜ、この時代に来たんだ?」


 俺はこの質問をすぐに後悔することになった

 その答えはとてもありきたりだった


 でも、その答えを信じることができなかった

 いや、厳密には信じたくなかった


「明日、私に心臓を残してお兄ちゃんが死んだから」



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